聡狂【ぎゅってして】前略、起きたら聡実くんが小さくなっとりました。
「いやなんでなん」
「狂児がなんかしたんやろ」
「俺のことなんや思ってんですか〜」
「元やくざ、現僕のヒモ」
「んーーなんの狂いもなく正解!」
アホのやり取りをしながら、改めて目の前の人物について確認する。どこからどう見ても岡聡美、ただし、見た目は中学生。あ~懐かしいなぁ、ほんま天使や……いやそうやなくて。思わず伸ばしかけた手を慌てて引っ込め、俺はベッドに座り直す。聡実くんはブカブカの冬用パジャマの腕をまくりあげ、手のひらで自分の身体をあちこち触り、ふと上を向いた。
「あー……」
「ん?」
「んん……や、声が」
「声、こえ?」
「…………出るんやなぁ」
喉を片手で押え、深呼吸を何度かすると聡実くんが静かに歌い始めた。それは、俺は聞いたことがない歌だったけれど、歌っている彼の表情がどこか切なそうで苦しそうで、そして相反した歓びも内包しているように見えた。その歌声を浴びながら俺は久しぶりの彼の歌う姿を、目と耳に焼き付ける。
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