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    🌸忘羨二次創作垢🌸

    @purinrin17_1

    忘羨専門二次創作する人

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    POIPOI 65

    藍忘機を泣かせ隊

    #忘羨
    WangXian

    藍忘機の涙再びイキの良いロバはいないかと聞かれ、金凌は即座に答えた。

    ***

    「林檎ちゃんを蘭陵のやつに?だめだだめだ!林檎ちゃんの面倒は一生俺が見るって決めてるんだから!譲れないぞ」

    夜狩りが終わり、一泊してから帰ろうという事になった。もう亥の刻も近い時間だったが、宿の食事処は席が満杯で活気づいている。
    少し遅めの夕食をとりながら、彼らは今日の夜狩りについて学んだことを情報共有し、非常に有意義な時間を過ごしていた。

    「違う!譲れと言ってるわけじゃない。雌ロバに子を産ませたい知り合いがいるんだ。お前んとこのロバは雄だろ」

    そろそろ寝ようかという頃、金凌が思い出したように林檎について話し始めたのである。

    「交尾させろって?まぁ相性が良いなら別にかわまないんだが…」

    う~ん、と魏無羨はアゴに手をあて上を向く。林檎ちゃんを蘭陵金氏まで連れていくとなると長旅になる事は必須だ。その間、林檎ちゃんを他人に任せて連れていくのは不安がある。

    「何を悩んでるんだ?ちょっとお前んとこのロバを貸すぐらいいいじゃないか」
    「その知り合いとやらに姑蘇に来るよう言ってくれよ。そもそも、お前んとこは皆金持ちなんだろう?雄ロバの一頭くらい自分で買えばいいじゃないか」

    「だめだ。そのロバは足が弱い。老婆ではないが、長く歩けないんだ。だからなるべく足腰の強そうなロバがいい。林檎はロバのくせに足が早いだろう」

    親の足腰が弱ければ生まれてくるロバも弱くなる確率が上がる。それを避けるため、間違いなく健康で、しかも早く走る事ができる林檎が良いんだと金凌は言っているのだ。

    魏無羨と金凌の会話に藍思追が間に入る。
    「林檎ちゃんの血筋なら、きっと足が早くて元気なロバが産まれるでしょうね」

    うんうん、と話を聞いていた弟子全員が頷く。
    何か不機嫌な事があるととてもウルサイ鳴き声を放つ。それもまた愛嬌だと思えるほど、世話を任されている弟子達は林檎というロバを可愛がっていた。

    「そいつ、俺の友達なんだ…」

    金凌の最後の言葉が決め手となった。金凌は友達が少ない。その友達の希望とあらば、叶えないわけにはいかないのだ。
    パン、と魏無羨は自分の太ももを叩く。

    「わかった。じゃあ藍湛が良いって言ったら林檎ちゃんを種ロバとして連れて行ってやるよ」

    十中八九、藍忘機は魏無羨の願い事については是と答える。蘭陵行きは決まったも同然だった。
    藍忘機と林檎を連れて蘭陵へ行くという決断が下されたが、金凌は眉を寄せる。嫌いというわけではないが、含光君には畏怖の感情を抱いているのだ。名前が出ただけでも金凌の体がこわばるくらいに。

    「なぜ今含光君の名前が出るんだ。ロバの飼い主はお前だろ」

    「わかってないな。林檎ちゃんは飛べないだろ。という事は当然歩いて蘭陵まで行かなくちゃいけない。長旅になるのは必然。その間、藍湛と離れ離れになるなんて…」

    その先はもう聞きたくないとばかりに金凌は両耳に手を添える。魏無羨はハハハ!と笑って軽く机を叩いた。揶揄われたのがわかり、金凌は耳をふさいだまま魏無羨をにらんだ。

    金凌は夜狩りを共にした仲間として姑蘇の弟子に認識されている。金凌のわかりやすい様子にクスクスと弟子達は笑った。


    ***

    後日、一つ返事で肯定の意を示した藍忘機と共に、魏無羨はロバを連れて蘭陵金氏へと向かった。

    到着してすぐ、魏無羨に対し金凌は「遅いぞ!」と一喝した。
    何故なら通常かかる日数の倍以上もかけて魏無羨と藍忘機はやってきたからだ。

    「俺達ははるばる遠くからやってきたんだぞ?年長者に対してその言い方は頂けないな」
    「それにしても時間がかかりすぎじゃないか」
    「色んな所に寄って旅を楽しみながらやってきたからな」
    「な…ッ」

    まだ何か言いたかったが、含光君に一瞥され金凌はウグ、と押し黙った。

    一緒にいた青年が前に出て挨拶をする。彼の格好はどう見ても農業を営むに適したもので、とうてい錬丹したり霊力を使って空を舞ったりするような人間には見えない。

    (こいつが、金凌の新しくできた友達?)

    金凌の友達なのだから、てっきり金持ちの道楽でロバを飼育している、物好きな同業者だろうと魏無羨は思っていたのだ。

    青年は魏無羨が連れている林檎の首を撫でて言った。

    「とても良いロバだ!わざわざ姑蘇から来て頂き感謝します。種馬…いえ、種ロバとして今日から7日間、こちらの林檎ちゃんをお借りします。よろしいですか?」

    「ああ。そいつの好物は名前の通り林檎なんだ。毎日林檎をやらないと、鳴き声がうるさくてかなわないって評判でさ。あと柔らかい草しか食べない。めったに人を蹴ったりはしないが、気に入らない奴には攻撃的だ。気を付けてくれ」

    魏無羨の一通りの説明に青年は頷き、わかりました!と素直に頷く。
    金凌の言う通り好青年という印象を抱いた。これなら林檎ちゃんを預けても安心だと感じた魏無羨は藍忘機と共に金凌が用意した宿へ向かった。

