無自覚の結末「ぼ、僕は☔君に嫌いだって言われて……もう何をどうしたら良いか解らないです」
大好きなシュークリームの山を目の前にしても手を付けず、ボタボタと涙を流しながら🍄は⌛️に言った
☔卒業して魔法局務め
🍄二年生
⌛️魔法局務め
密かに🍄に想いを寄せていた☔と⌛️
☔と⌛️、どちらもお互いの想いについは何となく感じ取っていた
学生時代からずっと🍄を見守っていた☔は
🍄がまだ恋愛について何も知らないし、考えてもいないし、周りの友人達を見ても何も思っていないのを知っていたので、想いを伝えても理解しないと思い、魔法局に務めて始めても学生時代と変わらず見守っていた
⌛️は🍄が恋愛について何も知らないなら教えればいいと思い、🍄に「好きだから恋人になって欲しいと」告白する
「えーっと、急に言われても何が何だかなんですけど……。まぁ、よくわからないんでとりあえず付き合ってみます」
こうして流れで⌛️と🍄はお付き合いを始めることになった
⌛️は牽制の意味を込めて直ぐに☔に🍄と付き合い始めたのを教えた。
☔は言葉では「そうですか、良かったですね。🍄は手のかかる後輩ですが良いヤツなんでお願いします」と言うが内申は複雑だった
好きなのに想いを伝え無かった自分への後悔
ライバルに出し抜かれた不甲斐なさ
🍄を言いくるめて付き合い始めた関係であると⌛️の思惑を理解しての怒り
散々命を狙われていたのにもかかわらず、あっさり⌛️を許して付き合う事にした🍄への悲しく残念に思う気持ち
沢山の強い感情が幾つも浮かんでは消えた
まとめてしまえば嫉妬という言葉になるだろう
しかし☔は「🍄が幸せであれば俺はそれでいい」と全ての感情を飲み込んだ
🍄は⌛️の思惑通りに動き、二人は付き合い始めた
しかし⌛️が計算外すぎるレベルで🍄は恋愛に関して何も思っていなかった
試算する上で基準とする数値が5桁くらい違うレベルだったのだ
⌛️は🍄を”好きだ”という強い想いと感情が一方的にあるが、🍄は何もない
そもそもに接点が少なく、二人がどういう関係かと聞かれたら”顔見知り”くらいが妥当な関係だった
”好きです。お友達から始めて下さい”の関係以下だったにもかかわらず、⌛️独りよがりな想いと口車に流された始めた恋人関係は何も上手くいかなかった
⌛️はメガネが粉砕するレベルで絶望したが
とりあえず毎日🍄に会って会話をして”顔見知り”から”お友達”に関係をクラスアップできるよう努力する事にした
🍄は毎日放課後、魔法局近くのカフェで⌛️とお茶をするように言われた
毎日シュークリーム食べ放題と言われ🍄は快諾した
こうして🍄と⌛️のお茶会ルーティンが始まった
お茶会を始めて一週間後
🍄にはお茶会前に魔法局の☔の執務室に寄ってからカフェに行くというルーティンができた
このルーティンは🍄が🐬に「僕は補習があって行けないから、魔法局近くまで行くなら兄様にこれを渡してもらえるかな?」と荷物を預かり、☔に届け物をした事から始まった
☔は会ってしまうと決意が揺らぎそうだったので🍄に会わないようにしていたが、久々に会い元気な姿を見て安心していた
卒業してから☔と会う機会がなく久々に会えた事が嬉しかった🍄
短い時間だったがとても楽しい時間を過ごした
名残惜しみながら部屋を去る🍄姿を不憫に思ってしまった☔は「(用があるなら)いつでも好きにくればいい」と声かけた
「そうなんですか!じゃ、そうします」と言葉を真に受けた🍄
こうして🍄は⌛️に会う前にかならず☔の執務室に寄ってから行くようになった
毎日授業が終わると執務室に行き☔に30分以上は授業出来事や、友人の話、思っている事などを聞いてもらう🍄
☔は毎日来るようになった事に戸惑いながらも🍄の相手をした
自然と⌛️とお茶をする時の会話が「今日の☔君は……でして」と☔の観察報告になった
気がつけば🍄と⌛️の会話の内容が90%☔についてで、🍄自身の会話は10%くらいになっていた
「僕ここに来るとシュークリームいっぱいに食べれるし、毎日☔君に会えて楽しいです」と言い始めた
二人の接客をしていたカフェのスタッフは証言した
「🍄の恋愛相談を⌛️が受けているのかと思ってました」と
この状況を打破するため⌛️は行動に出る事にした
二人っきりの帰り道、⌛️は🍄にキスをした
「なんでこんな事するんですか?」
「好きな相手にキスをするのは当然だろ」
「好きな人には……そういうもんですか。……そうですか」
次の日、いつものように☔執務室に来た🍄
部屋に入ると、☔は部屋の本棚の前で資料のファイルの整理をしていた
「机に座ってないのは珍しいですね」
「ちょっと確認したい資料があってな。中々探すのに時間がかかってる」
