きみがすき カズサとのキスは、嫌いだ。
「……──っ、は」
一度し始めたらひたすらに長くて、深く、て、呼吸が浅く、なっ、て、それで─……
「……っ、ぃ、い加減に──」
しろ、と、言おうとした、言うつもりだった、それなのに言えなかったのは──
「……ごめん」
そう口にする、カズサ、が──
思春期の青さをとうに捨て、異性との酸いも甘いもそれなりに経てきたはずの、そんな、ひとりの大人が、
「好き、だから」
などと、生来のものよりも更に目尻を下げて、ともすればだらしなく、だがしかし、腹の裏まで曝け出す、ような、そんな、甘く滴ってきそうなほどの、瞳で、僕を見下ろしながら先んじて言ったからだ。
そして、それを目の当たりにして息を呑んでしまったこちらの口を、またしてもその濡れた唇で塞がれ、て、しまっては──
……ああ、だから、嫌いなんだ、カズサとの、キスは。
いつも、いつだってこうなってしまうから。
『僕も好きだよ』、と、言えないまま、心地よさに呑まれてしまうから。