〔22〕スパンダム受け【2022年9月1日2日4日】2022年9月1日2日4日
幼馴染ルチスパ
攫われて奴隷にされていた幼馴染のルッチとスパンダム
子供スタートの、後の方はまだ二十代とか?
ルチスパ
天竜人に奴隷にされていた子供たち
その中にルッチという名の子供とスパンダムという名の子供がいた。
ルッチは元々親無しで人攫いに攫われオークションで売られ、スパンダムは良い階級の家の子供だったが人攫いに攫われオークションで売られた。
スパンダムは床磨きなどの労働と、天竜人から娯楽として打たれたりしていた。
ルッチは天竜人の娯楽として人間同士が戦わされる闘技場に子供の身で投げ込まれていた。
さながらヘンデルとグレーテルのようにスパンダムは与えられた僅かな食糧をルッチに分け与え、互いの存在を心の糧に生きていた。
奴隷たちに聖地マリージョアから脱出するチャンスが訪れ、ルッチはスパンダムの手を引いて逃げ出した。
起爆装置付きの首輪は同じく奴隷だった大人たちが外してくれた。
ルッチとスパンダムは自由な身になったが背中の奴隷の印は消えない
上から焼き印をして上書きする大人たちもいたがまたあの痛みに耐えられるか分からない
最悪火傷が悪化して死に至るかもしれない、そう言われて焼き印で上書きをするならばもっと身体が成長してからにするよう促された。
奴隷の印が消せないならば動きに制限がされた。
スパンダムは家に帰っても政府寄りの父親がこの奴隷の印を見れば自分たちを天竜人の元に戻してしまうかもしれないと考えて、家には帰れなかった。
「子供たちしかいない島を知ってる。世話係の大人が少しいるだけ。ちゃんとご飯も出る。そこに、そこの子供たちのふりをして潜り込もう。大人になったら出て行って、印を上書きすれば良い」
スパンダムの案にルッチは頷いた。
「グアンハオっていう島で、世間には秘密の島なんだ。辿り着くにはグアンハオ行きの政府の船に乗るか、グアンハオを見付けるかしかないんだけど」
ルッチとスパンダムは早くも躓いた。
家を持たないルッチとスパンダムは雨風を凌げる洞穴に住み着き木の実を食べて飢えを凌いだ
しかし木の実だけでは腹が持たない
ルッチは小動物を狩る事にした。
何度か失敗して行く内に音も無く背後から近付けるようになった。
闘技場で鍛えた動きで小動物を捕らえた。
その様子を見に来たスパンダム
スパンダムの目の前で小動物の首を捻り殺す事に躊躇いを覚えたルッチ
「⋯⋯捕まえてて」
スパンダムは何処かへ行った。
「ここに置いて」
ルッチはスパンダムに言われるままに小動物を捕まえたまま平らな岩の上に置いた。
「行くよ」
スパンダムは上から大きな石を落とした。
小動物の頭は潰れて死んでしまった。
「殺しちゃった。ふたりで殺しちゃった。これからはこうして生きて行くんだよルッチ」
そんなふたりの様子を観察していた大人がいた。
大人はふたりに接触して来た。
大人は政府の役人だった。
スパンダムは服のマークを見ればわかった。
大人は、強い子供を育てて将来政府の役人になる人材を探していると言って来た。
親はいないと告げればそれはちょうど良いと言うように大人は子供たちを丸め込んで船に乗せた。
「ちょうど良かった。グアンハオ行きの船だ」
ルッチはその身体能力から、スパンダムは小動物を殺せる残虐な判断力でグアンハオ行きの船に乗せられた。
ルッチとスパンダムは丸め込まれるふりをしてグアンハオ行きの船に乗った。
正規の方法で島に上陸出来た。
「大人になったら脱出しよう」
ルッチはスパンダムの手を握った。
それからルッチは六式を覚えるCP期待の新人になった。
スパンダムは基礎体力はつけどルッチたちのような技を身につける事は出来なかった。
ただグアンハオの周りを漂流していた果実を拾い、ルッチがくすねて来た護身用にと隠し待たされた剣のそばに置いていたら、その剣が果実を吸収して象の姿になってしまった。
スパンダムは困惑しながらも象と剣の仕組みを観察し、象剣という自分だけの武器を手に入れた。
体術よりも知識と話術が成長したスパンダムは島を出ると政府の役職に就いた。
下っ端からのスタートだったがスパンダムにも武器があった。
象剣で地位を確立していった。何よりもルッチがスパンダムのそばについているので政府はスパンダムの事を蔑ろには出来ないのだった。
