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    香月あまね

    『Nemophila』の中の人。
    文字書き。甘いものからシリアス、パロディまで何でも来いの人。ショタ属性。
    未だにダンマカの沼から抜け出せずに、毎日踊り続けています。

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    香月あまね

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    エーテルネーア様との逢瀬を思い出しつつ髪を切るロイエさんのお話。(ロイエテです)

    #ダンマカ
    danmakha
    #ロイエテ
    roiette.

    白銀の紗幕 ――髪を、切った。
     加減が面倒だったから、掴んだ房にナイフの刃を当てて。流石に人前に出られる程度の細かい調整は鋏が必要だったけど。
     ユニティオーダーでの在籍時代から考えると、随分と長い事肩から下までを覆っていた髪は、肩口に付かない程度までさっぱりとして。同時に色々なものを軽くしていった気がした。



     元々、伸ばしていた理由なんて大した事じゃない。あの人の言葉に影響されていただけだ。
     感情の起伏の少ないあの人が、唯一微笑ってくれていた少ない逢瀬の中で。
    『――…貴方の髪は、まるで白銀の紗幕の様ですね。ロイエ』
     そう言って、長いこの髪が好きだと。周囲から遮られる様に見える2人きりの光景が好きだと微笑ってくれた、あの日。
     ならば、何時までも紗幕の中で2人だけの夢を見ていたい、と叶わぬ夢を望んで。髪を切らぬ事を約束したのも今となっては過去の睦言。
     ――紗幕の中に残されたのは、気が付けば自分ひとり。
    「…貴方が居なければ、紗幕も何も必要無いのですよ」
     もうきっと、髪を伸ばす事も無いだろう。
     床に散らばった自分の髪と、鏡に映った自分の顔を見比べて思わず苦笑が零れた。
    「軽く、なったなあ…」
     この姿をあの人が見たら、何と言うのだろう。
     折角の髪を、と怒ってくれるのだろうか。
     それとも、好きだったのにと惜しんでくれるのだろうか。
     答えをくれる相手は、もう何処にも居ない。
     居るとすれば、記憶の中で微笑っている、あの人だけ。
    「貴方の為だけの髪だったのだから、赦してくれますよね」
     返事は胸の内に、音になる事なく響き渡って。
     粗方の床の髪を集めると、そのまま外に束を掴んで行く。
     人気が少ないところまで持って行くと、そのまま束の端に炎を灯した。
     空高く浮かぶ天空都市。恐らくその何処かに眠って居るであろうあの人の元へ届くように。
    「もう、貴方の傍で紗幕を降ろす事は出来ないけれど。せめて貴方が持っていて下さい」
     ――いつか、赦されるなら。また貴方の傍らに逝ける日も来るかも知れないから。



    「大将、何か妙な匂いが…って、髪!どうしたんだ!」
    「ああ、ライデンくんか。一々結ぶ手間も面倒だし、とある人に預かって貰ったんだ」
    「預かる?」
    「そう。受け取るのは近い未来かも知れないし、随分先になるかも知れないし。そもそも受け取れるかも分からないけれど」
    「…詳しい事は分からんが、よくそんなにバッサリと行けたもんだな」
    「うん。凄く軽くなったよ。色々とね。」
     燃やす髪の匂いが気にかかったのだろう、やって来た相手に事情を話す。
     …これ、我ながら思うけど、禅問答並みに話が吹っ飛んで無いかな。
     まあ、やって来た相手がライデンくんだった事もあって、深くは追求せずに話題を流して貰えたのは運が良かったかも知れない。
     これから暫くは、皆に髪を切った理由を聞かれることになるんだろう。
     勿論、単純に結ぶ手間が面倒だったで通すつもりだけど。
     ――本当の理由は、きっと誰も知らないまま。あの日のあの人の微笑と共に、僕の胸の内に。
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    Replies from the creator

    香月あまね

    MEMO支部に放り込んだワンドロの雰囲気の大元となる『最近書いていたシリアス』の冒頭です
    ロイエさんとシャオくんの出会いから結末までを書きぬこうとしている最中
    長期戦勝負確定の為、ロイエさんがシャオくんに出会う前のシーンまでの公開に留めます
    この先の話の切れ目を探したら相当遠かった……
    続きが気になる方はX(Twitter)をチェックしていただければ、2024年中には出したい気持ちです
    この手に抱えた愛を【冒頭部分】- 1 『邂逅』 -

     真白い色へと覆われた大地を塗り替えるように、鮮やかな紅が散ってゆく。
     ──地上にも雪が降る、と言ったのは誰だっただろうか。
     その言葉に偽りは無い。但し、アークで見慣れた綿菓子や粉砂糖のような細やかな『雪』と、地上のそれは同じ名で呼ぶには些かはばかられるような気すらする違いを持つ代物だ。
     地上に降る雪は容赦なく生命の持つ熱という温度の全てを奪ってゆき、僅かな合間にも辺りを凍り付かせる、ある種生命の天敵のような存在であった。
     そんな極寒と共に吹き荒ぶ真白を、視界から打ち消すものと言えば、戦闘の合間に倒れ伏す者の体内から溢れ出る血液で。皮肉にも、雪の代わりに生命を奪った証とも言える液体の色が、真白で塗り潰された世界に唯一新たな色彩を加えるのだった。
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