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    めてぃ

    結界師正良の妄想をほぼ壁打ちでただ垂れ流すだけのアカウント。
    あとは自作正良ぬいで色々と写真取ってます。
    メモとあるのはほぼ小説かほんとにメモだけです。
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    めてぃ

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    中秋の名月に月を見る両片思い正良。

    良守は学校から帰ると、昼寝の前にとりあえず腹ごしらえのおやつを食べようと茶の間に向かった。
    せんべいを齧りながらテレビをつけると、今晩は中秋の名月ですとアナウンサーが映像を交え紹介している。それをぼーっと眺めていた良守だったが、その中の特集に釘付けになり、しばしの間食い入るように見つめていた。

    夜のお勤めも特に何事もなくいつも通りに終わり、良守は一人結界を作りながら上空に昇っていった。
    時音にはそれとなく理由をつけて先に帰ってもらった。
    周りを見渡せる高さまで上るとそこに結界を作り腰を掛けて月を眺める。
    家を出る頃にはてっぺんあたりにあったものがだいぶ傾いてきており、かなり大きく見える。
    しばらく眺めていると「よお!」と後ろから声を掛けられた。振り返らなくてもこんなところで声を掛けてくるなんて一人しかいない。約束をしていたわけでもないのになんとなく来る予感がしていた自分の第六感が当たった。なんなんだろうか。
    黙っていると隣に並んで腰掛けてきた。なんだよと思ってちらっと見上げると「なに?」と返してくる。
    問いたいのはこっちだと思ったが言ったところでまともに返してくれるとは思っていないので、「別に」とだけ言って視線を戻した。
    2人とも無言で並んで月を眺めていたが、良守はふと思い出し、おろしたリュックの中をゴソゴソ探すとタッパーを差し出した。
    「はい」それを目の前につきだすと不思議そうな顔で見られる。
    「団子。今日は月見だろ。父さんが夜食に持たせてくれたけど、お前が来そうな予感がしたから残しといた」
    「そっか。ありがと」
    それだけ言うとフタを開けて1本取り出し口に運ぶ。
    「やっぱり美味いな」ひと口齧り感慨深げにこぼす。
    お月見用に作ったときは丸めただけだったが、食べやすいようにと父さんが串にさしてあんこを乗せてくれていた。良守も1本とるとそのまま頬張る。お互い会話もなくただ団子を頬張るだけの時間が過ぎていく。
    なんで今日ここに来たのだろうか。なんとなく来そうな予感はしたが特に理由があったわけでもない。良守だって昼間見たテレビで特集をしていてふと気になったから一人で月を眺めていたというだけなので、偶然にも居合わせたのは運命なんだろうか。
    考えれば考えるほど、こうやって月を並んで眺めている姿がだんだんとおかしくなってくる。ふふっと笑いをこぼすと、片眉をあげていぶかしげにこちらに目線を投げてくる。
    「なにがおかしいの?」
    「別に。なんか奇妙だなと思って。なんでこんなところで二人で月を眺めてるんだろうって」
    「そう?たまには静かに月を見るのもいいんじゃない?」
    月なんてそんなに気にして見上げたことはほとんどない。なので特に満月だからといって思い入れもない。唯一、明け方に昇ってくる細い月だけは、見ると奥底にしまった気持ちを呼び起こされるようで嬉しくもあり苦手でもあった。嫌いなわけではない。ただこのどうしようもない想いで少し胸がキュッと締め付けられるのが苦手なだけなのだ。悟られてはいけないと思っている。でも気づいて欲しい。今はそんな相手と満月を見ているのが不思議だった。
    そのまま時間だけが過ぎていったが、良守はテレビで見た特集を思い出した。満月に浮かれたわけではないが、ただなんとなく試してみたい、ほんのイタズラ心があったのも確かだ。
    「月が綺麗だね」
    それを聞いた瞬間驚いたようにこちらを見た。真意をはかっているのが分かる。まさか良守がこんなことを言うはずもないと思っているのかもしれない。
    良守は相手がどう答えてるくるのか楽しみに待った。たぶん意味は分かっているはずだ。気づかないフリをするのか、そこにある真意を汲み取って返してくるのか。その場合、答えはyesなのかnoなのか。noが返ってきても気づかないフリをすれば諦めなくてもいいだろうか。そもそもyesの答えなんて期待してる訳じゃない。心の中で言い訳をしながら最後の審判を待つような気持ちで緊張し、手にはじっとりと汗をかいていた。
