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ブラッドさまの唇がわずかに横に広がって、何かを含むようなそんな表情で。
「この24時間監視が解かれた時には、俺の秘密を1つ教えてやろう」
そう言葉をこぼした。
その様から俺の背筋に鋭い緊張が走る。
指先が冷たくなるのに頭が熱い。
心拍数が跳ね上がると同時に呼吸が苦しくなった。
まるで俺の何かを見透かされたのではないかという畏怖と、否、ブラッドさまはご自分の秘密と言ったのだから俺のことは関係ないはずだ、と。
暴かれて困ることなどないというのに、ブラッドさまの言葉はいつだって俺を大きく揺さぶってくる。
「秘密、ですか」
「そうだ。お前にも関わることだ」
そう言って踵を返したブラッドさまの背中を見ながら、秘密、とはなんだろうかと思う。
秘密、ブラッドさまが俺に明確に秘密であると言葉にするもの。
口にしなければ何を隠していようと俺はブラッドさまに従うだけだ。
だから、秘密であると公言する必要のある。
「・・・あまり深く考えなくていい」
ブラッドさまが小さく言う。
「お前はいつか、俺からその秘密を聞く必要があるというだけだ」
そうか、と思う。
「わかりました」
秘密を聞く、その日まで、は。
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秘密、秘密。
秘密などそこかしこにあって価値など選択の場面でつけるしかないものばかり。
オスカーの秘密、オスカーに秘密。
おかしなことを口にしている自覚がある。
それでもそろそろ、その秘密とやらに言及していこうかと。
思ったのはなぜだろうか。
このまま、このままお互いに抱えていけばいいではないか。
不自由はないのだから。
切れることのない縁とやらの前にその秘め事を白日の元に晒す意味はあるのか。
それともこんな言葉遊びのようなものを指先で転がしたいだけなのか。
ただ、そう。
キスを。
してみたくなっただけなのかもしれない。
親愛のそれではない。
そのためには暴くしかなく、何かを形作る必要がある。
それをオスカーが望んでいないとしても、だ。
薄布越しにそれをするように、柔らかな肌触りのまま過ごせば波風が立たないというのに。
だから、だから。
区切りを、その日に。
誘い惑わす。
秘密をもって。