スパンダムという名を聞きつけてスパンダインが寄って来た。
スパンダムの正真正銘の父親だった。
「スパンダムという名なのか?」
髪は拐われた息子と同じ色をしている
成長していれば年頃もこのぐらいだ
「⋯⋯そうですが⋯⋯スパンダムという名は貰った名前です。昔の友達なのですが、同じ髪の色をしたスパンダムという名前の子供が、自分の代わりに家に帰れば良い暮らしが出来ると言って名前と身分をくれようとしましたが、名前だけ貰いました。彼は直ぐに亡くなりました。僕たちは孤児で、彼は攫われたところを逃げ出して来て僕と少し一緒に暮らしていましたが、身体を壊して亡くなってしまいました。だから、わたしはあなたの知っているスパンダムではありません」
スパンダムはスパンダインに告げた。
身体が成長してルッチとふたりで奴隷の焼き印は上書きした。
ルッチは更にその上から砲弾を受けて上書きの痕さえ消し飛ばされて大きな傷痕を残している
重ねて上書きした火傷跡など政府の人間なら元奴隷だと勘付く者もいるだろう
ルッチは消えたが、スパンダムの背中にはその痕がある
ルッチを巻き込んでしまう、その危険を冒してまで家に戻りたいとは思わなかった。
スパンダムにはルッチの存在だけが在れば良い、自身がスパンダムである必要が無かった。
しかしルッチはスパンダインに話した。
彼が正真正銘のスパンダムだと
「彼は人攫いに攫われて命からがらオークション会場から逃げ出して来ました。それから俺たち親無しと一緒に生活をしていました。彼はオークション会場で付けられた首輪を無理矢理外したので顔に怪我を負い記憶もその時に失くしてしまったのです」
ルッチはスパンダムにスパンダインからの加護を受けさせたかった。
自分の目の届かないところではスパンダムがどんな目に遭わされているのかわからない
スパンダムの顔には天竜人に打たれて傷が残っていた。
火傷跡も首輪が爆発した時に出来た跡という事にした。
スパンダムは検査を受けさせられスパンダインと血縁者である事が証明された。
「スパンダムにはCP9長官の後を継がせる」
世襲制では無い役職なのにスパンダインはいつもそう言っていた。
ルッチはもうCP9諜報部員として働いていた。
闇の正義の名の下に非協力的な市民への殺しを世界政府から許可されている世界政府直下暗躍諜報機関サイファーポールNo.9
スパンダインの傍から見ればただの親馬鹿、唯一の欠点に見えるそれもルッチを傍に従えさせ、今は忠誠心を維持させる為の言葉にはなっていた。
いずれスパンダムが来るのならばこの席を守り、この位置に居続けようという
スパンダインはスパンダムを通してルッチを部下として従えさせる事が出来ていたに他ならない
スパンダムはまだ主管に就任したばかりでCP9長官の席に登って来るにはまだまだ年月がかかるだろう
それまでこの言葉でルッチを従わせていなければならない
「長官、御子息はお元気ですか?」
「あぁ、今度会いに行ってやってくれ。倅もお前に会いたがっている」
「長官の許可が出た。会いに行きたい」
「⋯⋯今はだめだ」
「何故?」
「⋯⋯今は⋯⋯ちょっと」
「何があった?」
「怪我をして入院しているんだ。だから会えない」
「なんだと!!?」
長官の許可を貰い久し振りに会えると思っていたスパンダムに電伝虫で連絡を入れると怪我を負い入院中だと聞かされた。
ルッチは長官の元に駆け付けると長官は慌てた様子で出掛ける支度をしていた。
護衛としてCP9の諜報部員を連れて行く所だった。
「長官」
「ルッチ、おれはこれから出掛ける所がある」
「スパンダムの入院先にならおれが着いて行きます」
ルッチにはスパンダムが怪我を負い入院したなどとは知られないように極秘にしておくように周りには伝えていたが、本人から情報収集して来たルッチを連れて行かないわけにはいかなかった。
「⋯⋯酷い怪我を負わされたようだ。早く行くとしよう」
その言葉にルッチは息を飲んだ
スパンダムは顔の骨を破壊されて、顔を切開し整復と顎顔面再建用圧迫プレートでの骨を固定する手術を受けていた。
ルッチは怒りを堪え切れなかった。
誰もがルッチを恐れた。
怒りを堪え切れないルッチにスパンダインは暗殺の仕事を沢山与えた。
