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    zuzuko0817

    典ソハ小説

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    zuzuko0817

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    初期刀蜂須賀破壊あり
    未完の供養
    話の流れ上大典太がスパダリになってしまい、
    解釈と決着がつかなかった。
    あと単純に書いてて面白いかわからなくなった
    春コミで本出そうとしたけど、どうしても出さなそうなのでここで供養しておきます
    後半はネタって感じのぐだぐだ語り

    貧乏幼児審神者本丸のソハヤノツルキがモブにパンツを売る話君かわいいね、と小さな子供に声がかかる。人通りの少ない道で数えで3つほどの子供が年配の醜悪な男に声をかけられた。子供はきょとんと無垢な瞳で男を見る。まだ世間の何もかも、知らないのだ。男が続ける。君の本丸はお金に困っているのだろう、そうだ、君の今履いているパンツをくれたら―――


    「俺の主に下衆な提案をするんじゃねぇよ」

    子供に男の手が伸びる瞬間、ソハヤノツルキが男の手を掴んで間に割り込んだ。主に害を成す者だ。それだけでソハヤの眉はキツくつり上がる。錬度は決して高くない。それでもこの主を守れるのは自分しかいないのだ。
    男は下劣な提案をするだけあって、確かに懐は潤っていそうな身なりであった。少しだけ、ソハヤは考えて、主の耳を手のひらで覆う。今から話す内容は幼い主にはわからない。それでも絶対に聞かせたくなかったのだ。

    「・・・・・・なあ、写しのパンツならいくらになるんだよ」


    ソハヤは握らされた金子を数えてあからさまに安堵を漏らしてしまう。これで主は一ヶ月は食いっぱぐれないだろう。たった少しの辛抱で、あの汚らしい男の目の前でソハヤが脱いだばかりのパンツを渡しただけで、主は今日の飯にありつける。腕の中の子供が何もわからずきゃらきゃらと笑っているのにソハヤも笑いかけながら、手に入れた金で早速手に入れた食料を片手に自分達の本丸へ帰宅の徒についた。

    「今帰った」

    シン、とした本丸。審神者の霊力と比例している本丸の敷地面積は子供ながらにも審神者に選ばれるだけあって広大である。でもそれでけだ。この本丸の刀はソハヤしかいなかった。おかえり、と返ってくる声はもう、ないのだ。
    「ほら、主も。ただいま、って言うんだ」
    舌足らずにソハヤの真似をする主にソハヤはおかえり、と返した。この言葉にはこうやって返ってくるものなのだと子供に教えなければならないと思ったからだ。

    ソハヤは主の唯一の守り刀である。この本丸でたった一振の。主の靴を脱がせると、まだまだ元気いっぱいな子供は奥へと走っていく。目を離すとすぐこうだ。最近は動くことがただただ楽しいらしい。ソハヤも履き物を脱いで主の後を追う。内番着の方が子育てしやすくて最近は専ら内番着だ。そもそも鍛刀されて以来、戦闘服に身を包んでいないかもしれない。
    がちゃん、と音が奥から聞こえてソハヤは慌てて音の方向へ向かう。主が床の間に飾っていた桐の箱をひっくり返してしまったらしい。桐の箱の蓋は開いて、砕けた刃物がこぼれてしまっている。
    子供の小さな手が好奇心に任せて触れようとするのを間一髪でソハヤは止める。

    「主、危ないから触っては駄目だ。大丈夫アイツはちゃんと見守ってくれてる。だから、この箱は開けちゃ駄目だ」

    わかるか?と言うと主は首を傾げながらきらきら?と言う。ソハヤはぐっと、眉間に皺を寄せる。まだ傷は深くて、力を込めていないと涙が出てしまいそうだったのだ。主の前で泣くわけにはいかない。だって主はなにもわかっていないのだから。子供の頭を撫でて、ソハヤは自分に言い聞かせるようにいった。

