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    🌸忘羨二次創作垢🌸

    @purinrin17_1

    忘羨専門二次創作する人

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    #忘羨ワンドロワンライ

    #忘羨
    WangXian
    #魔道祖師
    GrandmasterOfDemonicCultivation
    #忘羨ワンドロワンライ
    wandolowanRai

    騙し合い「藍湛」
    「魏嬰‥‥」

    藍忘機は小舟の上で魏無羨を抱きこむようにして座っていた。魏無羨は心地よさそうに藍忘機の首元に口をつける。とても良い雰囲気だった。互いの名を呼び合い、視線を交差させる。

    「藍湛、俺はお前と出会って数年、ずっとお前の事を友達だと思ってたんだけど、お前はどう思ってた?」
    「‥‥わからない」
    「わからないだって?お前にもわからない事がこの世にあったんだな」
    「兎や、西瓜を見る度君を思い出す事は多々あった」

    口ではいつも魏無羨が勝っていた。しかし時折、藍忘機は意図せずして今のように魏無羨を黙らせる。魏無羨はむずがゆそうに口を開けたり閉めたりして、黙る。少し頬が朱に染まっていた。

    (ん?あれは‥‥)

    一面に広がる蓮の湖の中心で、水鬼らしきものが見えた。藍忘機はまだ気づいていないようだ。魏無羨はどうしようと悩む。

    この甘い空気を壊される前に水鬼を倒しておくべきか、それとも見過ごしておくべきか。
    今見えた水鬼は、この湖一面を管理する竹竿ジジイに懐いていた水鬼で間違いなかった。まだあの時、魏無羨は少年だった。
    パンパンと竹竿で叩かれていた事を思い出して少しブルリと身を震わせた。
    その水鬼がゆっくりと近づいてくる。藍忘機もさすがに気づいたのか、視線を湖の下に移す。

    「はぁぁ。最高の舟乗りだったのに。邪魔されちゃったな」

    サワサワと藍忘機の形の良い輪郭をなぞりながら、魏無羨は仕方なさそうに言った。
    ザパリと出てきた水鬼からはやはり血のニオイはしなかった。まだあれから一人も人を殺したことは無いらしい。

    「ん?なんだ?」

    水鬼が魏無羨に向かって宝石のついた装飾品を投げた。それは、折れた髪飾りだった。

    「これ‥‥!」
    「どうした」

    魏無羨の驚愕する顔を見て、藍忘機は問う。


    ***


    「雲夢を遊覧したいと魏の公子が言ってましたよ」という聶懐桑の一言がきっかけで、江澄は魏無羨に便りを出した。簡素なものだ。

    手紙に書いたのはたった一行。

    『蓮の湖が見頃だ。来るなら来い』

    厚かましいあの男の事だから、きっと蓮の景色を小舟で満喫したあと、この屋敷にやってくるに違いないと踏んでいた。

    「そ、宋主…」

    家僕が気まずそうに客人の名前を告げた。以前この雲夢で何があったのか、もう忘れたのだろう。

    元より忘れっぽい男なのだと江澄は額に手を当てて「ハッ」と笑う。

    「やはり魏無羨は、図々しい男だ」

    ***

    部屋へ案内され、藍忘機の膝に乗ってくつろいでいる図々しい男に早くも罵倒をかけたくなった。

    「何している!この恥知らず!」

    「げっ、江澄…もう来たのか。仕事で来れないかもしれないって家僕の人が言うからさ‥‥ちょっと遊んでただけだよ。それより、久しぶりだな!眉間のシワが増えたんじゃないか?」

    「お前こそよく生きられていたな。きっと藍忘機を怒らせ、七日以内には刺殺されるだろうと予想していたのに。あてが外れた」

    「まぁ確かに刺し殺されると思った事は多々あったが…」

    魏無羨は含みのある顔で藍忘機をチラリと見やる。
    藍忘機はプイとそっぽを向いた。
    一応、江澄は藍忘機に拱手し、一礼する。藍忘機も律儀に同じように一礼した。

    「何しに来た?用が無いなら帰れ」
    「冷たい事言うなって。旨い料理でもてなしてくれよ」
    「西瓜しか出せんぞ」
    「西瓜?十分だ!それより江澄、これ、見覚えあるよな?」
    「‥‥!」

    「蓮の湖で、竹竿ジジイの水鬼が投げてきた。ついさっきな」
    「‥‥」

    江澄は何も言わず、震える手でそれを受け取った。暗い顔をする彼に、魏無羨は何を言えばいいかわからなかった。

    藍忘機は静かに魏無羨に近寄る。
    きっとソレを渡せば魏無羨への激情を思い出させ、突如攻撃的になるのではないかと、藍忘機は心配していた。いつでも魏無羨を守れるよう、気を張る。

    「江澄、‥‥やっぱり西瓜はまた今度にするよ。もう、出るから」
    「変な気を使うな。気色の悪い」

    いつも通り「フン」と鼻でせせら笑い、偉そうに言った。

    これは、江澄の『してやったり』という時の顔だ。すっかり騙されたと魏無羨は安堵し、手を腰にあてて答える。

    「なんだ。元気そうじゃないか。騙されたぞ」
    「お前が人の家に問答無用でいつもズカズカと土足で入り込むのが悪い」
    「俺はそういう奴なんだ。知ってるだろう?」

    江澄は冷えた西瓜を切って持ってこさせるように家僕に命じた。
    待っている間、なんと江澄から藍忘機に話をふった。

    「こいつと共に暮らしているのか」

    藍忘機は声は発さず。小さく頷くだけだ。代わりに魏無羨が答える。
    「なかなか姑蘇も悪くないぞ。女の子は可愛いし、嫁探しにはもってこい‥‥いや、違うよ藍湛、俺はお前一筋だから、そんな顔するなって‥‥」

    「お前、覚えているか?」

    江澄の問いに魏無羨は首をかしげる。

    「何を?」
    「お前が言ったんだ。昔。一ヶ月、お前が藍忘機と同じ部屋で寝たら、藍忘機は追い詰められて錯乱するだろうとな」

    「追い詰められて錯乱?昔の俺は馬鹿だな。なー藍湛」

    藍忘機は何か思い当たる事があるのか考え込んでいる。

    「え?どういう意味だその無言は。なぁ藍湛、藍兄ちゃん!」

    江澄は「ク、」と小さく笑った。
    魏無羨の事はまだ完全に許したとは言えない。しかし、これからゆっくりこの溝を修復していこうと思えるようにはなった。

    懐に納めた母親の髪飾りを服の上から撫でる。

    「江家は‥‥任せてください」

    「ん、江澄、今何か言ったか?」
    「うるさい。西瓜が来たぞ。大人しく食え」

    江澄の小さな呟きは、母の魂にのみに届いていた。



    ***

    スタ、と地上に降りる。長旅だった。腕を回すと骨がポキポキと鳴った。静室に入る前に、魏無羨は藍忘機に聞く。

    「藍湛、ちゃんと夫人の魂は江澄に会えてたかな?」

    うん、と藍忘機は頷く。
    江澄が来る前に、あの髪飾りを使い、藍忘機の曲で虞夫人を招魂させていた。

    魏無羨の、せめてもの償いだ。

    「あの世で江おじさんに、今日の江澄の事話してくれてるといいな」

    ぽす、と魏無羨は藍忘機の胸に頭を預けた。優しく髪を撫でられる。いつか江澄にも、こんな幸せを与えてくれる相手が見つかると良いなと静かに思った。



    fin.
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