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    りつかさ/熱いね

    #りつかさ

     これってもしかして、キスとかしてもいい雰囲気かな。
     気づいた瞬間はすごく静かだった。俺とス~ちゃんはただ並んでお話をしていただけ、そのはずなのに、いつの間にか肩も触れ合う距離にいて。ふと隣に視線をやったら偶然ス~ちゃんもこっちを見ていたものだから、顔がやけに近くなった。不意に流れた透明な沈黙が、こぼしたガムシロップみたいに二人を濡らす。とろりと気泡で綴じて世界を遠ざける。俺が頭を傾けながら近づくとス~ちゃんもきゅっと顎を引いた。
     ス~ちゃんの手を拾うと、ゆびさきまで温かかった。俺はそれをうやうやしく顔の前まで持ち上げて、なかゆびの付け根の辺りに、ちゅ、と音を立ててくちづけた。
     伏せた視線を持ち上げてス~ちゃんに向けると、俺の一挙一動を熱心に見つめていたのがわかった。
    「びっくりした?」
    「……そっちか、と、思いました」
     ああ、やっぱりしてもよかったんだ――その言葉を聞くと俺はほっとして、ほっとしたはずなのに心臓はむしろうるさくなって、握ったままのス~ちゃんの手を引き寄せ、今度こそくちびる同士をくっつけた。
     リップ音を鳴らすのはまだちょっと照れくさかったから、優しく押し当てるだけにしたのに、ス~ちゃんのくちびるは想像の何倍もしっとりやわらかくて勝手に俺に吸いつく。ふつ、とかすかな音が俺の中にいっぱいになって、ごくん、と唾を飲んでしまった。
     なんでもない日の、なんでもない、俺とス~ちゃんの初めてのキスだ。
     は、とス~ちゃんから漏れたみじかい吐息が俺のくちびるを温める。と、ス~ちゃんはたちまち顔を背けてしまった。やっぱり嫌だったのかな、って俺が不安がる暇もなく、ス~ちゃんは泣き出しそうな声でつぶやいた。
    「今っ、私を見ないでください……絶対に顔が赤いので」
     俺とつないだ反対側の手でス~ちゃんは頬の辺りを必死に隠す。言われた途端に俺も気づく、たぶん今、顔に血が急いで集まってるなってこと。
    「え、あー……それ、俺もかも」
     言うなり朱い頭が跳ねるようにこっちを向いた。かち合った紫のまなざしはシャボン玉みたいにゆらゆら光を跳ね返して、確かにほっぺも、ぽよんと熟れた食べごろの色。ス~ちゃんの目に映った俺もそうだったんだろう。
    「俺もって言ったらすぐ見るじゃん。ス~ちゃんのすけべ」
    「す、……お互いさまです」
     喉を鳴らして笑ったつもりだったけれど、渇いていてなんだかうまくいかなかった。ごまかす代わりに俺はス~ちゃんの耳の後ろへ手を回して、襟足をくすぐる。そのまま頬へすべらせると、茜色のまつげがうつむいて、あとはもう、ふたたびキスするのは簡単だった。
    「ほんとだ。熱いね」
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