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    zuzuko0817

    典ソハ小説

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    zuzuko0817

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    三池が人間を見てるだけ

    #典ソハ
    formerSovietUnion

    現代遠征中に人間を見守る神様ムーブする話帰るぞ、と声がかかってソハヤは顔をあげる。座っていたブランコの鎖が不安定に揺れた。

    17時の鐘が鳴ったが、陽が長くなった公園にはまだ子供たちが元気に遊んでいた。親が迎えに来る子も居たが、夏休みに入った子供たちは大半許されているのかまだまだ帰る気配がない。

    スーパーの袋を持った光世がソハヤに声をかけてきたのはそんな子供たちを見ていた時であった。子供たちより早く迎えがきたなと、ソハヤは思って笑う。少しくすぐったかった。

    猫背の大男が夕飯の食材を待っている様は家庭的に見えて微笑ましい。長葱が飛び出ているのだってご愛嬌だろう。

    ソハヤはちょいちょい、と手招きして自分の隣の空いたブランコを指差す。視線は少し遠く、目の前で遊んでいる子供たちから離さないまま。彼の意図が読み取れて光世はゆっくりとした動きでブランコに座る。子供用の高さのソレは長い足を持て余した。

    「……いつからだ」
    「ん、昼くらいから?」
    「よく不審者と通報されなかったな」
    「暇な大学生に見られたんじゃねーの。それかヒモ。オニーチャンに飯作ってもらってるしあながち間違いじゃないかもな」

    冗談混じりにソハヤが笑う。光世が呆れたようなため息をついた。事実、ソハヤは全く自炊ができなかった。どうにも自分以外の刃物を振るうときに距離感が掴めないのだ。加えて火加減も下手くそ。本丸では厨を破壊しがちなので出禁を食らってるほどだ。

    三池の兄弟が遠征として現代に派遣されたのは3日前のことだった。一週間程度な短期任務。時間遡行軍の動向を探る先遣隊であった。それも早々に報告が終わってしまったので残りの期間暇を持て余し、事実上の夏休みを貰っている状態であった。

    「いつまでやる気だ」
    「ずっとここにいることはできないからなぁ。でも今日ぐらいは無事に家に返してやりたいだろ」

    1箇所を、ソハヤは鋭く睨みつける。きいきい、とまたブランコの鎖が鳴った。

    昼に光世の作った素麺を食べて、あまりに暇だったソハヤは食後の運動とばかりに散歩に出たのだ。用件が無かったので足を運んでなかった先に小さな公園があって。子供たちが夏の強い日差しの中、元気に遊んでいた。その中で、黒く、澱んで、霞んで、人間の子供に害のあるものが視えたのだ。

    「斬ってしまうのは、」
    「わかってんだろ。ありゃ土地神サマたちの管轄の人ならざるモノってやつだ。付喪の分霊が手を出すと、理に触れて面倒なことになる」

    だから斬らない。斬ることは回り回って主にまで被害が及ぶ。それでも元気に遊んでいる子供たちを囲って隠して呪ってしまう存在をソハヤは無視できなかった。人間が好きだ。隣の大典太光世だってそうだし、多分本丸に顕現した刀連中はみんなそうであろうとソハヤは思っている。人間が好きだからこそこの戦いに身を投じたのだから。

    流石に陽が落ち始めて、電灯の灯りがつき始めると子供たちは慌て始めた。一人、また、一人と家に帰っていくのを見送って。最後の一人はなかなか帰る気配がなかった。子供用のスマートフォンを何度も確認している。家に帰り辛いようであった。家族と喧嘩でもしたのだろうか、それとも他に何かあったのだろうか。

    ソハヤも光世も子供に声はかけなかった。実体はあるのだから子供に声はかけられたが、そうするべきでないと思った。あくまでいつものように、人間の営みを眺めるだけだ。

    黒く渦巻く怪異が手を伸ばす。立派な実体なんて持っていないので、手に似たなにか、であった。一人ぼっちの子供が美味しそうだったのだろう。ほら、やっぱり。睨んでなきゃ手を出すじゃねぇか。

    ソハヤは牽制のために立ち上がった。不思議とブランコは音を立てなかった。一歩だけ、前に出て今までの比ではない霊力を混ぜてソレを睨みつけた。

    「ちょっかい、かけんじゃねぇよ」

    子供には聞こえない程度の声であった。ピリリと空気が揺れて霊力の圧に怪異が押し黙る。人間が生きていく様に手出しをされたくなかった。

    公園の前で小さな車が止まる。子供は先程の不安など消え失せたように安堵を浮かべて車の方に走る。母親らしき人間が出てきて、腕に小さな赤子を抱いている。子供は赤子を覗き込んで、くすぐったそうに笑うと車に乗り込んで公園を去っていった。

    「……俺たちも帰るぞ」
    「おう!今日の夕飯は?」
    「ガパオライス」
    「やった!俺、光世のガパオライス好き!」
    「おまえはなんでも好きっていうだろ……」
    「そうだっけ?」

    先に立ち上がった光世を追うようにソハヤが駆ける。公園の出口付近で光世がアレを睨んで牽制した。

    「どうせ暇だし明日も来るけど、どうする?」
    「男二人で昼間から通報されるのか?」
    「弁当作ってさ、ピクニック、ってテイなら大丈夫じゃね?」

    握り飯でもいいけど、サンドイッチも食いたいよな、と承諾もないのにリクエストが飛ぶ。断られないと思っているずるいソハヤの可愛い顔と目が合う。

    もちろん、断る理由が光世には無かった。なんだかんだ、人間が好きなソハヤが光世も好きだったから。

    「どうせあと数日しか無いけどさ。見えて許される範囲なら、守刀としての本領ぐらいだしてもいいよな」

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