まんまるな頭をそっと撫でた。ベッドに並んで腰かけて、こんなに近くにス~ちゃんの体温があって、俺が触れないでいられる時間なんて限りなくみじかい。つやつやの髪越しに、じんわりとス~ちゃんのぬくもりがてのひらへ伝わってくる。撫でつけるよりむしろぐりぐり掻き回すような俺の手つきに、初めはうっとり目を細めていたス~ちゃんの表情も、なんだか怪訝そうに変わっていった。
「ちょっと……子どもあつかいしないでください」
「ん~? ちがうよ。好きな子あつかいしてる」
そのまま顔の輪郭に手をすべらせて、ふわふわのほっぺを目尻に向かっておやゆびでなぞった。何度も味わって、何度でも味わいたくなるス~ちゃんの感触。眉をひそめて、ぎゅうっ、と押し込むようにまばたきをするのは、ス~ちゃんの照れている証だ。それからス~ちゃんはふるふるとくびを振って俺の手を払いのける。かと思うと、ことん、と俺の肩に頭をあずけてきた。
「めずらしい。甘えんぼス~ちゃんだ」
「甘えているのではありません。好きな人、あつかいを。しているのです」
意趣返しのつもりで、覗く肌がみるみる赤く染まっていくのがス~ちゃんだなって俺はうれしくなってしまう。いちど触れたら当分は離せないのも俺で、思いっきり抱きしめて一緒にベッドへ倒れ込んだ。
「わ」
「あ、これは抱き枕あつかいね」
「それはいりませんっ。くるしいです……」
「じゃあ、苦しくないこともしてあげる」
まだ床に足を下ろしたままだったけど、引きずり込んで足を絡めて、ちゃんとベッドの真ん中に寝かせてあげた。なにせ、寝床に連れ込むのはお手の物なので。それから俺は後ろから抱きつく格好になって、ス~ちゃんのくびすじに鼻先を寄せる。髪や洋服からする清潔な香りの奥に、やわらかくてほのかに甘い、ス~ちゃん自身の匂いがいる。俺の本能に、おいしそうってインプットされた匂い。くちびるで確かめて、粘膜で濡らして、ちゅうっとかわいい音を立てて。耳たぶの裏を舌先で押すとス~ちゃんがぴくんと肩をすくめた。耳を覆ううぶ毛を、下から上へ俺の舌で少しずつ濡らしていくにつれ、ス~ちゃんの体がふるえる。
「ぅ、抱き枕にこんなこと、なさるんですか」
「ん~、これは好きな子あつかいかな」
「もう分かりません」
「いろいろぜんぶ、ひっくるめてス~ちゃんあつかいってこと。わ~、やったじゃ~ん、ス~ちゃんとくべつ~」
「やはり子どもあつかいが大半ではありませんかっ、離してください」
あやすみたいに笑いながら、腰に回した腕に力を込めたら、ス~ちゃんは身をよじって抜け出したいってアピールする。
「そんなことないって。もっといろいろ、ぜんぶだよ?」
しかたないので拘束は解いてあげて、今度はス~ちゃんに覆いかぶさった。ス~ちゃんの顔の両側に手をついて、俺の影がス~ちゃんの上に重なる。きっとよく見る、ぷくっとむくれた顔をしているだろうと思ったけれど、予想に反してス~ちゃんは、ただまっすぐに俺を見上げていた。うっすらひらいたくちびるがあたたかい吐息をこぼして、目もとがほんのりピンクに色づいて。真顔よりもどことなく官能的な表情で。
「……では、他には何が、あるのですか? 『ス~ちゃんあつかい』は」
ス~ちゃんが顔を横に向け、さらりと髪が流れる。表情が隠れてしまって惜しいな、なんて俺が思っている間に、ベッドに下ろした俺の腕に、ちゅ、とス~ちゃんがくちづけた。それから、ちらり、と俺をうかがう視線に、潤んだ光の膜が張る。
ねえそれも、好きな人あつかいしてくれてるって思っていいのかな。そんな質問を言葉にはしないでくちびるに直接たずねるのも、俺なりの。