そこで殺意を発散して貰わなければ他の者が殺されかねない
スパンダムは咬合改善の為に歯科矯正の治療にも通った。
顔は矯正器具で固定された。
矯正器具で隠れてはいるが頰には切開した時の跡が大きく残っている
スパンダインはスパンダムのその姿を痛ましく思い、ルッチはスパンダムと同じ部署に配属されていなかった事を呪った。
「長官、早くスパンダムをCP9の長官にするかおれをスパンダムの部署に異動させてください。あそこの奴らには任せておけない、おれが護ってやらなければいけない」
ルッチからの圧に押されてスパンダインは定例会議でスパンダムをCP9長官の座に就けるよう推挙した。
病み上がりの上に力不足だと話題に取り上げても貰えなかった。
「ロブ・ルッチの抑えがもうきかない。あれを手懐けられるのは倅だけだ」
そう言えば会議に出席していた者は耳を傾け始めた。
「わたしに従っているのも倅が居るからだ。わたしが倅の父親だというだけの事だ。いずれ倅を長官にするという名目でロブ・ルッチを従えさせてこられた。しかし、先日の件でロブ・ルッチが倅を長官にするか、自分を倅の元に異動させろと言って来た。ロブ・ルッチがCPに居るのも倅が此処に居るからなだけなんだ。ロブ・ルッチはCPに枷などつけられていない。いつだって倅を連れて何処へでも行ける奴なんです」
スパンダムがCP9長官の席に就けばロブ・ルッチをCPに居続けさせる事は出来る
CPに、政府に貢献し、結果として世界平和の為に大きく貢献させる事が出来る
「兎に角、わたしではロブ・ルッチの抑えがきかない」
こうして病み上がりのスパンダムは定例会議の出席者以外の、周りの納得を得ないままCP9長官、CP9司令長官の席についた。
スパンダムは父親にいずれはCP9長官になるのだと言われ続けていたが、まさかこのタイミングで成るとは思ってもいなかった。
スパンダムはルッチに案内されてCP9長官の執務室に着いた。
堅い石造りの椅子に座らされた。
「おれが着いてるから安心しろ」
スパンダムはルッチがそばに居たとしてもこの地位には不安しか感じなかった。
誰も認めていないのに世界政府直下暗躍諜報機関サイファーポールNo.9の長官基司令長官になってしまった。
父親のように現場には向かわず指令を出すだけの長官だ
ずっと此処にいて守られ続け指令を出すだけの長官
ルッチ以外の諜報部員もスパンダムの事を認めてはいなかった。
「あなたの采配を振ればいい。誰も失敗はしない」
スパンダムはCP9諜報部員のデータを頭に入れ、上から来た任務を自分で整理し、各自に振り分けた。
スパンダムから与えられた指令にはスパンダムが調べて得た情報が添えられていた。
諜報部員としての仕事は出来るようだとそこだけは認めはされた。
「長官、おれはあんたの事知ってるぜ。グアンハオに居たよな?一式も覚えられなかった落ちこぼれだった筈が何で俺たちの長官なんてやってるんだ?」
「長官相手に口を慎め」
格闘家のような風貌の男、ジャブラに最初から絡まれてスパンダムは内心怯えた。
しかしスパンダムへの威嚇も無礼もルッチが許しはしなかった。
争いを始めそうになるルッチとジャブラ
「やめろ、ルッチ。言われても当然の事だ。しかし、上官への礼儀を欠くような事はするな。自分が痛い目を見る事になるぞ?此処の奴らはグアンハオ出身者を奴隷程度に思っている。使い捨てにされないように気を付けるんだな」
スパンダムの自らが経験した忠告だったがジャブラの神経は逆撫でられた。
「長官の分もおれが任務を熟します」
スパンダムの手を取るルッチ
この革手袋の下も傷だらけなのだ
CP9諜報部員が数名残って待機室や自室で各々待機し、指令を下された者は出掛けて行った。
スパンダムは執務室でひとりになると詰めていた息を吐き出した。
「そうだ」
スパンダムは持って来た象剣を象のファンクフリードの姿にした。
「今日から此処がファンクとおれの部屋だぞ。ルッチもいるぞ」
ファンクフリードは象の姿になれて嬉しくてスパンダムに甘えた。
スパンダムは果物を籠いっぱいに用意してファンクフリードに与えた。
ルッチにはジャブラより先に戻りスパンダムを守るという個人的なノルマがあった。
しかしスパンダムはルッチを信頼して他の者よりも時間のかかる任務を与えていた。
