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    zuzuko0817

    典ソハ小説

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    zuzuko0817

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    包丁とソハヤしか喋ってないけどこれは典ソハ

    霊力で視界が広くなるタイプのソが包丁に広域視界のやり方を教える話残暑も近い頃である。暦通りの景趣の本丸の渡り廊下を包丁藤四郎は歩いていた。特に要件などはない。あえて言うなら口うるさい兄弟刀に辟易してしまったのだ。やれ寝転がるなとか、夕飯前に菓子を食うなだとか。本日は非番なのだから好きにさせて欲しかったのに。自室は粟田口の大部屋のせいで不貞腐れた包丁には居場所がなかった。現在顕現できる刀を全て顕現している力ある審神者の広い本丸は散歩するにも丁度いい。向こうの山までこの本丸の敷地内なのでそちらに行っても良いのだが、しっかり外出をする気は起きなかった。

    そよ、と風が吹く。暑さを和らげるような涼しさがあった。山から降りてきた風が中庭を抜けてきているのだ。庭の花が揺れる。ちょうど風に合わせて視線を動かすと、中庭に面して自室の三池部屋があるソハヤがいた。

    「ソハヤ!なにしてるの?」
    「……んー、瞑想。包丁もするか?」
    「ええ、山伏みたいなことぉ」

    胡座をかいて背筋を伸ばし、ソハヤは目を瞑っていた。包丁が声をかけると返事はするが目を瞑って庭先を向いたままだ。

    「そんなのつまんないじゃん?」
    「そんなことねぇって、ほら」

    包丁の腕を軽く引っ張ったソハヤが懐に、ちょうど胡座の上に包丁を乗せた。短刀らしく収まりの良さに抵抗もせずに居座ると、ソハヤの大きな手が包丁の目の前にくる。

    「目を閉じてみな」
    「ん〜?」

    瞼を下ろすように優しく触れられて包丁は渋々目を瞑る。目を瞑ったからもちろん目の前は真っ暗だ。

    「何も見えないか。ゆっくり、呼吸してみろ。ほら、見えてくるだろう」
    「ん?ん〜??なんか見える……?」

    瞼の上に乗ったソハヤの掌からだろうか。じんわりと温かくなってきて目の奥を優しくほぐされていくような感覚がきた。外気は暑いはずなのに、風が優しく吹いているせいか暑苦しいわけではなく、心地よい温度であった。目の奥が解れる感覚と共に、真っ暗な視界に白く、輪郭が見えてくる。庭であった。目の前にある庭が、目を瞑っているのに見えてくる。

    「えっ!?なんで!!?目閉じてるのに!……あれ?」

    驚きのあまりソハヤの掌を勢いよく振り払って目を開けたせいで視界はいつもの、色のついた庭になる。先程の黒の中白い縁取りのある二色だけでできた不思議な光景ではない。ソハヤは苦笑しながら目を開けたら意味ないだろう、と言った。

    「もっかいやるぞ〜、目を閉じて、呼吸を整えて。そう、コツ掴んだなうまいうまい」

    もう一度ソハヤの手のひらが瞼にかかる。先ほどよりもあっさりとあの二色の光景にたどり着いた。

    「そのまま視野を広げるイメージを持って。そうだ。何が見える?」
    「玄関?あ、笹貫たちが遠征から帰ってきてる!」
    「そうだな。怪我も無さそうだな。そのまま玄関の扉の先を、壁の先も、木々の影も抜けるようにして」
    「千代金丸が山にいる……?祢々切丸に着いていったのかな」
    「あー、そうみたいだなぁ」

    包丁はソハヤの懐から一歩も動いていないのに、本丸の中全てが、むしろその先の山まで見通せてしまった。目を瞑っているのに今の包丁には本丸の中が手に取るようにわかる。本霊の時のような感覚であった。人間の肉体を得て眼球で周りを捉えてばかりいたので懐かしくもあった。

    「すごいすごい!顕現してるのにこんなことできたんだ!ソハヤの霊力?」
    「霊力でちょっとだけアシストしてるけど。元々できることだろ」

    皆できることを人間体のせいで感覚忘れちまってるだけだから。未だ目を瞑っているのでソハヤの声も頭上から降ってくるというよりは空間に響くようであった。

    「なんでこんなことしてるの?」
    「んー、……暇だから?」
    「えー?」

    ソハヤの返答が少し不自然であった。軽く誤魔化したような。なんとなくそれが癪に触った包丁はコツを掴んだ視野を広げる。ソハヤの誤魔化した理由はここの中にある気がしたからだ。

    ふと、広げた視野の先に薄ぼんやりと色のついているところがあった。濃淡のある灰色、いや、鈍く光る銀であった。なんだろうと思ってそこを拡大するように意識を集中する。あ、ちょっと待て、こら!とソハヤの焦る声が聞こえた。

    山の麓の小さな川だ。自分の兄弟たちが何振りか水遊びをしていた。そういえば包丁もせっかくの非番だから川遊びにと誘われていたのだ。白黒の輪郭でも兄弟たちが楽しそうにしているのはよくわかる。

    その先で、鮮やかに、人間の視界で見るのと全く変わらないように、色のついた刀がいた。大典太光世であった。藤四郎の刀たちの保護者のような振る舞いで連れてきた馬を撫でながら、内番着を捲り足先を水につけて涼んでいる。

    何故彼の刀だけ色がついているのだろうか。天下五剣だから?でも色がついてるというよりは、何かで存在を照らされているような。彼の内側から何かによって照らされているから彼の色が見えているような。彼の特殊な霊力であろうか?でもこれは彼の霊力というよりかは。

    「あっ!!!!」

    包丁の思考が素早く働いた。

    「もしかしてソハヤ、大典太にマーキングしてるの!?」

    ソハヤの掌を瞼から外す。戻った色彩豊かな視界が目の前にいるソハヤを映す。

    包丁の視界を手助けしていなかったほうの手で彼は自身の顔を真っ赤にするのを隠し、恥ずかしそうに呟いた。

    「……秘密だからな」

    それは多分元主の仲とかそう言ったことであろう。包丁自身、自分の性癖は中々であると思っているが許される身なりで顕現しているのを逆手に公言しているが、太刀の体躯でこの独占欲をひけらかすのは冗談にならないと本刃も解っているのだろう。よしみだし、と包丁は笑う。

    「しょうがないなー!明日のおやつ、分てくれるよな!」

    有無を言わせぬ言い方に自分の墓穴を感じながらもソハヤは二つ返事で了承した。
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