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    短い話を放り込んでおくところ。
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    三徹目の2人。
    800文字チャレンジ56日目。

    #PSYCHO-PASS
    ##800文字チャレンジ

    モーニングコーヒー(ある種の報告書) 夜明けのコーヒーは美味い。それが愛する人とのものならばなおさらだ。しかしそれが愛する人とのものであっても、場所が場所じゃ不味くもなるというものだ。俺たちはもう三日も寝ていなくて、眠気覚ましのカフェインすら効きそうになかった。そんな中で飲む泥水のようなコーヒーは、どちらかというと泥水以下だ。
    「あら、あなたたちまだ徹夜してたの? いいところで切り上げてって言ったじゃない」
     滅私奉公をしているというのに、クールな花城は出勤して初めてそう口にした。そういう彼女も一昨日は徹夜をして必死の形相でデータと向き合っていたのだが、もうそれは忘れることにしたらしい。
    「何このコーヒー、不味っ! あなたたちこんなの飲んでるの? ほら、さっさと仕事を終わらせて帰りなさい。その顔じゃあ私の監督不行届って思われちゃうわ」
     花城はそう言うとデータのリンクを切り、俺たちに官舎に帰るように言った。後ろで須郷がおろおろと行ったり来たりしていたが、そんなのはどうでもいい。ちゃっかり休んだところを見ると、彼は花城の助言に従ったのだろう。ギノも俺も、自分の力を過信しすぎることがある。だから徹夜をするのだ。もう歳だっていうのに、まだ自分の身体は強くて、徹夜に耐えられると思っているのだ。
    「熱いシャワーを浴びてさっぱりして今日は休暇を取って。明後日から働いてもらいますからね。何事もめりはりが大事よ」
     花城はそう言うと、俺たちを行動課のオフィスから押し出して、自分の席についた。俺たちは顔を見合わせて、お互いのひどい顔を見て、何もする気になれずに、けれどキスだけはして官舎に戻ったのだった。
     
     官舎に戻ったのはいいものの、眠れなくて困った。隅々まで綺麗にしても、さっきまでずっとともにいた存在が側にいないと落ち着かないのだ。それはギノも同じだったのか、俺が訪ねると喜んで受け入れてくれた。緑の瞳は濡れて、唇は物欲しげに開き、鍛えた身体はしなだれかかってくる。ここから先はどうなったかって? それは彼のプライベートもあるから答えられないが、いつもより数倍良かったとは言える。それから、行動課のオフィスのコーヒーサーバーがそろそろ替え時だってことも進言しておこう。
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    TRAININGお題:「昔話」「リラックス」「見惚れる」
    盗賊団の伝説を思い出すネロが、ブラッドリーとの初めてのキスを思い出すお話です。軽いキス描写があります。
    かつての瞳 ブラッドは酔うと時折、本当に時折昔話をする。
     普段はそんな様子など見せないくせに、高慢ちきな貴族さまから後妻を奪った話だとか(彼女はただ可哀想な女ではなく女傑だったようで、しばらく死の盗賊団の女神になり、北の国の芸術家のミューズになった)、これもやはり領民のことを考えない領主から土地を奪い、追いやった後等しく土地を分配したことなど、今でも死の盗賊団の伝説のうちでも語り草になっている話を、ブラッドは酒を飲みながらした。俺はそれを聞きながら、昔の話をするなんて老いている証拠かなんて思ったりして、けれど自分も同じように貴族から奪った後妻に作ってやった料理の話(彼女は貧しい村の出で、豆のスープが結局は一番うまいと言っていた)や、やっと手に入れた土地をどう扱っていいのか分からない領民に、豆の撒き方を教えてやった話などを思い出していたのだから、同じようなものなのだろう。そしてそういう話の後には、決まって初めて俺とブラッドがキスをした時の話になる。それは決まりきったルーティーンみたいなものだった。
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    TRAININGお題:「花火」「熱帯夜」「一途」
    ムルたちが花火を楽しむ横で、賢者の未来について語ろうとするブラッドリーとそれを止めるネロのお話です。
    優しいあなた 夏の夜、魔法舎に大きな花火が上がった。俺はそれを偶然厨房の窓から見ていて、相変わらずよくやるものだと、寸胴鍋を洗う手を止めてため息をついた。食堂から歓声が聞こえたから、多分そこにあのきらきらと消えてゆく炎を作った者(きっとムルだ)と賢者や、素直な西と南の魔法使いたちがいるのだろう。
     俺はそんなことを考えて、汗を拭いながらまた洗い物に戻った。魔法をかければ一瞬の出来事なのだが、そうはしたくないのが料理人として出来てしまったルーティーンというものだ。東の国では人間として振る舞っていたから、その癖が抜けないのもある。
     しかし暑い。北の国とも、東の国とも違う中央の暑さは体力を奪い、俺は鍋を洗い終える頃には汗だくになっていた。賢者がいた世界では、これを熱帯夜というのだという。賢者がいた世界に四季があるのは中央の国と一緒だが、涼しい顔をしたあの人は、ニホンよりずっと楽ですよとどこか訳知り顔で俺に告げたのだった。——しかし暑い。賢者がいた世界ではこの暑さは程度が知れているのかもしれないが、北の国生まれの俺には酷だった。夕食どきに汲んできた井戸水もぬるくなっているし、これのどこが楽なんだろう。信じられない。
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