    「そうだ、きらきらが眠っているんだ」

    きらきら、と主に呼ばれた折れた刀身を拾って箱に戻していく。ソハヤの唯一の同僚で先輩だった刀。この本丸の初期刀の蜂須賀虎徹であった。



    主が今よりもっと舌足らずの時のことである。初期刀の蜂須賀によってソハヤは鍛刀された。この本丸の初鍛刀がソハヤであったのだ。ソハヤは顕現した瞬間の時のことを今でも鮮明に覚えている。口上を述べると子供が走ってきて、きらきらと同じ!と言ったのだ。蜂須賀はそれに少し驚いてからそうだね、同じ色をしている、主は本当にい金色が好きなんだね、なんて笑ったのだ。刀派でもなんでもない括りが新鮮で、面白くて、ソハヤも悪い気は起きなかった。

    最初はそんな二振と一人の本丸であった。
    蜂須賀が言うには主は当初もっと赤子で、ようやく今回一振だけ鍛刀できるようになったとのことだった。

    「ソハヤが来てくれて助かったよ。これからもこの本丸はまだ出陣にはいけず、主の子育てが主な仕事だけどね」
    「戦仕事で喚ばれたのに出陣できないとはどういうことだ?」
    「ほら、」

    いぶかしげに聞いたソハヤに蜂須賀は内番着の袖をめくる。血の滲む包帯が巻かれた腕を見せてきた。

    「主は豊富な霊力で無理矢理審神者に据え置かれている。でもなにもわかっていない。子供だからね」
    「手入れもできないってか」
    「そう。だからこの本丸では怪我を負ってはいけない。今のところ手入れできる見込みはないからね」
    「・・・・・・政府のやつらはなんとかならねえのかよ」

    本霊に戦仕事の嘆願に来た人間達を思い出す。蜂須賀は苦く笑った。

    「自分の刀は自分の霊力でしか治せないらしい。あの人間たちはあまり頼りにはならないね」

    子育てにもそれは言えるようで、彼の顔には育児疲れの表情すら見える。内番着がわかりやすくぐったりとしていた。

    「ソハヤが来てくれたおかげで、一振が主、一振が遠征に行けるというのはだいぶ大きいよ。まずは主を育てることから一緒に頑張ろう」

    今までは子育てしながら畑仕事しか出来ていなかった。遠征にも行けないから資材も少なくて、と話す蜂須賀がああ、と思い出したかのように呟いてソハヤに一冊の本を渡す。

    「なんだこれ」
    「恥ずかしながら厨仕事は向いていなくて・・・・・・」

    渡された料理本に目を通し、再び顔をあげて蜂須賀を見る。彼の指さす先には惨状と言うべき廚があった。その時初めてソハヤは自分がしっかりしなければならないと思ったものだ。

    主と蜂須賀とソハヤ。蜂須賀が遠征で少しの錬度上げと資材を抱えて帰ってくる。その間ソハヤは主の子守をしながら土地の割に手が回らないからと、小さく耕した畑の世話をする程度であった。あまりにも貧乏で、遠征を交互にするよりも、蜂須賀の錬度上げを優先しようと二振ではなし会った結果であった。出陣も、遠征も出来ないソハヤであったが、主と蜂須賀が良く笑う。そんな光景がソハヤは嫌いではなかった。ゆっくり主が成長するのを待ちながら
    でも良いと思ったのだ。刀にとってはあっと言う間の時間であろうと悠長に構えていた。

    それが、悪かったのだろうか。

    ある日、蜂須賀は折れてしまった。
    本丸に襲撃があったのだ。たった二振、しかも蜂須賀しか練度上げされていない本丸に勝ち目はない。蜂須賀が交戦し、ソハヤは主を守りながら政府へ救援を呼んだ。

    地道に錬度上げした蜂須賀であれど、決して錬度は高くなく、単騎で勝てる相手でもなかった。
    政府の援軍がきて、敵を撃退した頃には既に
    物言わぬ折れた刀身になっていた。

    それ以降、ソハヤはたった一振で主をそだてている。先ほどの外出は畑仕事だけでは人間を満足に育てるための栄養が足りなくて、政府に嘆願した帰りであった。
    結局、各本丸の問題であると門前払いされてしまったが。

