ショートストーリー・チャレンジ・3巻目 ダイ達の一行に加わってしばらく経ったある日、ヒュンケルは唐突に、不死騎団長としてダイとポップの二人と戦っていた時のことを思い出した。
「ダイ、あの時は二人の発想に驚かされたものだ。二人で協力してライデインをぶつけてくるとはな」
「あっ、うん。あれはね、ポップのアイディアだったんだよ。最初にヒュンケルに負けた次の日くらいには、あの作戦を思いついて、ラナリオンを契約してたんだから!」
「そうか。やるな、ポップ」
ダイはにっこりと頷いた。ポップの思いつきがすごいのは、ヒュンケル戦の前、クロコダインの時もそうだった。
とっさにマジックブースターを砕き、その魔法石を使うことでマホカトールをじいちゃんに唱えてくれた。いざという時に、すごい発想を思いついて戦いの流れを変えてくれる友達だ。ポップに言わせれば自分もそうらしいが、でもやっぱり思いつきの、なんというか、種類は違う気がする。ポップって実は頭いい。ダイはそう思っていた。
そう思っているところに、ヒュンケルがさらに一言付け加えた。
「そもそもラナリオン自体が恐ろしい呪文だ。干ばつに苦しむ地域で使えば救世主になれるほどだな」
「ヒュンケルさ、それポップに直接言ってあげなよ」
指摘されて、ヒュンケルはフッと笑った。「そのうちな」と口にする。
時がまた少し経った。戦いは激化し、なかなかのんびりした会話をする暇もなかったほどだった。
ヒュンケルが再び、なんでもない話を切り出す心の余裕ができ、ポップにこの話をすることができたのは……なんと、大魔王バーンが倒れ、世界に平和が戻ってからしばらく経ち、そして行方が分からなくなったダイが戻ってきてからもしばらく経ったというタイミングであった。
「はあ、ヒュンケルお前。なんで今? なんで今更その話題なんだ⁉︎」
「やっと話す心の余裕が生まれた」
「そりゃ……いや、でも、いくらなんでも遅すぎだろ‼︎」
ポップもまた、ヒュンケルは意外とマイペースな奴であることにようやく気付き始めたのだった。