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    短い話を放り込んでおくところ。
    SSページメーカーでtwitterに投稿したものの文字版が多いです。
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    POIPOI 192

    狡噛さんが行動課にいる理由みたいなもの。
    800文字チャレンジ25日目

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    ためらわない、迷わない(君が愛する世界) 彼を守るためにはためらってはならない。彼を愛するためには迷ってはならない。俺がここ数年で得た教訓とはその程度のものだったが、それは彼とともに過ごすにあたって、大きな意味を持った。
     例えば彼と潜入捜査をする時、例えば彼と危険な銃撃戦にあたる時、俺は絶対にためらわない、彼が無茶をする性格なのを知っているから、その先を行く無茶をする。小言はあとで聞けばいい。彼が生きているということが大事なのだから。
     戦場では多くの人死にを見てきた。笑ってボール遊びをしていた少年が突然バットでめったうちにされるのも見たし、ビー玉を転がしていた少女が腕をくくられて拐われるのも見た。彼らは俺の元には二度と戻らなかった。彼らはある程度戦闘技術を持っていたのにそんなだった。人を殺すなんて本当に簡単なのだ。殺されるのも簡単なのだ。生み出すのはこんなにも難しいというのに。
     
     
    「珍しいな、妊婦の警護だなんて」
    「お偉いさんの孫だとよ」
     俺たちはそんなことを言いながら、臨月の妊婦を護送していた。そのお偉いさんとは俺たちが逮捕した。お偉いさんはマフィアとの繋がりがあり、今は証言の最中だ。かくして、狙われる可能性のある家族を俺たち行動課が守る訳となったのだが、上手くいくかどうかは分からない。なぜならば、いつだってサイコロの目は分からないから。
     妊婦はずっと泣いている。自分の祖父が犯罪者だったことに、名付け親になってもらう予定だった祖父が犯罪者だったことに。けれどそんなの平和な出島だから言えることだ。海外では誰もが誰かを殺した犯罪者で、誰もがマフィアと繋がる犯罪者だった。子供は強く育つだろう。シビュラはそれを保証している。
    「きっと良い子が生まれますよ。母親に似て」
     ギノはそんなことを言って、妊婦を励ましていた。俺はそうであれば良いのにと思った。ボール遊びをしても、ビー玉で遊んでも殺されない、拐われないこの国で、どうか幸せになってくれと、そのためなら俺は迷わないと、そんなことを思いながらハンドルを切る。俺はギノを愛している。だからギノが愛するこの国を愛したいと思うのだ。誰かが幸せを望むこの国を。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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