セクピスパロ「相手が思い込みでモンスターに見えるって?」
いつものようにサバイバーに自然と集まって、やわらかな酔いに身を任せたあたりでそんな話題が出た。あっけにとられた顔で趙が問い返すと、テーブル席で話をしていた足立と難波は顔を見合わせて懐かしむように相槌を打つ。
「そうそう大した妄想力だよなぁ」
「それくらい思い込む妄想力がねぇと勇者になるなんて言えねぇか」
なんと我らが勇者様はなんと妄想力で喧嘩の相手が”スジモン”に見えるという。
TVゲームの戦闘を模して殴る順番を待つ、喧嘩の相手が変身して見える。トドメに道端に刺さっていたバットを抜いて勇者を目指す、これが40代の健康的な成人男性だというのだから驚きだ。
「うるせぇな」
居心地が悪いのかカウンター席の春日が拗ねたようにつんと口を尖らせた。
ともすれば大丈夫か?と心配してしまうような話だが春日に好意を抱いている趙にとってはなんとも可愛らしいエピソードだ。欲目という自覚はある。
「じゃあハン・ジュンギとかも戦った時は変な格好してた?」
「やめてください」
「いや、あんときは変わらなかったなぁ」
んーと顎に手をあて記憶を探る春日の一言にホッと胸を撫でおろしたハンを視界の端にみて趙は口角を上げる。聞けばナンバとハン・ジュンギはスジモン図鑑なるものに登録されてしまったらしい。チンピラだけでなく慶錦飯店の虎やお掃除ロボ、パワーショベルと並べられるのはなんとも言えないものがあるのだろう。
「俺も喧嘩したらここに
「けど、──」
「戦ってるオマエの姿が虎に見えることがある」