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    cho_tyo

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    cho_tyo

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    暇な日は美味しいものを食べるに限る②

    てりたま食べたい南泉と
    スタバで桜系メニュー食べたい長義と
    焼肉食べ放題行きたい豊前
    の、お話

    ちょぎのターン!ちゃんと頼めた!
    次はちょっと閑話休題の予定。

    暇な日は美味しいものを食べるに限る②舞い散る桜の花びらも春の陽気が恋しいのか、ゆらゆらと揺れるようにゆっくりと時間をかけて散っているようにも感じる。
    そんな昼下がり。三振は若干気だるげな感じを背負いつつ、街中を歩いていた。
    向かう目的地は、この時代にはおなじみのコーヒーショップである。

    この本丸では同刀種の男士たちが顕現順に同室となる。南泉一文字、山姥切長義、豊前江の順で本丸やってきた三振りはもちろん同室になり、それ故自然と話すことも多くなった。南泉と長義は昔馴染みであるし、豊前江は持ち前の人懐こさであっという間に馴染んでいったのだった。

    そんなわけで、道中も本当にどうでもいい話で盛り上がる。
    畑当番で一緒になった桑名江が作業に熱中しすぎて誰も止められなかっただとか、
    酔っぱらった次郎太刀と日本号がつい高さの感覚を忘れて、欄間にぶつかって壊して長谷部に怒られただとか、
    事務仕事をしていたら博多がつけている帳簿を見ながら、なにやら呟いていただとか

    「それで、博多藤四郎が良いことを思いついたって、あ、ここだね?」

    話すのを途中で止めて足を止める。目の前にはあるのは緑色を基調としたあの店舗である。
    それでは入ろうか、と長義は店内へと入ろうとした。

    「待て、それで博多がなんて?」
    「めちゃくちゃ気になるところで止めるんじゃねぇよ!」
    「でも着いたし。帰ってから博多藤四郎に聞けばいいだろう?」
    「今話しても問題なくねぇ?」

    はいはい、気持ちを切り替えよう。
    にこりと笑って、長義は二振りの背中を押す。
    店内に入ると随分と賑わっている様子が受けて取れた。注文をするカウンターも沢山の人が並んでいるし、店内の椅子やソファーも人で埋まってるようだ。

    「随分と人気なお店なんだね?」

    列に並びながら、その並んでいる人の多さを見て長義は思わず声を漏らした。
    そうだなぁと豊前江も同様に並ぶ人を見る。

    「メニューになりますので、お待ちの間にご覧ください」

    店のカラーと同じ緑色のエプロンを着た女性が可愛らしい笑顔を向けて紙状のメニューを手渡してくれた。

    「ありがとな!」
    「あわわわわ」

    受け取るべきは俺だったか?
    俺が受け取れば良かったな…。

    またも店員の女性にもはや武器ともいえる笑顔で対応した豊前江。当然のように頬を赤らめて去って行った。
    南泉も長義も、うっかり対応を豊前江に任せてしまったことを少しだけ反省した。
    これ以上この時代の女性に犠牲を出してはいけない。と思うのだった。

    気を取り直してメニューを開く。
    様々なドリンクメニューの写真と価格が掲載されている。
    目的の商品は一番上に、目にも鮮やかな桜色でとても分かりやすくかつ目立つように載っていた。
    春に合わせた桜色のドリンクは見るだけでも心が華やいでくる。

    「ちょっと待っていてくれ。すぐに戻る」

    長義はメニューを決めたのか、列から離れてどこかへ行ってしまった。
    二振りは長義が戻ってくるまでメニューを見たり、店内を見たり、時たま豊前江がすれ違う人の心を奪ってみたり、南泉がそれを阻止出来なかったり、などしていた。
    ものの数分だろうか、長義が戻ってきた。
    その手には色々な桜色でいっぱいだった。