    「主、今日は久しぶりに肉と米が食えるぜ。好き嫌いすんなよ」

    よくわかっていないのだろうに、ソハヤが笑っているのが嬉しいのか主もきゃあ!と笑う。
    特殊な趣向もいるものだ。それに救われた。ソハヤは買ってきた食材と、畑でとれた野菜の調理を始めながら思う。

    ソハヤは三池の刀である。霊力に自信がある霊刀だし、添加人の愛刀であった自覚とキョウジがあった。自刃の下着を売るなど下せんな行為であるとも思う。
    けれど今は分霊として自分は主のために降りてきた刀だ。
    戦働きをするためにもこの主を立派に育てなければならない。
    それは降りた自分の強い意志と、折れた友刃との約束からくる確固たる決意であった。
    そのためならば、多少の行為など目を瞑るべきなのだ。

    「ま、新しいパンツに買い換えてもらってるし、損はしてねえな」
    主が大きな口で白米を頬張る。健やかに育ってほしい。
    ソハヤは主の口の端についた米粒を手にぬぐい取ってやった。















    ***
    「上手くいった、上手くいった~!!ただいま~!!」
    太閤左文字の元気な声に主が机の書面からパッと顔をあげるとソハヤが引き留めるのも間に合わない速度で駆けていく。
    「おい!まだ今日の勉強終わってねえだろ!!」
    後でやるー!なんて言葉を残していく主にソハヤは頭を抱えた。絶対に忘れてしまうから、夕飯後にはもう一度小言を言わなければならないことが確定したからだ。
    玄関先が騒がしくなっていく。太閤に続いて他の遠征メンバーも戻ってきたのだろう。やれやれ、と主の後を追ってソハヤが顔を出すと思った通り、遠征から返ってきた太閤、小竜が主に土産を渡している最中であった。

    あれから、ソハヤが最初に男にパンツを売ってから。ソハヤが地道に気長に子育てをしたこともあり、主は幼等学校に通うになった。ようやく審神者とは、となんとなく理解するようになり鍛刀、出陣、手入れだってできるようになった。裕福とは言えないが明日の食べ物に困るほど貧乏ではなくなったのだ。
    いや、鍛刀は出来るようになったとは言い難いかもしれない。ソハヤが一振りのみになり、それから2年経って顕現できたの大閤と小竜のみなのだから。

    「相変わらず揃うと目がチカチカしちゃう色合いだよね~」
    「主の黄色好きは凄いね。そういった色味しか揃わないのだから」
    太閤の言葉に小竜が返す。審神者としての能力の影響なのか、増える刀は専ら、色味で分類するなら顕現姿が黄色い刀ばかりであった。

    大閤の尻尾で遊んでいた主がきらきら好き!と言ってソハヤの腰元にしがみつく。
    「儂は?」
    「俺は?」
    口々に愛されていることをわかっている刀たちは冗談混じりに主に聞く。みんな好き!でもきらきらが一番!と主はソハヤの腰にしがみついてくり返した。
    「ちぇー、やっぱり初期刀様は違うってことぉ」
    口をとがらせて悔しがる太閤の言葉に、ソハヤは気づかれない程度に奥歯を噛みしめた。


    「おや、もう帰ってきたんだね、お帰り」
    「蜂須賀!今日の晩飯は?儂もう腹減って倒れそう~」
    内番着にたすき掛けをした蜂須賀がお玉を手にもちながら顔を出す。今し方まで廚で夕飯を作っていた姿。この蜂須賀は料理が出来る。主もはちすか!と舌足らずながら彼を呼んで今日の献立を聞く。
    こんな光景、何度も見ているはずなのに、なぜだか今日のソハヤはいたたまれなくなった。


    「な、なあ!たしか醤油切れているって言ってたよな!」
    「ああ。でも今日の分は間に合うけど」
    「俺ちょっと町まで行ってくるよ、買える時に買っておかないと忘れちまうだろ」
    「えっ、ああ・・・・・・」
    無理矢理主張を押し通してソハヤは財布をひっつかむと町まで飛び出した。政府の管理下の、刀剣御用達の商店街だ。
    なんだか心がざわざわする。良くないざわざわであることは自覚があった。しかしなんと表現するのが正しいかわからなくて、胸元をぎゅ、と掴んで深呼吸する。