ジャブラの任務内容を知らないルッチは的確に任務を熟しながらも気が急いていた。
「よぉ、長官、任務終わったぜ」
ジャブラが長官の執務室に報告に戻って来た。
「ルッチの野郎は?」
「ルッチはまだ任務に出ている」
ルッチより先に任務を終えられた様子なのでジャブラは気分が良くなった。
ルッチが居ない内にこの新しく来た長官を何とかしてやりたいと考えていた。
「長官、その仮面の下、どうなってるんだよ?」
「これは、矯正器具だから外す訳にはいかないんだ」
ルッチと同じ年頃のスパンダムからしてジャブラは年上で、更にはガタイも大きく、迫って来られると太刀打ち出来ない
パオーンと鳴き声がしてドスドスと地鳴りのような足音がする
スパンダムの危機にファンクフリードが怒って突進して来ていた。
「ファンク、よせ、大丈夫だから」
スパンダムがファンクフリードを宥めるようにそう言うとファンクフリードはおとなしくなってスパンダムのそばに来て髪の毛をもすもすと鼻先でつついた。
「何だよそれは!?」
ジャブラも突然象がいる事には流石に驚いた様子を見せた。
「護衛の能力者か?」
「⋯⋯ファンクは象だ。おれを守ってくれるペットみたいなもんだ」
ファンクフリードが足踏みをした。
「あぁ、ペットじゃなくて家族だな」
ファンクフリードは納得して髪の毛をまたもすもすした。
ジャブラは気が削がれた。
「⋯⋯気になるなら見せてやるが」
スパンダムは矯正器具を顔から取り外した。
顔には縦に切開した時の跡が残っている
矯正器具は肥厚性瘢痕を隠す役にも立っていた。
ジャブラはスパンダムの顔に残る傷跡を見て悪い事をしたという気持ちにはなった。
「ルッチには言うなよ?」
「知らないのか!?」
「こんなに痕が残っているとは知らない。守れなかったとまた自分を責めるからこんな顔見せられない」
スパンダムは矯正器具を装着した。
任務を終えて報告に戻るCP9諜報部員
ルッチはスパンダムの元に戻り、スパンダムの無事な姿に安堵した。
「変わりはありませんでしたか?」
「大丈夫だ。親父からマニュアルを貰っている。この通りやれば順調だ」
ジャブラから長官への当たりが強くなくなった事にルッチは直ぐに気が付いた。
「何かあったのですか?」
「⋯⋯ファンクが助けに来るから絡んで来るのをやめたんだろう。ルッチがいない間、ファンクがそばに居て守ってくれていたからな」
「そうですか」
ルッチはファンクフリードには妬かなかった。
スパンダムに自衛の為に自分が与えた剣が、悪魔の実を食べてこのファンクフリードになったのだから
「そうだ。ルッチは悪魔の実って興味あるか?あるなら探しておくが」
「あなたが食べろと言うのならおれは食べます」
「ルッチが食べたいなら探しておくって言ってるだけだ。別に能力者になって欲しい訳じゃない。ルッチがもっと強くなりたいとか、願望があるなら協力するって言ってるんだよ。おれにはそんな事しか出来ないから」
「あなたはおれのそばに居てくれるだけで良いんです」
「セクハラです」と声がした。
此処は執務室ではなく待機室だった。
待機室にいるスパンダムの元にルッチが直帰したのだった。
CP9諜報部員唯一の女性からルッチとスパンダムのいつものやり取りをセクハラだと言われたのなら退室するしかない
ルッチはスパンダムの手を取って長官の執務室に向かった。
「あれが上司と部下の関係なの?」
「チャパパパパパ、友達の域を超えているのだ」
「あいつらはあれが普通なんだよ」
ジャブラはグアンハオで見掛けたふたりの関係を思い浮かべた。
訓練内容は違っていったが訓練以外の時にはいつもそばに寄り添い合っていた。
揶揄われても相手をしなかった。
しまいにはルッチの実力を見て誰もふたりを揶揄わなくなった。
そしてルッチはCP最強になり、片方のグアンハオの落ちこぼれはCP9長官の血縁者だという事が分かり扱われ方が変わり直ぐに主管の席に就いていた。
「これがロブ・ルッチの望んだCP9の形だ」
「長官の事、もういじめんでいいのか?」
CP9諜報部員内で一番年下のカクが尋ねた。
「いい、長官も苦労して来たみたいだからな」
「よかった。ワシ弱いものイジメ好きじゃないからのぉ」
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