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    倫理観が無い百葉

    @urusaihitoha

    大体流血か倒れるか

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    POIPOI 11

    百葉が突然書く🌟か酷い目にあうシリーズ。
    色んなひとの🌟巡ってできたやつなのでn番煎じです。
    ユルシテ

    それはいきなり訪れる。──悲劇というものは、いきなり訪れるものだ。


    ──♪ ──♪
     傍らのスマホが光ったのを見て、作業中のロボットから顔を上げる。
     油で汚れた軍手を手から外して、幼なじみの名前が表示されるスマホを手に取った。
     隣なんだから、いつもなら直接顔を出すのにな。もしかしたら、出先だろうか。今日は練習を夕方の四時には切り上げたからその足で遊びに行ったのかもしれない。
     だとしても現在時刻はもう夜八時だ、単にこの時間に人の家を尋ねるのは非常識だからか。
     そんなことを思いながら通話を繋げた。
    「もしもし寧々? どうかし……」
    『類! ねぇ、そっちに司来てない?』
     僕の言葉を遮って寧々がまくし立てる。
    「……つ、司くんかい? 来ていないけど……」
    『そっか……』
     ごめんえむ、来てないって。うん、あと考えられるのって……、電話越しに聞こえてくる会話の相手はえむくんらしい。
     現在時刻は夜八時、司くんがこちらに来ていないかの確認、えむくんともなにか関係がある……。
    「……ねぇ、寧々。もしかして、司くん家に帰ってないのかい?」
    『……っ、類なにか知ってたりする?』
    「いいや全く。なにがあったんだい?」
     電話の向こうの幼なじみは一瞬黙ったあと、いつもより少し焦った様子で話し始めた。
    『今えむから連絡がきて。あ、家の固定電話にきたから今も繋がってる。天馬さ……咲希さんから司知らないかって連絡きたって言われたの。わたし、今日連絡終わって解散してからは知らないって答えたら、司、なんの連絡もしないでまだ帰ってないんだって。いつもだったら遅くなるときは絶対連絡入れるらしいし、そもそも電話繋がんないみたいで……類、心当たりない?』
    「……ごめん、わからない」
     遅くなるときは必ず連絡を入れるのは彼らしくて頷ける。八時、とは少し素行のわるい高校生なら遅くはない時間かもしれないが、彼ならまず出歩かない時間だろう。それに電話が繋がらないのもひっかかる。
     嫌な考えが頭を掠めた。
     少し考えてから上着を手に取って、その辺にあったトートバッグに財布を突っ込む。
    「ちょっと探してみるよ、フェニランから司くんの家の間までなら多分補導されることも無いし。なにかあったら塾帰りだって言うから」
    『あっ、ならわたしも!』
    「寧々は待機してて、それこそ本当に不審者に会ったら大変だから。それと、えむくんにひとつ聞きたいんだけど、」
    『はーい! 類くんなーに?』
     寧々の声よりさらにひとつ機械を通して聞きづらい音声に問いかける。
    「えむくん、セカイは探してみたかい? なんらかで司くんがあそこに行ったままって可能性はあると思うんだけど」
    『あっ、行ってない! あたしちょっと見てくる!』
     あっ、えむ! と慌てた寧々の声でえむくんの電話が切れたのだとわかる。
    「……じゃあ僕も行ってくるよ。えむくんから連絡あったら教えて」
    『わかった。類も気をつけてね。あと、もし司が道に迷っただけとかだったら叱っといて』
    「承ったよ」
     画面の赤い丸をタップして通話を切ってから、スマホをトートバッグに放り込んだ。
     両親が仕事の日で助かった。今家を出たところでとやかく言われないだろう。
     パーカーの上から上着一枚では少し寒かったかと家を出た直後では思ったが、走りながら彼を探すうちに上着が邪魔に感じるほどには身体は温まっていた。
     視界に白い息が邪魔だ。一度辺りをざっと見ながら閉園直後のフェニランまで走ったが、彼は見当たらない。
     そこから今来た道をゆっくり歩く。