    きらきら、と主が呼ぶのは初期刀の、ソハヤを喚んだ蜂須賀であった。それなのにいつからだろう。小さい子供の記憶違いからなのか、ある日突然、主はきらきら、とソハヤを呼んだ。初期刀もソハヤであると今では認識しており、主の認識通り他の刀たちもソハヤがあの本丸の初期刀であると思っている。二振り目の蜂須賀もだ。
    訂正すれば良い話だ。昔ならさておき、幼等学校に入った今の主であれば少しは理解は出来るはず。それでも訂正しないのは、今いる蜂須賀が二振り目であり、初期刀は折れてしまったこと。それを主に認識させるのが怖かったのだ。
    主はまだ子供なのだ。

    ソハヤの元主のような時代でもない現代で子供を無理に大人にさせるのは嫌だった。
    いくら未だに戦の真っ最中であろうとも。
    それがソハヤの親心であった。
    いつか、いつか、と思って折れた蜂須賀の入った箱は自室の天袋に移し今日まで経っていた。
    いつか言おう、でも今じゃない。まだ主は幼すぎる。
    そう思ってもこの秘密はそろそろソハヤにとって重すぎて、時々誰かに打ち明けたくなってしまう。



    醤油を買い終わった頃には、どうにか心も落ち着いていた。そんな自分にほっとしていると、ぬっと、裏路地から手を引かれる。錬度は本丸内では低くないが、外から見たら高くもない。たかが人間を避けきれなかった。
    裏路地に引き込んだ男は、以前よく生活費と言う意味にで世話になっていた男だった。
    「・・・・・・あんた」
    嫌々口を開くソハヤなど気にもとめず、男は最近会えていなくて寂しかったこと、また金を渡すから下着を売ってほしいと早口でまくし立てた。
    正直なところソハヤの本丸は貧乏ではあるがもう男にパンツを売るほどではない。男に伝えてみるも、全く聞こえていないようでしつこく迫ってくる。

    「・・・・・・わかったよ。一番高いやつならやってやるよ。どーする?」
    今までソハヤが男にパンツを売る中で、いつしかただ売るだけではなく、いつしか選択肢が増えていた。その中で最も高額なもの。懐の潤っているらしい男でも渋るそれは確かに高額で、男はいつも財布と相談しながらも断念するのも知っていたのだ。
    しかしソハヤの予想に反して男は是非にと喜んで大金をソハヤに握らせる。ひくり、とソハヤの口の端が動いたが、もう断れなかった。
    内番着のズボンをゆっくりと脱ぐ。一挙動足りとも逃すまいとする視線が気持ち悪かった。ボクサーに手をかけたところで、そういえばこれもこの男に買ってもらったものだったな、と思い出す。ありがたくないことだがパンツの替えは自分で買ったことなどなかった。
    男の鼻息が荒くなったことに、未だ慣れずに顔をひきつらせてソハヤがいよいよパンツを下ろして片足にひっっける。足をあげて男にそれを取らせようとする―――
    「刀へのブルセラ強要、か・・・・・・?」
    ブルセラってなんだ?そう思いながらも、目の前の男があからさまに焦り、言葉を発した第三者が政府所属の腕章を付けているだけで、まずい状況であることはソハヤにもわかる。
    霊力の質からも随分と錬度も高いとわかる大典太光世が、男とソハヤを見ていたのだった。



