遠慮のない姫と大魔道士-世界の脅威への対策「ところでおれ、とうとうイオナズンとベギラゴンの契約をしました!」
「あら、そうなの」
「『すごい』って驚いてくんねぇの?賢者の姫さんならわかってくれると思ったのに!おれの年で契約できちゃう凄さを」
「ちゃんと驚いているわよ、まだ未契約だったことに」
「そっち?いやぁ、おれもとっとと契約したかったんだけど。魔法使いの憧れだから。でも成長途中の体にゃ早いって師匠に止められててさー」
「契約だけでもダメって?」
「そ」
「まぁ、無茶しない使わないってキミが言っても信じてもらえないか」
「姫さんまでそんな認識?」
「キミにザオラルしたのはだぁれ?」
「はい、パプニカの第一王女レオナ様です。って、おれこれからもこのくだりで延々と姫さんにいじられるの?」
「いじることのできる幸せを噛みしめさせてよ、割とトラウマなんだからね?」
「あ、はい」
「本題に戻ったほうがいい?」
「そうそう。イオナズンとベギラゴンの試し打ちをしたいんスけどパプニカで―」
「パプニカではダメ。ポップ君の極大呪文で問題なさそうな開けたところはありません」
「そんなに開けたところでないとダメかなぁ。師匠ん家の前でやろうと思ったんだけど、やるなって言われてさぁ」
「イオラで港町におっきなクレーター作った人はだぁれ?」
「はい、おれです」
「勝手のわかってない試し打ちだから安全第一よ。かなり開けた場所が必要だと思うわ」
「じゃあカールの砂漠地帯かオーザムの氷原かな。死の大地でやるのが一番実害がなさそうだけど、あそこの管轄って微妙だよなぁ。世界会議共同管轄区域だっけ」
「許可どりをしたいなら次の世界会議になるかしら」
「ってことは先生経由でカールの砂漠つかわせてもらうのが速ぇかな」
「ポップ君の試し打ちの規模ってもう軍事演習よね」
「やっぱそう思う?ま、こちとらダイの相棒をやらせてもらってますんで。これぐらいのことはできねぇと」
「……ポップ君はこの地上を去るとか言わないでよ」
「ダイがそんなこと言ってたのか?」
「……」
「ふーん。じゃあまあ、そん時は2人で去るわ」
「やだ、あたしも混ぜて!」
「だぁめ。姫さんがいるからおれたち2人は安心して地上を去ることができんだよ」
「それ、嬉しいけど嬉しくない」
「わかったわかった、じゃあおれたちの居場所を作るために3人で世界征服するってぇのは?」
「それ、楽しそうね!」
「目ぇキラキラさせてんじゃねぇよ正義の使徒ッ!」
「ねぇねぇ、実際に3人で世界征服するならどうする?」
「そうだなぁ。とりあえず状況次第だけど、ピラァ・オブ・バーンを真っ先に抑えて、アバン先生と他の仲間、特に”アバンの使徒”を味方にできなくても敵にならないようにしてぇよな」
「それは大事よね。”アバン”は求心力があるし。それさえなんとかしちゃえばポップ君が空からイオナズンをバカスカ打てばなんとかなりそう。ポップ君の速さで飛べる人、ほとんどいないし」
「姫さんが加わってくれるなら、おれの両親とかを姫さんとこでかくまってもらえるだろうし。おれも後顧の憂いってのがねぇわ」
「これって、つまりパプニカ王国が覇権をとるならって話でもあるのかしらね」
「そうなるな。しっかし何が悲しゅうて正義の使徒と世界征服計画を練らにゃあならんの。しかも実現可能性が高いやつ……あ、もしかしておれが本気で反旗を翻した時の行動予測がしてぇの?」
「ただのお遊びの思考実験よ。それにキミが本気で自棄になったらもうどうにもならないのよ。キミ、そのときはまず私を討つでしょう?」
「もちろん、姫さん以上に強い求心力があるやつはいねぇから」
「逆にポップ君があたしを討たない限りは、ポップ君は自棄になってないから、キミと世界の間に落としどころがあると言えるけど。とりあえずあたしの仕事はキミも含めたみんなが平和に暮らしたいと思う世界を維持することよね」
「そうだな、ダイが帰ってきたときに『これがおれが守った地上なんだ』って誇らしく胸を張れるようにするのが一番だよなぁ」
改めて合意形成を得たところで本日の報連相はこれまで