     路地裏も、人気のない場所も、逆に大通りも。
     寧々から連絡があったのは、道を辿り始めてあまり時間が経っていないときだった。
    『類、司セカイにもいなかったって』
    「そうかい……僕も今探してるんだけど、まだ見つかってな、」
    『類? どうかした?』
     片手でスマホを持った状態で歩いていた僕の視界が、端に何かを捉えた。
     人通りの多い道から少し外れた、路地裏と言うより建物と建物の間の隙間のような場所。幅は三人並ぶのが精一杯だろう。
     その隙間の奥に、なにか光るものと、その光に照らされる誰かのシルエットが見えた気がしたのだ。
     足を投げ出すように座り込むシルエットが、近づくほど鮮明になっていく。
     金糸の髪、
     レモン色のカーディガン、
     放り捨てられた見覚えのあるバッグ。
     隙間の入口に立てば、もうそのシルエットが誰かは明白だった。
    「……つ、司くん!?」
    『えっ、いた!?』
     寧々の声を一旦無視して隙間へ入る。
     光るなにかは彼のスマホ、どうしてかわからないけど、彼の妹からの着信があったことを表示する液晶はヒビが走ってバキバキだ。
     司くん本人は足を投げ出し、背中は後ろの建物に預けてぐったりと座っていた。意識があるかもわからない。
     何故かカーディガンの一部に血が飛んでいて、乾いているため触れるとパリパリと音がする。
    「司くん! 聞こえる!? 大丈夫かい!?」
     自分のスマホを地面に置き、彼の肩を掴んで揺さぶる。
     がくがくと首が揺れ動いて、う……、と微かな声がした。
    「司くん!! 聞こえてるかい!?」
    「ぁ……る、い……か……?」
    「あぁ、そうだよ。一体何が……っ!」
     顔を上げた彼を見て絶句した。
     片頬は真っ赤に腫れていて、反対側には真っ直ぐ切り傷が走っている。口の端からも血が流れた跡があり、だれがどう見たって殴られた後だ。一体どうして。
     狼狽える僕を後目に、司くんは酷い顔色でふわりと笑う。
    「るい、ぶじ……だ、な?」
    「へっ?」
    「よかっ……た……」
     そのままがくり、と彼から力が抜けて、こちらへ前のめりに倒れ込んでくる。
    「ちょっ、……司くん!? 待って! 気を失っちゃだめだよ! 起きてて司くん!!」
     また司くんを揺すり起こそうとしてハッとする。
     冷たい。
     起こそうと触れた腫れていない方の頬は、恐ろしい程に冷たかった。
     震える手で腫れている方の頬にも触れる。
     痛むのか司くんの身体が小さく震えた。どうやら意識はまだあるらしい。
     こちらの頬は腫れているため熱を持っている。この温度差がより彼の身体が異常な状態であることを際立たせてくる。
     僕の体にもたれかかる彼はかすかに震えていた。よく考えたらこの冬の寒さだ、雪こそ降っていないが、制服にカーディガンなんて格好じゃ、昼間はともかく夜では体が冷える。おまけにこんな冷たい地面に座り込んでいたら体温がどんどん奪われてしまう。
     地面に僕の上着を敷いて、持っていたトートバッグを畳んで枕代わりにした所に司くんを寝かせる。
     それから119番……と思ったところで、まだ寧々と通話が繋がったままなのに気がついた。微かに寧々の声がスマホから漏れている。
    『ちょっと……類! ねぇ、なにがあったの!?』
    「ごめん寧々、ちょっと緊急事態だ」
     切羽詰まった僕の声は、寧々に異常に気づかせるのに十分だったようだ。
    『……どうしたの?』
    「司くんが路地裏で倒れてたんだ」
    『はあっ!? いったいなんで、』
    「わからない。でも、誰かに殴られたみたいな痕があって、薄着なせいで体温も低い。意識も混濁してるみたいだから、救急車呼ぶ。一旦通話切ってもいいかい?」
    『えっ、いい、けど……』
    「ありがとう、また連絡するから」
    『あっちょっ、類!?』
     通話を切ると、そのまま119番に連絡。
     容態を電話越しに伝える間も、彼の震えが止まることは無かった。
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