    政府所属の腕章をつけた役人たちが先ほどまでソハヤのパンツを買っていた男を連行していく。政府所属の大典太が目撃から通報まで実に手早い仕事ぶりであったのだ。
    ソハヤはノーパンでズボンを履きながら、さも自然に握らされている現金をポケットにしまう。男がしょっぴかれた以上この現金も証拠としてもっていかれてしまうのは困る。パンツを握りしめたまま連行された男ではあったが、取引は成立しているのだ。こんなことならキャッシュレスにしてもらえば良かった。そう思うのはひとえに現実逃避だ。いくらソハヤでも現状がまずいことぐらいわかる。本丸に、主に迷惑をかけたくはない。大典太が一歩近づいてきたので、同じ歩数だけ後ずさりする。
    「そう、怯えるな」
    「怯えてなんかねえよ」
    「少し事情が聞きたい」
    「任意聴取ってやつかい?だったら嫌だね。本丸に醤油をもって帰らねえとみんなが晩飯にありつけねえ」
    少しの嘘を混ぜてでも、一刻も早くこの場から解放されたかった。面倒ごとは勘弁してほしかった。ソハヤが如実にそれを表していると大典太は思いの外あっさりと、そうか、と言った。どうやら解放してくれるようだ。
    足下の醤油の一升瓶を抱えて、もう会うことはないであろう大典太の横を通り過ぎようとする。
    初めての同派の遭遇がこんなかたちとは運が悪いな、とも思ったが、ソハヤにとってはそこまで気にすることでもないな、と思い直す。
    「随分と、手慣れていたな」
    「なんだよ」
    横を通り過ぎる直前にぽつりと大典太がこぼした言葉は抑揚がないながらも皮肉混じりであった。思わず喧嘩腰の声がうわずる。
    「なぜこんなことをした?」
    あんたには関係ねぇだろう、そう言ってしまえばこの刀との会話は終わる。早く帰りたいと思っていたのに、無視すればいいのに、ソハヤにはそれができなかった。大典太の静かな瞳が、同派としてのあり方を非難しているように見えてしまった。
    俺たちのことなんか、なんにも知らねえくせに!
    そう思い始めたら止まらない。政府所属のこの刀が悪いわけではないのに、あの日、あの時、初期刀も失って、腹を空かせた主を抱えて嘆願しにいった時、冷たく見捨てた政府の役人の顔がちらついてしまったのだ。

    「っ・・・・・・!貧乏だからだよ!!うちの主は食べ盛りなのに、肉も米も食えないなんて可哀想だろ!!」
    初期刀がいなくなってから、主にも仲間にもこれほど激情を表に出したことはなかった。は、と肩で息をする。一度飛び出た恨み言はもう止まらない。
    「政府はなんにもしてくれねえ。うちは金子をもらえる出陣に行けるほど強くもねえし、仲間が増えてもいっぱいいっぱいだ。ははっ、世の初期刀様たちはどうやってこの初期の貧乏を抜け出してるんだか・・・・・・。俺じゃああんな少ない報酬で正当な運営なんて出来ねえんだよ」
    「待て」
    「っ・・・・・・なんだよ」
    ぐちぐちと呟く内にだんだん下を向いた目線が、大典太に両肩を捕まれたことにより、真正面になった。酷く混乱したような、慌てた顔をした大典太がそこにいる。
    「そんなに報酬は少ないはずない」
    「どういう、ことだよ・・・・・・」
    「初期刀は?」
    「……俺だけど」
    「お前が?」
    「なんだよ、」
    「いや……」
    いつも通り、初期刀は自分であると、とっさに嘘をついてしまった。政府相手にやって良かったのか、罪悪感に心臓がばくばくとした。大典太は眉を顰めたが特に追求してこない。そんな些細な嘘よりも大きな事柄があるらしい。
    大典太は未だ考え込んでいた。
    ソハヤに大典太は本丸番号を聞いてくる。渋々答えると少し待ってろ、絶対にだ、と念を押されて大典太は裏路地から出ていった。
    残されたソハヤは一度一升瓶を床を置き直す。ついでに自身も地面に座り込んだ。どういうことなのだろうか。あまり深く考えるのも億劫で立てた膝に顔を埋める。
    「おい」
    「思いの外はえーの」
    戻ってきた大典太が手に持っている黒い布が入った新品のパッケージを渡してくる。コンビニで良く買える男性下着の銘柄なのをソハヤも知っていた。
    「くれるのか」
    「調べ物の連絡をしていたら、その、同僚が買って渡せと。すまない、俺はこういうことに疎いから・・・・・・」
    「ふっ、あっははは!!なんだそれ!!」
    おまえが下着を履いていないなんて気付かなかった、と至極真面目な顔で言うものだからソハヤは毒気が抜かれてしまった。
    「はーーーぁ。そーだな、俺。今ノーパンなんだわ」
    先ほどまで少し気落ちしすぎていたな、らしくない、とソハヤは思った。もう少し気軽に考えるべきだ。自分は今生は主の刀で、主を立派に育てられればそれでよいのだ。
    特に気にもせずズボンを下ろして買い与えられたパンツを履いた。払える金なんてねえぞ、とケチくさく言うと経費で落ちるから良いと返ってくる。
    そうこうしているうちに電子音が鳴る。大典太の端末であった。通話に彼が出ると先ほどの調べ物の結果らしい。通信を切ってから大典太はソハヤにこう伝えた。
    「先ほど捕まえた男、おまえのところの本丸のサーバー管理者だ。手を加えて報酬が行かないようにしていたらしい」
    追って処分が下ると共に本丸に正規の報酬がくるだろう。そこまで聞いても今度はソハヤは冷静であった。怒りはあった。結局あの男のせいで、とか、そんなことすら見抜けなかったふがいない自身への怒りとか。それでもソハヤは自身の左の胸をつかむ。掴んで、耐えた。
    「なあ、それっていつから?」
    大典太の答えた期間は初期刀が折れた後であった。
    「そっか」
    少なくとも、蜂須賀が折れたのはあの男が原因ではない。あの本丸への襲撃には関与していない。あれは不運な事故だった、それだけ認識してほっと息を吐く。時運でしかなかったのだ。

