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    聡狂作品おきば

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    ハジメテ物語続き

    #聡狂
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    聡狂ハジメテ物語②「まって、ちょ、……もう、待っ、ま、ゃ、まてって言うてる!」
    「え、なになに。 この流れやったらこのままエッチになだれ込むそれやで……まぁ、はい、なんでしょ」
    部屋に入ったその途端、狂児は後ろ手でドアの鍵を締め、聡実の腰をだいて唇を重ねた。狭い玄関の三和土でもつれ合うようにして、そのまま上がり口に聡実を上にのせ倒れ込む。ぎゅ、と抱きしめて逃さないと唇を追いかけるが、難しい顔をした聡実は手で狂児の顔を押して拒否の言葉を投げかけた。お互い薄暗い室内で見つめ合って、狂児の手が緩んだ途端聡実は立ち上がり靴を脱いで床に座り込んだ男を跨いで部屋に上がる。パチン、とスイッチの音が響き、明るく照らし出された四畳半の部屋の真ん中、聡実が正座をし狂児を手招いた。
    「ここきて、座ってください」
    「えー……」
    「話ししたくて部屋来て言うたのに、急に襲ってくるとかどんなケダモノやの」
    それは全くごもっともである。言い返せないまま渋々靴を脱いで部屋の主の前に腰を下ろし胡座をかいた狂児へ、聡実は視線を外し言いにくそうに言葉を選びながら話し始めた。
    「狂児さんは、その……ええと、……男相手は、け、経験あるん?」
    突然投げつけられた爆弾発言に、目を丸くした年上の男はそのまま沈黙した。時が止まった室内、遠く車の排気音が響く。しばらくしてやっと脳みそへ言われた意味が届いた狂児は、視線を天井に向け頬を搔いて口を開いた。
    「……そやな、オトコはないなぁ、迫られたことはあるけど。 そもそも、オトコにどうこうしたい、って思ったんキミが初めてやわ」
    その言葉に聡実がほっと表情を緩めたのを見て、狂児はしまったと内心舌打ちをする。この子はかなり真面目に自分とのこれからを考えていてくれたのだ。それなのに自分ときたら、今までの女性たちと同じような扱いをしてしまうところだった。胡座から正座へと座り直し、改めて向き直ると年下の恋人は先程とはうって変わって瞳になにかの決意を秘めている。すぅ、と大きく息を吸い込む音が聞こえた。
    「僕は、僕はたぶんあんたのこと、好きやと思う。 他と比べたことないから、これが好きやっていう感情なんかどうかほんまのところはわからんけど、けど狂児さんに触れたい」
    「……おん」
    「そんでな。 僕はあんたの上を今まで通ってきた女たちと、同じにされたくないんや。 あんたが全部初めてなんやから、狂児さんも初めてのこと、僕に一つくらいください、てか欲しい、ぜんぶ全部、欲しい!」
    興奮し上ずった早口で、しかし真摯な聡実の訴えは、狂児の心を激しく揺さぶった。思わずよろめいて胸元を抑えるその態度を目にし、聡実は眉間にシワを寄せる。おそらく、またわざとらしいとか思っているのだろう。狂児にすればそれどころではないくらいの感動と動揺で、なにも取り繕うことすらできなくなっているのに。
    「え、と……それは、この先のことについて言うてるんよな? 要するに、聡実くんは俺を抱きたいってこと?」
    どうにか絞り出した問う声は震えていなかっただろうか。そんな狂児の心配をよそに、こくん、と頷いた聡実のその耳は真っ赤に染まっていた。この子にそんな欲があること、そしてそれが自分に向けられている現実があるなんて。狂児の天使は、いつの間にか立派な男へと成長を遂げていたのだ。感慨深い気持ちでどうにか目の前の子供へ手を伸ばすと、今度は振り払うことなく腕の中におさまってくれる。昔抱いた時よりも一回り大きく、しっかりとしている肩。それでもやっぱり狂児からしてみれば華奢で、本気を出せばすぐに沈められるような頼りない身体だ。倒れ込むように胸元に抱き込んだ聡実は、もぞもぞと動いて収まりの良い位置を探しながらもごもごと呟いている。
    「僕、そういうのなんも知らんけど、あんたが僕にくれるなら勉強する……」
    「あー、勉強でもなんでもせえ、けどなぁできたらそのオベンキョウは俺と一緒にせえへん?」
    笑いながらそう耳元で囁いてやると、腕の中の身体はぴょんとバネのように飛びあがり、上げられた顔はゆでダコのように真っ赤だった。その唇を啄むと、むぅと不機嫌そうにそこがへの字に歪められ、まだ何か駄目なのかと今度は狂児も眉を寄せる。
    「僕に言うことあるんちゃう」
    「へ。 言うて……なにを?」
    「僕は言うた」
    「言うた……………あ」
    こういう感情のやり取りをすることが久しぶりすぎて、自分からその言葉を言うプロセスがすっかり抜け落ちていた。へらりと誤魔化すように笑うと、狂児は一文字一文字を言い含めるように口に出して伝える。
    「好きや。 あん時からずっと、な」
    「あん時からてなに」
    「秘密ですー、最初から全部わかったらおもろくないやろ。 聡実くんに恋愛のイロハを俺が教えたる」
    「遠慮しますわ。 狂児さんのイロハ、絶対なんか普通とズレとる」
    相変わらずの憎まれ口はやはり心地よくて愛おしい。今度こそと寄せた唇は、驚くことに聡実からも押し当てられ伝わる温度と先程よりも格段に甘く感じたそこに、狂児はこれからどうなるやらと未知の体験への楽しさで心を踊らせていたがそれを聡実に伝えることはしなかった。
    部屋へ来る道中、こちらを振り向きもせず進む聡実の背中を眺めながら、この子は自分が途中で逃げるなんて想像すらしていないのだと感心していた。絶対についてくるだろうと信じている。その信頼されているというくすぐったさに、可愛いという想いは膨れ上がり、これはもうこのままなし崩しに戴いてしまおうか、とまで思っていたのにまさかこんなことになるなんて。
    「次回までのオベンキョウ、どないしよか」
    「今までの女に聞いたらアカンで」
    「せえへんわ、そないなこと……」
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