    道中珍しい商品がいくつか販売されているのを目にし、魏無羨は足を止める。

    「なぁなぁ藍湛!これ、あの香炉と造りが似てないか?」
    「うん。似ている」

    藍忘機の手前、金凌は「寄り道するな!」と言いずらかった。
    二人が商品に夢中になっていると、商人が声をかけてきた。金凌ははじめのうちは一蹴していたが、商人の巧みな話術によりあるものを購入してしまったのだった。

    商人に言われた。「この符を当てると、本来の姿を映し出す事ができる」と。つまり嘘がつけなくなる符なのだ。

    その後、金凌は二人を連れて宿まで案内した。

    「ここだ」
    「贅沢な宿だな」

    足を一歩踏み入れると、どこもかしこも金箔が目につく。従業員は見目麗しい者だけがが選ばれているのか、皆華やかだ。
    そして食事処からは嗅いだ事の無いような、食欲をそそる香りが漂っている。金凌は中へは入らず、魏無羨に言った。

    「七日後に借りたロバを連れてここにくる。それまでの宿代はもう払ってあるから、あとは好きにしろ。飯代もタダだ」
    「太っ腹だな。しかし年長者にはもっと言葉に気をつけろ?」

    江澄に似たのか、それとも父親に似たのか、いちいち偉そうなのだ。

    うるさいと反抗したかったが、金凌は藍忘機をチラと見てやめる事にした。それよりも、魏無羨に聞きたい事があった。

    懐から符を取り出した金凌は魏無羨に聞いた。
    「なぁ、…魏無羨」
    突然彼のまとう空気が重く暗いものになり、魏無羨は眉をひそめる。

    「俺の字は本当にお前が考えたのか?母上が、お前に頼んだっていう話は…本当なのか?」

    魏無羨は真面目に「そうだよ。俺が考えた。真実だ」と答えた。

    金凌は少し唇を震わせ、符を魏無羨に差し出す。

    「この符をつけて話すと、本来の姿が映し出されるらしい。嘘がつけなくなるんだ。これを自分につけて、同じ事が言えるかどうか聞きたい」

    考える間もなく魏無羨が手を伸ばそうとして、藍忘機が遮る。危険性があると感じたのだ。

    「大丈夫だよ。この符は悪い物じゃなさそうだ」

    数秒、魏無羨を見つめたあと、藍忘機は腕を下げた。しかし警戒は解かず、いつでも何かあれば対応できるようにと気を張り詰めさせた。

    魏無羨はその符を腕に貼り、言った。

    「俺は師姉と仲が良かったよ。だから師姉は信頼してる俺に言ったんだ。阿羨、字を考えて、って」

    金凌は今は亡き母の事を想ったのか、目が少しうるんでいた。ゴシ、と袖で目を拭ったあと、小さな声でわかったと口にする。

    次に顔を上げた金凌は何事も無かったかのように、いつもの少し偉そうな顔に戻っていた。

    「また7日後に来る!じゃあな。仙子 !」

    魏無羨がヒッと悲鳴を上げて藍忘機に抱き着いた。
    どこかに隠れていた仙子がワンワンと吠えながら近づいてくる。藍忘機はガクガクと震える魏無羨の肩を撫で、なだめてやった。
    金凌はそのまま霊犬と共に元気よく走って宿を去っていったのである。

    魏無羨を撫でていた彼の体がビシリと急に固まった。何事かと魏無羨は彼を見上げる。

    まだ道侶となって一年もたっていないが、ここまで驚いている顔を見るのは初めてだ。何を驚愕する事があるんだと魏無羨は首を傾げた。

    「どうした?」
    「魏嬰」
    「なに?」
    「君…」

    藍忘機は突然魏無羨を抱きかかえ、避塵を使って空へと舞い上がる。


    「うわ、どどど、どうしたっていうんだ藍兄ちゃん?!」

    「今の君の顔を、蘭陵金氏でさらすのは危険だ」
    「どういう事だ?俺の顔、今危険なほどブサイクだったのか?」

    藍忘機は何も言わず、人気のなさそうな林を見つけてそこに降り立った。乾坤袖から鏡を取り出し、魏無羨に渡す。

    「身なりを確認しろって?一体俺の夫はどうしちゃ…」

    魏無羨は驚愕した。昔の自分の顔に戻っている。

    「すごい美男子がいるぞ。どうなってるんだ」
    「その符の効力だろう」
    「すごいな、この符。本来の魂の姿を映し出してくれるのか」

    魏無羨は腕に付いたままの紙をピラピラとさせた。
    符に意識を集中させていると、ソっと頬を撫でられた。藍忘機を見ると、目元がキラリと光っているのがわかった。

    「俺の藍湛は、けっこうな泣き虫だったようだな」
    「君の、せいだ」

    強く抱きしめられる。その強さから、どれだけ藍忘機が自分を愛しているのかが伝わってくる。

    ハラリと符が地面へと落ちた。

    「藍湛、今の俺、いつもの顔に戻ってる?」

    気づいた魏無羨は拾い上げ、もう一度腕につけてみる。

    「どお?」

    藍忘機は首を左右に振った。もう何も起こらない。莫玄羽の顔のままだ。

    「効力切れか。なぁ藍湛、昔の俺を久しぶりに見てどう思った?」

    「わからない。だが、今とても君を愛おしいと感じている」

    元来気持ちを前に押し出すのが苦手なのか、それとも故意にしないのか、どちらにせよ素直に答える夫を魏無羨も愛しく感じた。

    「俺も、お前と同じ気持ちだ。大好きだよ、藍湛」

    林を通り抜ける風がふく。二人を祝福するように、緑が二人を包み込んだのだった。




    fin.





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