    蜂須賀が折れたのは、
    誰のせいでもない。男のせいでも、主のせいでも。

    弱かった自分のせいではあるかもしれないともソハヤは思うが、力量よりも貧乏を呪う方が強かった。どう勘定しても、刀の飯を抜いてでも主に食わせる飯すらギリギリの日々で、練度上げなんてできる余裕は無かった。

    「ありがとな、いろいろやってくれて」
    「これが仕事だ、別にいい」
    「そっか、じゃあこれで・・・・・・、おい」
    ソハヤが今度こそ別れを告げて立ち去ろうとすると大典太が腕を掴んで引き留める。まだ用件が?と視線で問うと大典太はしどろもどろに目線を泳がせ、やっとのことで口を開いた。
    「・・・・・・罰則が、おまえにもある。政府施設で週一回倫理教育講座を受講しろ」

    「はぁ!?聞いてねえけど」
    「・・・・・・今言ったからな」
















    ***
    政府所有の建物の一室である。
    大典太光世は政府所属の刀であるので、会議室の一つくらいは自由に借りることが出来た。広すぎるテーブルの向かいに罰則用の課題をソハヤにこなさせながら、大典太はぼうっと窓の外を見て時間をつぶす。
    大典太は錬度もとっくの昔に頭打ちしている政府の中では古参の刀だったが、そもそも元々はある本丸の審神者の刀であった。
    成人をすぎたあたりで審神者業につき、年の割に思慮深い優秀な男であった。特に問題を起こすこともなく、適度に優秀な戦歴を収めた模範的な本丸経営で、それは審神者が老衰するまで続いたものだった。
    審神者、つまり大典太の元の主は前述の通り思慮深かったため、死期を悟ると刀たちに行く末を選ばせた。主と共に旅立つか、他の人間の本丸で戦働きをするか。
    大典太はその二つとは違う、三つ目を選んだ。
    それが、今の、政府の刀として働くということであった。
    大典太は審神者の近侍もよくしていた刀であったので、彼の生きざまを隣で見ていた。彼が良い伴侶を迎え、子を、孫を、家族を増やしたのを見てきた。子供を、孫を見てくれと子守を頼まれることもあった。刀のときにも見た人間の営みであったはずなのに、肉体を得てから見た感情はまた別格で。
    人間が生きていくことが、愛おしいと思ったのだ。
    審神者はあまりにも出来た主であったので、大典太に主以外の刀になる選択肢は存在しなかった。
    しかし元主のように子供が、孫が、脈々と受け継がれていくものを守るためにもこの戦争を見届けたかった。
    それが、大典太が政府所属になった理由であった。



