「あ、あのさ、兄貴、スナバって知ってる?」
「そりゃ、知ってるさ。公園にあるやつだろ。馬鹿にしてるのか?」
「え?公園にあるの?」
「え?お前砂場知らないの?」
「知らないっていうか…」
「小さい頃一緒に遊んでやったじゃないか。っていうか逆に知らないって大丈夫か?」
「何がだよ!知らないからってそこまで言うことないじゃないか!」
「知らない?本気で言ってるの?」
「悪かったな!知らなくて!」
「嘘だろ?頭打った?」
「は?なんでそこまで馬鹿にされなきゃいけないんだよ!」
「だって砂場だよ?知らないやついないんじゃないか?利守だって知ってる」
「え?」
「え?じゃないよ。ほんと大丈夫か?」
「ちょっと高いコーヒーとか売ってるらしいとこなのに利守も知ってるのか?今どきの小学生はすげえなぁ」
「あれ?もしかしてスタバと間違えてる?」
「スタバ?スナバだろ?」
「お前の言い間違いは前からおかしいと思ってたけど、わざとじゃなくてほんとに素だったんだな」
「え?スタバなの?」
「そう。お前が言いたかったのはスタバだろ。スターバックスコーヒーの略だよ」
「くそー田端め。あの時言い間違いを正してくれてたら兄貴の前で恥かかなかったのに。うぉぉぉぉ」
「で?スタバ知ってたら何かあるの?」
「あ、えっと。兄貴は行ったことある?」
「まあな。そりゃ大人だからな」
「くそーずりぃ」
「そんなこと言いたかっただけ?」
「あ、いや、えっとー。飲んだことある?」
「行ったことあるんだから飲んだことあるだろ。行ったのに何も飲まないなんてありえない」
「美味しい?」
「もちろん。コーヒーもあるけど、どちらかと言うと季節ごとにでる限定のやつが甘くて上手いんだよなぁ」
「へぇ~」
「なに?行きたいの?」
「うん、まあ、そんな気がしなくもないわけでもないけど」
「ハッキリしないなぁ」
「わかった。ハッキリ言う。兄貴一生のお願い。スタバに連れてって」
「俺に頼み事なんて珍しいな」
「なんでもするから」
「時音ちゃん誘って行けばいいじゃないか」
「いや~兄貴と行きたいなぁ」
「ふーん。なにか企んでる?」
「んあぁぁもう!俺に、今出てるコーヒー牛乳のやつ奢ってください。お願いします。兄貴、お兄様、よっ頭領!」
「最後ので奢る気なくなった」
「なんだよもう。どうしたら奢ってくれるんだよ?俺の小遣いじゃちょっと手が出せないんだよ」
「んーそうだなぁ。一日お兄ちゃんって呼んでくれるなら奢ってもいいかな」
「お兄ちゃん?」
「そ。さ、お兄ちゃん奢ってくださいって言ってごらん?」
「くそ恥ずかしい」
「嫌なら別に奢らないだけだからいいんだよ?」
「お、おに、いちゃん奢ってください」
「はい、変なとこで切ったのでやり直し」
「くそー。お兄ちゃん奢ってください(棒読み)」
「感情が篭ってないからダメ」
「お兄ちゃん!奢ってください!」
「しょうがないなぁ。そこまで言うなら奢ってやらないこともない」
「なんだよ、言ったら奢ってくれるって言ったじゃんか」
「奢るとは言ってない。奢ってもいいかなって言っただけで」
「言い損じゃないか。くそ」
「仕方ない。お兄ちゃんが奢ってやるか。その代わり一日お兄ちゃんって呼べよ?1回でも兄貴って言ったらなしだからな」
「は?そんなのよゆーだ。ってか俺にお兄ちゃんって言われて気持ち悪くないの?」
「嫌がるお前にそう呼ばせるのが楽しいんだ」
「悪趣味だな。これから行く?」
「久しぶりだし、行くか」
「やりぃ。兄貴早く行こうぜ」
「ふーん。奢らなくていいんだな」
「あっ…お兄ちゃん早く行こう?」
「よろしい。今日一日ちゃんと覚えとけよ」
「ちっ」
「なにか聞こえたけど?」
「な、なんでもないよ、お兄ちゃん」
「頑張れよ」
ということで、無事にご馳走してもらえました。