Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    kakiisoishii

    花卉(かき)です。夢腐の文字練習置き場
    鬼丸、三池、とくびぐみ など

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 14

    kakiisoishii

    ☆quiet follow

    おてさに♀

    #刀さに
    swordBlade
    ##夢

    わらび餅がおいしい季節になりました 梅雨。湿気を帯びた空気は重く、人も刀剣も憂鬱な気持ちを抱えながら暗い空を見上げる日々。本丸では皆僅かな清涼感を求めては縁側に転がり、扇風機を奪い合い、水浴びでは飽き足らず修験者に着いて滝行へと出掛けるものもいた。
     審神者ももちろん例外では無く、この日も唯一空調設備の整った私室──こんのすけに無理を言って取り付けさせたものだ──にて、近侍である御手杵とともに無為に過ごしていた。
    「今日は御手杵にわらび餅を刺してもらいます」
    「……なんて?」
    「刺す事なら得意でしょ?万屋で安売りしてたの。こう蒸し暑い時はのどごしの良いわらび餅一択!」
    「そうかぁ?まあ主が言うなら……」
    「ひとつしか無いから皆には内緒ね。はい、竹楊枝!」
     青と白のトレーに付属するプラスチック製の竹楊枝は御手杵の手には幾分小さく、収まりの良い位置を探すように指先で数度転がした後にいざ、開戦である。
    「串刺しだ!」
     バリ、と音を立てて勢い良くわらび餅に突き刺さる竹楊枝。バリ?はて、弾力があるわらび餅から出る音だろうか。
    「ちょっと待って。それトレーまで貫通してない?」
    「えええ、だって刺すんだろ?」
    「刺しすぎだよ!」
    「俺は刺すしか出来ないから一つずつ切り分けるとか無理だって」
    「普段お箸は使ってるのになんで!」
     何を隠そう、二人とも既に湿気に負けており頭が働いていない。その後トレーに穴を増やしつつも何とか一粒のわらび餅にきな粉をまぶし、ようやく口に入れることが出来た。
    「駄目だ。わらび餅は御手杵向きじゃなかった……」
    「なあ、きな粉を餅側にかけるのはどうだ?まぶす手間が無くなれば一度刺してすぐ食べられるぞ」
    「それは駄目。ポリシーに反する」
    「うえー」
    「もういい、自分でやるから貸して」
    「いや!ここは俺が!」
     咄嗟に審神者の手からわらび餅を遠ざけた結果、不運にもトレーは扇風機からの風の導線上に移動した。途端、二人に襲いかかるきな粉。
    「……御手杵」
    「わり、主……ゲホッ」
    「あーあ、掃除が大変だよこれ」
    「や、やっぱり……?」
    「でもまあ、元々は私が言い出した事だし……」
     半分ほどかさの減ったきな粉に、一部穴だらけではあるもののほとんど手つかずのわらび餅。このまま食べていては確実に餅が余るが、厨には黒蜜や抹茶、またアイスクリームもそろそろ冷凍庫に常備されている事だろう。
    「コッソリ二人で食べ終わったら、蜻蛉さんには一緒に怒られよっか」
    「まず怒られないって選択肢は」
    「隠し通せると思う?」
    「いやぁ……無理だな」
     とは言いつつも、せめて食べ終わるまでは見付からないようにと、トレーの穴を増やしながらも引き続きわらび餅と戦う二人であった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏👍👏☺💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    ktuongrms

    DONE8月某日数年ぶりに本丸へ帰還しました
    江戸城宝物庫を開け進めるには絶妙に時間が足りずうちに京極正宗はおりません
    石田の兄上鍛刀祭はうちの資材を派手に散らしたので一足先に終了(勝手に)
    56億7千年後にでも来るつもりかな 兄上
    そんな憤りから思わずカッとなって書き殴りました
    全ての不敬と解釈違いに全力で土下座しながら奉納します
    我が身こそその唯一で在れと本丸から眺める風景はすでに秋桜に揺れているというのに身体に纏わりつく空気はいつまでも独特のこもった湿り気を帯びてあつい。

    「主、惜しかった。」

    暑さと過ぎた集中でもう何度目なのか記録に記すのも怪しくなってきた頃、近侍の声が鍛冶場へ静かに広がった。


    額に流れる汗を拭ってゆく手のひらには労りが込められ、片膝をついて覗き込んでくる眼がこれ以上の鍛刀は否と告げている。

    肺に満ちていた緊張を解き放つように、深い息をひとつ吐いた。

    握りしめていた札がゆっくりと己の手を離れていくのを見送る。

    札が近侍の胸に納められるのを見届け、その両の手を借りた。

    重なった手のひらがどちらからともなく強く握られる。

    必ず顕現させると意気込んだ手前、情けなさと申し訳なさが相まり遣る瀬なさに鼻の奥がつんとした。
    928