モーニングコーヒー(ある種の報告書) 夜明けのコーヒーは美味い。それが愛する人とのものならばなおさらだ。しかしそれが愛する人とのものであっても、場所が場所じゃ不味くもなるというものだ。俺たちはもう三日も寝ていなくて、眠気覚ましのカフェインすら効きそうになかった。そんな中で飲む泥水のようなコーヒーは、どちらかというと泥水以下だ。
「あら、あなたたちまだ徹夜してたの? いいところで切り上げてって言ったじゃない」
滅私奉公をしているというのに、クールな花城は出勤して初めてそう口にした。そういう彼女も一昨日は徹夜をして必死の形相でデータと向き合っていたのだが、もうそれは忘れることにしたらしい。
「何このコーヒー、不味っ! あなたたちこんなの飲んでるの? ほら、さっさと仕事を終わらせて帰りなさい。その顔じゃあ私の監督不行届って思われちゃうわ」
花城はそう言うとデータのリンクを切り、俺たちに官舎に帰るように言った。後ろで須郷がおろおろと行ったり来たりしていたが、そんなのはどうでもいい。ちゃっかり休んだところを見ると、彼は花城の助言に従ったのだろう。ギノも俺も、自分の力を過信しすぎることがある。だから徹夜をするのだ。もう歳だっていうのに、まだ自分の身体は強くて、徹夜に耐えられると思っているのだ。
「熱いシャワーを浴びてさっぱりして今日は休暇を取って。明後日から働いてもらいますからね。何事もめりはりが大事よ」
花城はそう言うと、俺たちを行動課のオフィスから押し出して、自分の席についた。俺たちは顔を見合わせて、お互いのひどい顔を見て、何もする気になれずに、けれどキスだけはして官舎に戻ったのだった。
官舎に戻ったのはいいものの、眠れなくて困った。隅々まで綺麗にしても、さっきまでずっとともにいた存在が側にいないと落ち着かないのだ。それはギノも同じだったのか、俺が訪ねると喜んで受け入れてくれた。緑の瞳は濡れて、唇は物欲しげに開き、鍛えた身体はしなだれかかってくる。ここから先はどうなったかって? それは彼のプライベートもあるから答えられないが、いつもより数倍良かったとは言える。それから、行動課のオフィスのコーヒーサーバーがそろそろ替え時だってことも進言しておこう。