    「なぁ、」
    「・・・・・・終わったのか?」
    「いんや、まだだけど」
    集中力が切れたのか、ソハヤが読んでいた本から顔をあげてくる。続きを促すと渋々と課題をこなすためにまた読み始めた。
    大典太は自分の手元にある資料に目を通す。目の前のソハヤの本丸の資料であった。先の件もあって、ここから調書を作らねばならないので政府のサーバーから取り寄せたのだ。
    未だに紙の、前時代的な資料に目を通す。本丸番号と審神者の仮名、そして初期刀の名前に蜂須賀虎徹、と書かれている。
    その文字を指でなぞる。
    ―――やはり初期刀ではなかった。
    盗み見るようにソハヤを見て、難儀な刀だと思った。
    ここで白状するが、実はソハヤの罰則は大典太が無理矢理作ったものであった。下着の売買なぞ不適切ではあれど、未成年の人間でもない刀が了承しているのであれば現状の法に触れることは無い。あの場で捕まえられた男も双方の合意がある以上脅迫などで立件は出来ておらず、ソハヤの本丸の報酬横領の容疑で捕まえている。
    つまり、ソハヤは全くの被害者立場で本当はこんなことはしなくても良いのだ。

    それでも大典太が、嘘をついてまで彼との縁を無理矢理作ったのは、ひとえにソハヤの無理な嘘が引っかかったからだ。
    初期刀とははじまりの五振からしか選出されない。ソハヤが初期刀になりうることは出来ない。
    そんな当たり前のバレる嘘をつく理由がわからなかった。
    すんなりと口から出ていたのはその嘘に慣れているのだろう。

    大閤左文字、小竜景光、そして二振目の蜂須賀虎徹

    それがあの本丸の刀の全てだ。異様に少ない。
    顕現日を見れば蜂須賀が二振目であることは明らかだ。しかしながら初期刀はソハヤノツルキであると言う。ソハヤノツルキが初期刀であるはずがないのに。

    ―――初期刀ではないくせに、そう嘯くか

    一体どの刀の写しをしているのか、大典太は気になったのだ。


    「おい、終わったけど」

    「見せてみろ」
    ソハヤの作った文章に目を通す。悪くない、本を読んで、そのうえでの感想や要点もまとめられている。そう褒めると主の読書感想文じゃねえんだからそんな褒められたってなあ、と素直ではない返答をよこした。
    「・・・・・・なんだ?」
    じろじろと頬杖をついて大典太を見るソハヤの視線に言葉を促すとろくでもないことを言うらしい。顕現の若い刀らしく笑みをつくってきた。
    「そういやぁさあ、ブルセラって最近言わないらしいぜ?あんただいぶジジイなんだな!」
    なるほど、顕現と言う意味でこちらが彼を若いと思うように、彼も大典太をジジイ扱いしたいらしい。にやにやと笑う笑みに年の功とはどんなものか、昔主に習ったような返しをしてやるのだ。

    「じゃあ今どきはなんて言うんだ?」

    「エッ、知らねぇ・・・・・・」








    ***
    この後
    小竜と大閤視点でソハヤが何か隠してるけど初期刀として信じてるから何も言わない、みたいな仲間思いシーン

    大典太と仲良くなるが罰則が終わりもう会う口実がなくなったところで、助けが欲しくなったら一番に連絡しろ、と言われるシーン

    主が倒れてしまい、霊力の問題だから初期刀なら解決できるとこんのすけに言われて、他刀にじゃあソハヤいるし安心だね!と言われて、

    初期刀じゃないと言えずに逃げるものの、アテがなく、大典太を思い出して助けを求めるシーン

    折れた蜂須賀と夢の中で主があって全て解決するシーン

    大典太がソハヤの本丸に移籍してくるシーンで大団円予定だったけどキャラの感情の辻褄が合わなかったのと書きたかったシーン(パンツ売るシーン)書き上げてこの後綺麗に着地しようとしたけど無理だったなーーーー

    やっぱりこれ面白いんか?ってなってしまったので解散

    もう書かないので供養しときます
    ケチだから10000字以上あるのもったいなくて無駄に足掻いてしまったなーーーー




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