    「なんだそれ?そんなに買うのか?にゃ」
    「お土産だよ。主。加州清光に」

    きょとんとする二振りに、長義は、はぁ。とわざとらしくため息をついた。

    服を着替えに行ったときに、主と加州と出会ったのだった。その時の長義の服装からどこに行くのか察した主は、是非にと長義にお使いを頼んだのだった。ついでに加州も便乗した形になった。
    長義の手には、桜色のタンブラーと同じ色のマグカップがあった。どちらも桜の花の模様があしらわれていて見るだけでも春めいている。

    「それで?こっちの菓子は誰に渡すんにゃ?」
    「これは……誰でもいいだろう」

    南泉は、タンブラーとマグカップの間に隠すように挟まれているクッキーの袋を、目敏く見つけた。
    豊前江もそれを覗き込む。
    そこにあったのは個包装された数枚のクッキーだった。
    白っぽい色と黒っぽい色のクッキーである。
    南泉は何か勘付いたのか、ニヤリと口元を上げた。猫の口元に少し似ていた。

    「わかったにゃ。その菓子は山姥切国広の土産だな?」

    一瞬だけ長義はギクリとした表情を浮かべた。が、すぐに取り繕って何でもないような、いつも通りの顔をした。

    「だから、別に誰でもいいだろう。猫殺し君には関係ないね」
    「図星だにゃ〜。お前まだちゃんとあいつと上手く喋れねーから菓子で吊ろうとしてんだろ?」

    ニヤニヤとした顔で南泉は長義をからかう。
    この本丸の山姥切国広と長義はそこまで悪い間柄ではなかった。日常の会話も問題なく出来ている。
    山姥切国広にいたっては長義を本科と呼び、少しでも仲良くしようと頑張ってるようにも見えるのだ。
    長義が勝手に気不味くなっているようだった。どうにもギクシャクしてしまうらしい。
    始めが始めだから仕方ないよな。と南泉は少し昔の出来事を思い返した。

    今は大分マシになってるけどにゃぁ。まぁなんとかなるだろう

    仲良しこよしなんて出来なくとも、自然に話して笑い合うことが出来る日も近いんだろうなぁ。と思いつつ、南泉も近くの棚から袋に入った菓子をヒョイと取り、長義の抱える土産の中に紛れ込ました。

    「これ俺も土産に買うからよろしくにゃぁ!」
    「なんでだよ!」
    「おっ!じゃぁ俺もこれ篭手切に服選んもらった礼に!」
    「豊前まで!」
    「いーじゃん!頼むよ!」

    キラキラの笑顔で豊前江も南泉に倣うように、クッキーを数枚の長義に渡す。
    両手いっぱいの土産たち。別に悪いことではないと思い、と長義は思い抱え直した。

    「仕方ないな。今回だけだぞ」

    気付けば注文のカウンターが目の前だった。
    店員の前に抱えている商品たちを置く。全て持ち帰りたいのだが、と相談すれば、明るい声で承諾してもらえた。

    「この桜のらて、ほっとで。」
    「俺、この桜のふらぺちーので!サイズはこれ」
    「俺は………」

    長義の注文の後に南泉、豊前江が注文を続けたが……。
    豊前江はメニューの上で手を彷徨わせている。
    ピタッと指先を一つのドリンクに止めて、メニューを見ていた視線をスッと店員への移した。
    指さされていたのは、ダークモカチップフラペチーノである。

    「………なぁ!これ甘くできっか?」
    「!?あ、甘くで、ございますか!?」
    「おう!」
    「チョコレートソースを!追加いただけます!!」
    「じゃ、それで頼む!」
    「か、かか、かしこまりましたっ!」

    豊前江のとびきりの笑顔が炸裂する。案の定店員の女性は赤面しているようだった。
    もはや豊前江のそれは注文とは名ばかりの破壊活動に見えてきた二振りだった。

    もう注文は豊前にさせてはいけない……。
    これ以上犠牲者を増やしてはいけない……。

    すぐそばで繰り広げられている豊前江の独壇場を横目に見ながら、南泉と長義はそう心に誓ったのだった。

    「あっ、俺これも追加する、にゃ」

    南泉はカウンター横に設置してある小さなショーウィンドウを指さした。そこには小ぶりだが様々な焼き菓子や軽食が並べられていた。

    「このわっふる1つ追加で」
    「あっ、じゃぁ俺もこのちょこちっぷすこーん、追加する!」
    「かっかしこまりました!!!」

    次々注文していく二振りみて長義は唖然とした。
    南泉も豊前江もなぜ長義が若干引き気味でこちらを見ているのかよくわかっていないようだった。
    納得いっていないような表情のまま、大きな袋を2つ受け取り店を出た。
    暖かな春の陽射しが肌に優しく刺さるようだった。


