つながり「好きだ」
と、
この人はよく言う。
「それはどうも」
と返すのがお決まり、だったけれど──
ある時ふと、
「どうして?」
と、聞いてみた。
そうしたら、向こうは、驚くでもなく、困るでもなく、小さく頷いてゆるく微笑みながら、こう、言った。
「縁もゆかりも、そして血の繋がりもない、赤の他人なのに、それなのに、縁やゆかり、そして血の繋がりがある人物と同等かともすればそれ以上に、大事な存在だからだ」
それを聞いて、目を丸くしたのは僕の方。
「そして、叶うのならば一瞬たりとも逃さず共に居たいと望まずにはいられない、そういう存在は、お前だけだ」
ゆっくりと伸ばされた手のひら、は、あたたかい、けれど、多分触れられた僕の頬の方が、あつい。
「この答えでは、不満か?」
くしゃりとした、笑みに見える、不安。
ああ、言葉、出ない、な。
なに、を、僕は、言え、ば、いい?
分からない、だけど、これ以上、不安を抱かせたくない、僕、だって──
ごめんなさい。
あなたはちゃんと、言葉で伝えてくれたのに、同じようにできなくて行動で、しか、示せなかった、僕を、どうか好きなままでいて。
そんな願いを込めた、ともすれば噛み付くような口付け。
それは、
「大好きだぞ」
という、愛おしい人の声と共に、柔らかく受け入れられた。