Real Face 隊長が、サギョウに話しかけている。それだけならよく見る光景──なの、だが──
どうにも気に掛かって、事務仕事の手も止めて、そうまでしてふたりの成り行きを見つめてしまったのには訳がある。
サギョウが、笑っていたからだ。
誤解のないように言っておくとサギョウは特段無愛想な方ではない。だが隊長に向かって、まして勤務中となれば伝えられる内容はほぼ職務に関することであろう状況で、そしてその最中に頬を緩ませる姿などこれまでは皆無と言ってよかったほどだ。
そのサギョウが、微笑んでいる?
もしや話の内容が桃色ががった雑談なのか? とも、勘繰ったが、そのとき特有の歪みもない穏やかで柔らかな雰囲気に、途端にざわつく腹の中。
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