    「月はずっと綺麗だったよ。手が届かないからこそ綺麗なんだ」
    遠くを眺めながら静かにそう言った。その答えに今度は良守が驚く番だった。
    「えっと、それは…」
    その言葉に含まれる意味は昼間知った。ただ、その含んだ意味を受け取っていいものなのか悩む。こちらがカマをかけたのに気づいて向こうもそう返して来たのだろうか。答えを知っていると気づいているのか、それとも知らないと思っているからこその本音なのか。いずれにしても答えはyesと言っている。そうとわかった瞬間、心臓が早鐘のように鳴りだした。今まで隠し通さなければならないと思っていたのに、少しは期待してもいいのだろうか。
    「う、うん…」
    しかし、結局はどう答えていいのかわからず、あいまいな返答しかできなかった。
    模範解答のような答えを反芻するうちにじわじわと恥ずかしさがこみ上げてくる。きっと耳まで真っ赤に違いない。でも、自分の中で繰り返すうちに、それが都合よく自分で解釈して盛り上がってただけで本当はそんな意味なんて含んでいなかったのではないかと急に不安になってくる。確認したいがどう聞いたらいいのかが分からない。もし違っていたらそれこそ穴に入りたくなる。
    一人百面相をしていると、隣で笑われた。
    「まさかお前があんなこと言うなんてビックリした。それって本気にしていいやつ?」
    試すように聞いてくる。うんと言ったらどうするんだろうか。答えられずにいると苦笑いされた。
    「学校の授業かなにかでやったんだろ。そんなロマンチックな授業やったかなぁ。俺が知ってるか試してみたくなったってわけか。ちょっと信じそうになったけど」
    ヒヒヒッといつものように笑う。冗談で言ったつもりではなかったが、はっきりしなかったせいで本当に冗談にされてしまったようだ。
    「さて、そろそろ月も沈んできたし帰るかな。お前も早く帰って寝た方がいいんじゃない?団子、ごちそうさま」
    そう言いながら立ち上がって伸びをすると、じゃあなと立ち去ろうとする。このまま帰ってしまったら本当に冗談で終わってしまうと気づいた良守は慌てて羽織の裾を掴む。
    「ん?なに?まだなにかある?」
    引き止めたのはいいが、なんと言っていいのか分からない。どうにかしたい、けれどもどうしたらいいのか分からない。裾を掴んだまま見上げていた良守は縋るような目線を送ってしまう。すると、横にそっとしゃがみこみじっと目を見つめられる。しばらく見つめあっていたが動く気配を感じて反射的に目を閉じる。ふにっと唇になにか触れる感触がして慌てて目を開けると、ちょうど顔が離れていくところだった。
    「本当に本気なんだったら冗談にするつもりはないけど?」
    「え?」
    言われた意味が一瞬理解できずに固まっていると、頭をなでながら立ちあがり「じゃあな」と今度こそその場から去っていった。
    しばらくその姿を見送っていたが、いま起きたことを咀嚼しきると今度は頭がパンクする。
    「え?え?え~~~~!?!?!?!?」
    これって両想いってこと?っていうかそのまま帰る?俺どうしたらいいの?
    先ほどとは別の意味でどうしたらいいのか分からなくなる。次に会うまでにどうしたらいいのだろうか。なにかこちらから行動するべきなのか。っていうか言い逃げ?むしろあちらからなにかアクションを起こすべきなのでは?ぐるぐる考えを巡らすが、女の子相手ですらそういった経験がないのに、実の兄に対してなんてますます誰にも相談できない。
    「うお~くそ~~バカ兄貴~!!どうすんだよ。俺…」
    一人頭を抱えてうなる。新たな悩みの種が生まれてしまい、次いつ会えるとも分からない時間を悶々と過ごすことになる。
    こんなことなら調子に乗って言わなきゃよかったと思ってももう遅かった。



    ~余談~
    「月が綺麗ですね」が「I love you」なのは有名ですが返答の仕方を調べていていくつか候補があったのでちょっと書きだします。もしかしたら他にもあったりするのかもしれないですが一説としてご参考までに。

    「死んでもいいわ」=ok
    「月はずっときれいでしたよ」=ずっとあなたが好きでした
    「あなたと見る月だから」=いつも見ている月がこんなに綺麗なはずはない、あなたと一緒に見る月だから綺麗なのだ。あなたは特別です。
    「手が届かないから綺麗なんです」=手が届かない相手だからこそ特別な感情が沸いてくる
    「このまま時が止まれば良いのに」=このままあなたと過ごす時間が続けばいいのに

    ということで正守にもこの返答の中から使わせてもらいました。
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