〔59〕スパンダム受け【2023年1月20日】2023年1月20日
CP-0時代
元海賊で海軍の催眠術師と同じ船に乗り合わせたスパンダム
ルチスパ未満
CP9の存在は世間には知られていないがCPの長官の存在は知られている
海軍も駐在していたエニエス・ロビー
公にはしていない長官の顔を認識している者もちらほらと居た。
元長官・現諜報員のスパンダムは海軍の船に乗り合わせていた。
不運が重なり政府の船の出航に間に合わず置いて行かれ立往生していたところを海軍の船に拾って貰ったのだった。
船に乗っていた海兵と話をして時間を潰していたスパンダム
情報収集でもしようと声を掛けたのだがその海兵の特技の方に話が持って行かれていた。
「するとダンナは元催眠術師なんで?」
「現役だ」
「悪魔の実も無しにそれは良い特技ですねぇ。効き目はどのぐらいあるんです?」
「年単位でかけられる」
「それは強力ですね。すると大っ嫌いな相手をそうでも無くする事も出来るんですか?」
「何だ?あんた嫌いな奴でも居んのか?その嫌いな奴と上手くやって行く為に嫌いって気持ちを催眠術で嫌いじゃないって思い込みたいって事だな?」
「出来るんですか?」
「出来る」
「そ、それでは具体的に依頼しても?料金は支払いますんで」
「効き目が切れる為のセーフワードとか終了の期日を決めとくか?」
「終了期日は嫌われてない、命が狙われてないって分かってからにしとくか」
「誰が誰にとか具体的に言っといてくれ」
「私の名はスパンダム。CP-0に所属する諜報員。CP-0総監のロブ・ルッチと折り合いが悪いので、おれがロブ・ルッチを苦手・嫌いだって気持ちを忘れさせて欲しい。そうだな、おれが父親にしてる対応ぐらいの接し方とか出来るならそれぐらいの気持ちでいたい。CP-0総監を親父と思い込んで、だが名前とかはちゃんと総監って呼んで敬語も使ってって⋯⋯これじゃあ注文が多いか⋯⋯」
「任せておけ」
スパンダムは海兵のジャンゴに催眠術をかけて貰った。
海軍本部に着くとボンドラに乗り無事に聖地マリージョアに帰り着く事が出来た。
「スパンダム、ただいま戻りました」
いそいそと自分のデスクに行って書類仕事を始めるスパンダム
遅れた分を取り戻さなくてはならない
足手纏いになってはいけない
「戻ってこられたのか」
デスクの前に人影が出来て顔を上げるとそこにはCP-0総監のロブ・ルッチの姿があった。
いつもはギョッと思うスパンダムだったがこれからは違った。
「総監、先ほど戻りました。御迷惑・心配をおかけしてすみません」
「ふん、心配はしていない」
「そうですね」
椅子から立ち上がり総監のロブ・ルッチに挨拶をする
スパンダムには総監が催眠術によって父親のような存在に感じている
心配していないと言われて見えない眉を下げて悲しそうな笑顔でそうですねと返したスパンダムに、ロブ・ルッチはスパンダムの意外な反応に違和感を覚えた。
総監を父親と同じような存在として認識する催眠術をかけて貰ったスパンダムは総監に対して無償の愛情のようなものを注ぎ始めた。
傍目にはいつもの媚売りにしか見えないかもしれないが動機が違う
「目障りだ」と告げられるとまた眉を下げてショックを受けたみたいな表情をして捌けるスパンダムにロブ・ルッチは違和感が募る一方だった。
「近頃のスパンダムはどうしたんじゃ」
「彼を見る時、愛しい人を見つめる優しい眼差しをしているわ」
「気色の悪い事を言わんでくれと言いたいところじゃが全くもってその通りじゃ」
「ファンクフリードを見つめる時と同じね。ルッチに恋でもしてるのかしらね」
「⋯⋯」
ティータイムにステューシーがカクと世間話や身近な話をしていた。
そこにちょうどスパンダムが通り掛かったのでお茶に招いた。
「近頃ルッチに優しくしているの、どういう心境の変化かしら?」
「総監に⋯⋯優しくしているつもりはありませんが、普通にしているつもりですが、総監には邪魔だと言われてしまうので、そうですね、こう、胸がシクシクと言いますか、拒否されたり拒絶されたりすると悲しい気持ちになりますね」
「それは恋かしら?」
「恋?そんなものではありませんよ。普通におれが総監にやってあげたい、お役に立ちたいと思う事をしようとしているだけです」
「見返りが無くても良いという事でしょう?」
「勿論、見返りなんてものは要りませんよ。総監の役に立ちたいだけなので」
「そう。無償の愛って事なのね」
「⋯⋯要らん会話に立ちおうてしもうたのう⋯⋯」
「あら、いいじゃない。見守ってあげれば」
ステューシーはスパンダムがロブ・ルッチに無自覚な恋をしていると判定し、カクも同じ感想を持った。
勿論、スパンダムは父親に向ける愛情を注いでいるだけなので恋をしている訳ではないのだが、そんなものは催眠術を掛けたジャンゴと傍に居た象剣のファンクフリードぐらいしか真相を知るものは居なかった。
スパンダムの気持ちは以前と比べれば穏やかだった。
総監に邪険にされて悲しいと思う気持ちは芽生えるが、総監に対して恨んだり憎んだり怒ったりして居た頃と比べるとずっとずっと心が穏やかだった。
海軍と合同の作業中、見知った人物を見掛けたスパンダム
詳しくは思い出せないが何かで世話になった気がした。
相手が帽子を少し上げ挨拶してくるような動作をするのでスパンダムも帽子を浮かせ同じように挨拶を返した。
「知っているやつか?」
総監に尋ねられ
「あまり記憶には無いのですが以前世話になった気がします」
スパンダムが世話になった相手を記憶に無いというのも珍しく、気の止めた総監ロブ・ルッチ
探りを入れたのはカクとステューシーだった。
「あの白い丸い帽子を被った仮面の男とは知り合いか?」
「あぁ、スパンダムか?以前港で政府の船に置いていかれたと泣き付いて来たから海軍の船で本部まで一緒に乗せて帰ってやった事があるが」
「あの時の乗組員か」
「それならはっきり覚えている筈じゃない?隠すほどでもないわ」
「催眠術をかけてやったから記憶が曖昧になっているのかもしれないな」
「催眠術じゃと?」
「上官が苦手だから、その気持ちを失くして心穏やかにいたいらしくて、その上官に対して父親のように対応出来るように催眠術をかけて欲しいと依頼された。見たところによるとまだ効果は切れていない。上手くは行ってるようだな」
「そうか、それでスパンダムはルッチに無償の愛とかいうおかしな事をしておるんじゃな」
「恋じゃなかったのね」
「もめておるわけでもないから放っておいても良いじゃろう」
「そうね。私は今のままの方が眺めていて面白いからルッチには言わないでおきましょう」
真相は分かったがロブ・ルッチには告げられずにいた。
スパンダムの父親に対する、家族への愛情をロブ・ルッチはスパンダムが自分に向ける愛情だと思い始めている事を知らずにカクは放置した。
ステューシーは知ってか知らずか楽しんだ
「スパンダム、スパンダムさん、おれは貴方を愛しています。貴方もおれを愛してくれますよね?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯はぁぁあ!!?」
スパンダムの目が覚めた。
催眠術が解けていた。
総監がスパンダムを愛したばかりにスパンダムの催眠術は解けてしまった。
おしまい
備考
此処で終わっている(´•ᴗ•;ก)
終わりなのかな?
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