Knights of Night④ 意識ははっきりしているのに身体の感覚がないというのはものすごい違和感だ。まるで夢の中みたい、と、例えかけたけど、夢の中でも思うようには動かないだけで鈍くとも一応動くと考えればそれも違う。
動かそうという意思すらないのに勝手に移る視界、ああそうだ、これはある種ヴァーチャルリアリティのゲームに似ている。気を抜くと酔いそうなところまでそっくりだ。
こんなゲーム機があればさぞかし値が張るだろうな、とまで考えてしまったのは、少々不貞腐れているからだ。
先輩は、僕、なのか僕の中にいる吸血鬼に、なのか分からないけど鋭い目線で睨みを効かせているから油断はしていないだろうし、何かしらの考えがあってのさっきの言葉なんだろう。
けど、僕としては気が気じゃ無いんだよ。
背中に背負っているものが。
担いだままの狙撃銃。
この吸血鬼が扱い方を知っていないとは限らない。持ちうる能力の仔細も分からない。もしも少しの隙をついて悪用されたら──その銃口を先輩に向けようものなら──
ああ考えたく無い、けど可能性を捨てきれないなら想定のうちに置いておかなければならない、だから先輩には悠長に吸血鬼の話なんか聞かず僕の身体の自由を奪うなり鳩尾を殴るなりして動けないようにした方がいいと思ってるんだ。
なのに──という、思いがぐるぐるになって、結果不貞腐れているんだよ。
……ダメだ、気を取り直そう、先輩にはきっと先輩なりの考えがあるんだ、乗っ取られて迷惑をかけているのはこっちなんだし、今は任せるしか無い。
先輩は吸血鬼に話せと言った、吸血鬼は先輩に何かしらの用がある、ならばこれから明らかになるはずだ、故意に嘘でも吐かれなければ、の話ではあるけれども。
さぁ聞かせてもらおうか、と気持ちの腰を据えた僕。
そしてその僕の中にいる吸血鬼が告げたのは、
「何者かによりいずこかに隠された朕の肉体を探し当ててもらいたい」
という、単刀直入な、願いだった。
順を追って話せって先輩は言っただろ! と一瞬思ったけど、言わなかった──いや、言えなかったのは
その声が、自分の声なんだけど、なんだか随分と苦しそうに、聞こえたからだ。