タイムリミット(あなたを愛する時間) 時間がない。だからといって手抜きはしたくない。たっぷりいつものように時間がかけられないとはいえ、彼を愛するのに手を抜きたくはない。そんなことを思いながら俺はギノに口付けを落とす。キスだけで終わっておく? あとは夜にとっておく? それとも短い時間を共にしてから出勤する? 俺は悩みながら、静かに身を寄せるギノを抱きしめた。彼は俺にされるがままにされている。少しくらい出勤が遅れてもかまわないとでも思っているのだろうか? 俺はそんなことを思って、そんなことあるはずがないとも思った。彼は仕事に関してはストイックで真面目だ。こんなことが許されるはずがない。以前だってこんな時に始めようとしたら、左で殴られたことがあった。彼は少し性欲が淡白で、キスだけで満足できるところがあるのだ。ただ触れられたらそれでいい、そう考えるところが。だからこうやってキスをしているのも、大した意味はないんだろう。セックスに繋げようなんて、そんなこと絶対に考えていない。セックスなんて夜にする深い営みくらいにしか思っていない。俺はそれを悔しく思う。急げば出勤までに間に合うのに、彼はそれをしてくれないと。
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