4.クールときどき無鉄砲「お待たせしました、火神君。行きましょう」
教室を出た黒子が廊下で待っていた火神の背中に声をかけたが、火神は窓枠に頬杖をついたまま外を見続けていた。
何を見ているのかと黒子も火神の横に並んで外を見ると、その視線の先には、放課後の校舎に隠れてキスをしているカップルの姿があった。
「ちょっと……火神君、なにやってるんですか。覗きはダメだと思います」
「覗きじゃねぇし。あんなとこでやってんのが悪いだろ」
「そうだとしても、見続けてるのはマナー違反です」
黒子は火神を窓から引きはがし、その背を押して廊下を進める。階段を下りながら、火神は不思議そうに言った。
「マナーってもなあ。別に珍しいもんじゃないだろ」
「日本では、まだ珍しい部類です。というか、じっと見てる火神君が信じられません」
「なんでだよ」
「なんでって……信じられません」
「だから、なんでだよ!」
これがカルチャーショックというやつかと黒子は思った。ついでに、火神にはデリカシーを説いても無駄な気がする。
黒子は説明をあきらめて下駄箱へ向かった。その背を追いかけるように着いてきていた火神が、とんでもないことを言い放った。
「あんなの日常風景だけどな。もしかして黒子、キスしたことねえの?」
取り出そうとして靴にかけた黒子の手が一瞬止まる。
「……あります」
「ないんだろ」
「あります」
「ホントかよ」
「あります」
「あ…………マジで?」
「あります」
黒子の間髪入れない答え方に、火神は何故か微妙に焦った。
「誰とだよ。あの帝光のマネージャーか」
「言う必要はありません」
「答えになってねぇよ」
「答える必要もありません」
「本当はしたことねェんだろ」
食い下がる火神の顔を黒子が見上げる。
無表情の下の、何か言いたげな目で火神をみつめる黒子の視線に、火神は思わず言葉に詰まった。
「……この話、やめませんか」
「お、おぅ……」
言い淀む火神を置いて、黒子は先に行ってしまう。
書きかけで放置してたみたいです