このタイミングとは思わなかった「はぁーつっかれたぁ~」
「お疲れ、飲むか?」
「いただきます」
手渡されたビールを一気に喉に流し込めば、ずっと弟や妹の世話をしていた渇いた身体に一気に水が行き渡り、漫画のようにかぁーっと声が出た。
「ハハハッまるでおじさんだな」
「確かに、昔は意味分かりませんでしたよね。今は理解しましたけど、自然と出ますねぇ」
今日は不死川家のBBQに弟たちがお友だち家族を誘ったらしく、想定していた二倍の数になってしまい、困っていると悲鳴嶼さんが実家の広い庭を貸してくださり、俺は今悲鳴嶼さんのご両親とうちの家族と弟友人又は家族という。大人数で楽しんでいるわけだが、まぁ、皆楽しんでいるようだしなかなか良かったんじゃないだろうか?
「お庭ありがとうございましたぁ」
「構わん、両親も久々に子供と遊べて楽しいみたいだしな」
二人で庭の砂利が少ない場所で、あとは任せてと息巻いていた玄弥や就也のお友達のお母さん達が遊ぶ子供達の監視をしてくれているし、先程までいた場所では今度は竈門が焼きに回り、嘴平と我妻、弘とことが楽しそうに肉をつまんでいる。
縁側では悲鳴嶼さんのご両親とうちの女衆や食べ疲れた子供やその親が歓談中だ
「まっさか、恋人の実家に行くのがこんな理由とは思わなかったですよぉ?」
「んぅ!?」
ブッと麦茶を吹いた悲鳴嶼さん、いや、二年ほど付き合っている恋人に内緒話をするみたいに思っていることを言ってやろうとげほげほ咳き込んでいる大きな身体の隣にしゃがむ
「スーツで二人っきりでならもっと嬉しかったんですけどねぇ」
「本気にするぞ?」
いくら鈍くても両親のところに恋人と二人で正装してとまで伝えりゃ気付いたみてぇだなぁ
「男が男に告白したんですよぉ?本気じゃねぇなら伝えてませんよぉ。ちなみに母ちゃんと玄弥は俺が悲鳴嶼さんと付き合ってるの知ってますよぉ」
「マジか!」
「マジです。結構速攻でバレました」
ビールの残りを一気に飲み干して悲鳴嶼さんの方を向けば、嬉しそうに目を細めている。
一応押しておくかと、更に身体を寄せようとすると、腕を捕まれて、二人で庭に転がることになってしまった。
「先生!大丈夫ですか!?」
「不死川が、一気に酒が回ったようだ」
「兄貴!大丈夫か!?」
「あー悲鳴嶼さんが受け止めてくれたからぁ大丈夫ぅ」
皆に見えない方の悲鳴嶼さんの脇腹をつねくりながら身体を起こすが、下敷きになっていた悲鳴嶼さんは声を殺して楽しそうに笑っている。
「不死川、今度、君が言うような格好で君の家から行こうか。うちの親も私が男と付き合っていてその人と生涯を共にしようとしている事は知っているんだ」
よいしょと身体を起こすタイミングで落とされた言葉にポカンと俺も彼を見降ろす。
「玄弥も卒業したしそろそろ問題ないだろう?」
「マジ?」
「再来週の土曜にご家族の都合が良ければ良いんだがなぁ。ちょうど大安だ」
「アンタなぁ、動くと決めたら早いだろぉ」
「思い立ったら吉日って言葉を知っているか?」
立ち上がっていた俺に自然と差し出された手を受け止めて、立ち上がるのを手伝うと、何故か本格的に笑い出す悲鳴嶼さんに首を傾げるが爆弾を落とされるような気がして、内容を聞くことはやめて二人で縁側に移動した。
ちなみにお袋によって、二週間後の土曜の予定を強制的に空けられた家族からのブーイングはそこそこあったが、うちの家族と悲鳴嶼さんご家族からはかなり大歓迎された。
ご両親もお兄さん達家族も歓迎だったので、今年のゴールデンウィークは四家庭合同キャンプが企画された。