    「君たち、まだたべるのか?」

    店から離れた場所に少し大きな公園があった。ここでならゆっくりと過ごすことが出来るだろう。
    ちょうど空いていたベンチに腰掛ける。背後には桜の木が並んで植えられていた。

    待ちきれなかったとばかりに、次から次へと袋から取り出していく。
    袋に入った焼き菓子を手渡されたタイミングで、長義が口を開いた。
    南泉はワッフル、豊前江をスコーンに齧り付こうとした瞬間だった。

    「さっき昼食を食べたところだと思うのだが?」
    「サンドイッチ頼まなかっただけ、マシだと思え、にゃ」
    「サンドは昼に食べただろう……」
    「だーかーらー、サンドイッチは選ばずに他のにしたんだよ!折角来たんだし、まだ食えるし、それに美味そうだったし!にゃ!」
    「おう!美味そうなもんを食いに来たんだ!間違いねぇ!」

    そういうものなのか?と、長義は目の前でどんどん消えていく焼き菓子達を見て、首を傾げつつ納得せざるをえなかった。
    ワッフルは香ばしいだろう焼き目も色鮮やかに、サクサクとした音が少し聞こえてくる。バーガーを食べていた時に見たあの南泉の笑顔が、美味しいものだと伝えている。
    スコーンもたくさんのチョコチップが見え隠れしていて、甘さもしっかりとしているのだろう。豊前江がとびきりの笑顔で食べ進めていた。
    周囲の人々、主に若い女性たちがその様を見て、顔を赤らめたり、黄色い声やうめき声のようなものを上げたりしている。

    これ、もしかして毎回やるんか、にゃ?
    次からは行く場所を考えなくてはね。

    更に袋からドリンクを取り出した時に南泉が大きな声を上げた。

    「豊前のふらぺちーの、やべぇな!」
    「くりぃむも、そぉすも、いっぱいだ!」
    「うわぁ……すごいね」

    豊前江のカップには、茶色い液体の上にこれでもかとホイップがトッピングされていて、更にその上からチョコレートのソースがふんだんにかけられていた。
    南泉のものよりも明らかにホイップが多い。

    豊前のこれはもう自然の摂理なんだろうな……。

    大きなカップからソースまみれのホイップを食べ、チョコ味のドリンクをストローで啜る豊前江を見ながら、長義は若干悟ってきたようだった。


    長義も手に持った桜ラテを見る。

    薄いピンク色の液体がゆるりと揺れた。
    甘い香りが鼻孔をくすぐっているように感じて、口元が緩まるようだった。

    「……甘いな」
    「でも美味いだろぉ!桜のふらぺちーのも美味い!」
    「あぁ、そうだな」
    「このちょこもあまくて美味ぇ!」
    「たしかに。美味しそうだ」

    甘くて、でも甘すぎないような、桜の風味も感じるような不思議な飲み物だった。
    満開の桜の元で飲むこの季節の飲み物に、どうにも心は浮足立つようだった。

    お土産の入った紙袋を見た。お遣いとして頼まれていたものを渡したときの主た加州の顔を想像してみる。きっと喜んでくれるだろう。
    少ししかないがクッキーを土産として渡したら、自分の写しはどんな顔をするのだろうか。
    長義はふと考えたが、上手く考えられなかった。だったら実行あるのみだ。渡して茶の一杯でも付き合わさせよう。土産の菓子と美味い食べ物の土産話でもしたら、きっと少しは話をすることも出来るだろう。

    緩んだ空気の中、いつもは頑なな長義の思考も少し緩んだようだった。


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