「そっち持つの手伝いますよ」
「助かる」
重い書類ファイルの受け渡しをしていると二人の距離が近づいた
振り返った☔と顔が近づいた時、🍄は背伸びをしてチュッと唇をつけた
☔の手から滑り落ちたファイルは派手な音と共に中身書類を撒き散らした
「なぜ……?」
「好きな人とにはキスをするもんだと昨日教わりまして、僕はキスをするなら☔君が良いと思ったんでしました」
☔君の唇って柔らかくて、温かくて、くっつけると気持ちいいんだ
こういうのって幸せな気持ち?っていうのかなと🍄は思った
「お前……それは不誠実な行為とわかっているのか」
🍄は初めて☔に怒鳴られた
激情した☔を前にして動けなくなった🍄
自分の行った行為は恋人を裏切る最低な行為だと丁寧に強い言葉で☔に嗜められた
「俺は不誠実な奴は嫌いだ。さっさと出ていけ、そして二度とここに来るな」
🍄は☔が激昂した事に混乱して全く動けなかった
☔は思考も体も動かない🍄の腕を掴み執務室の外に引きずり出した
バタンと🍄の存在を拒絶するように扉は閉められた
どうしていいか何もわからなかった
ここに留まっているのを☔に見つかると、また激昂するのだけは解った🍄は
ノロノロと足を動かし、⌛️と待ち合わせをしているカフェに向かった
いつも🍄はテーブルに付くと楽しそうに「聞いて下さい、今日の☔君は……」と話始める
しかし今日の🍄は下を向いたまま何も話さない
「随分沈んでいるが、何かあったのか?」
「ぼ、僕は☔君に嫌いだって言われて……もう何をどうしたら良いか解らないです」
大好きなシュークリームの山を目の前にしても手を付けず、ボタボタと涙を流しながら🍄は⌛️に言った
初めて感情をむき出しにした🍄を見て⌛️は確信して悲しくなった
コイツの中に俺への想いなんてモノは無いんだな
「まぁ、これでも食え」
「……っも、っも、っっも」
シュークリームを勧めると泣きながら無心に口に運び始めた
その姿が可愛いらしいなと思った⌛️に悪い心が芽生えた
”☔に嫌われない”からと言えばコイツは俺の言う事をなんでも聞くのではないかと
きっと🍄の行動を簡単に誘導できるだろう
だがそれは自身が☔に完全敗北してる事を受け入れる事でもある
「☔に嫌われたくないんだよな?」
「はい、ぐす。そうです」
「だったら誠実に思われるように俺との仲を深めるか?」
「……え?」
「そうすれば、☔がお前を嫌うことがなくなるんじゃないか?」
🍄は手を止め、じっと⌛️を見た
濃い琥珀色の瞳が真っ直ぐ、射抜くように⌛️を見る
強い視線に⌛️は鼓動が早くなった
あぁ、やはり俺はコイツが好きで、どんな手を使っても一緒に居たいと思ってしまう
🍄はシュークリームを皿に置き、手を伸ばした
⌛️のネクタイを掴むと力いっぱい引き寄せた
唇を耳元に寄せると腹の底から敵意を剥き出しにした声を発した
「ねぇ、⌛️さん。⌛️さんはバカを思い通りに動かしたいから僕と付き合ってるんですか?」
動けない⌛️に🍄は続ける
「言いましたよね?☔君が丁寧に説明してお説教してくれたって。僕は合理的に判断とか、要領よくこなすとか苦手ですけど、あれだけ丁寧に説明されて理解できないほどバカじゃないです」
🍄はネクタイを離すと席を達、⌛️を見下ろした
「今判った事ですけど僕、⌛️さんの事多分好きじゃないんで。別れるって事でいいですか?」
目を見開き言葉を発さない⌛️に🍄は続ける
「いままでシュークリームとかいっぱいご馳走様でした。色々思うところは有るけど⌛️さんのおかげで☔君を好きって判りました。付き合うって事も。それについてはありがとうございます。じゃ、僕はこれから☔君の所に行かないと駄目なんで失礼します」
🍄は猛烈なダッシュ力でカフェから消え去っていった
残された⌛️はしばらく呆然と🍄が去っていったドアを見つめていた
マッシュはレインの元へ向かい走った
自分の気持を自覚してすぐに伝えたかった
僕はレインくんに好きだって伝え……
足を突然止める
だめだ、僕はレイン君のいる所に二度と来るなって言われたんだ
そうだ、僕はレイン君に嫌われてたん
また涙がとめどなくこぼれ落ち始める
僕はレインくんの事好きだけど、レインくんは僕のこと嫌いなんだ
魔法局へ行けず、フラフラと彷徨うマッシュ
気がつくと森に迷いこんでいた
森か……レインくんがよくウサギと遊んでた場所だ
無意識でもレインくんが好きな場所にきちゃった……。
何か色々疲れたな
マッシュは巨木の根の隙間に座った
本当に僕はどうすればいいんだろう
考えながら寝入ってしまうマッシュ
森で寝る
みんな探す
レインが見つける
泣いてるマシュを抱っこして連れて帰る