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    りつかさ/俺たち距離感バグってる?

    #りつかさ

    『待ってこれだけ言わせてMVメイキングりっつがすーちゃんの肩抱いてたとこまでははいはいいつものね😊だったけどすーちゃんりっつの手握り返してる???よね?????シンメ担生きて』

    『こちらが今回朔間凛月氏に見つかり「あれ俺にやって」みたいな感じて指差されて(?)隣にいた自担も凛月氏に向かってハートしてて(??)完全にシンメいちゃいちゃのダシにされた私の「司ハートつくって」うちわになります。ご査収ください。』

    『あっ今日のアティフェ途中で司くんモニターから消えた…?と思ってたらそんなことになってたんだ…!かわいい~!レポありがたい…!凛月くん末っ子にのしかかるの好きだね笑>RT』

    『アーカイブ助かる~最初くまいないとみせかけてかちゃにおんぶされてたのまじびびった 一体化すな』

    『【Knights福岡2日目昼】
    福岡ホテルは司と凛月が同室(他は不明)
    司「(凛月と同じ部屋だと)夜が遅くなってしまって…」
    泉「ほっといて寝なよ」
    司「先に寝るとベッドに入ってくるんですよ!それで冷たっ!てなって起きちゃうから嫌です」
    凛月「あったかいからね」
    レオ「最初から添い寝すれば?」』

    『1月1日~3日の三日間にわたり開催されたお正月ライブ「HAPPY NEW ENSEMBLE」。総勢51名のアイドルが出演し、合計28曲を熱唱した。
    (中略)続くKnightsが「Little Romance」を披露すると、ステッキを用いた優雅なダンスと甘い歌声に客席もうっとり。曲の後には朔間凛月が「一日目の出番はこれで終わりだから、俺は寝正月するね」と朔間らしいのんびり発言で場を和ませる一幕も。リーダー・朱桜司に抱きつき「ス~ちゃん、肩貸して」と甘える可愛らしい姿にファンからは歓声が。そのまま「おやすみ~」ともたれかかる朔間に、朱桜は「ステージ上で寝てはいけませんよ!」とすかさずツッコミ。洗練された騎士らしい振る舞いと、仲の良さがうかがえるオフモードとのギャップで、会場中の「お姫さま」を魅了した。』





     時は少しだけ遡り、三が日ライブのリハーサル真っ只中。自分の出番が一段落ついた俺は、飲み物を取りにケータリングルームをおとずれていた。たくさんのお菓子や軽食、冷蔵庫に電子レンジが並ぶ小さな部屋は、先客もなくがらんとしていた。
     普段ならま~くんなり他の人にお願いするところだけど、シャッフルユニットの出演がばらばらにあったり、それでなくても大人数の現場はみんながどことなく浮き足立っていて、誰かと一緒の行動がとりづらい。俺は冷蔵庫からペットボトルの炭酸飲料を取り、それから、箱にぎっしり詰まった銀包みのチョコレートを一粒つまんだ。
     お正月の賑々しい雰囲気と、ライブへの期待、ちょっぴりの緊張。あてられてそわそわしてるのは俺も同じ。生チョコに近い食感を口蓋で押しつぶすと、思ったよりも疲れていた体と頭に、柔らかい甘さが染みる。
     もうひとつ、と手を伸ばしたところで目が合った。
    「おいしいよ。ス~ちゃんも食べる?」
     同じく飲み物を取りに来たのか、廊下から顔を出したス~ちゃんを、チョコをひらひら振って誘う。藤色の目がぱあっと輝いた。ちらり、一瞬リハーサル会場の方向へ視線をやったあと、「今ちょうどXXVeilです」といたずらっぽく声をひそめながらケータリングルームへ入ってきた。
    「いいよ。俺たち共犯ね」
     そしてス~ちゃんは俺の目の前に来ると、口を開き、俺に向かってわずかに顎を持ち上げた。
     手を出して受け取るとか、同じものを箱から自分で取るとか。方法はいくつもあるはずだけれど、ス~ちゃんはおそらくごく自然に、俺に「あーん」を要求していた。思わず、ふふ、とほほえみが俺のくちびるから漏れる。
     俺とス~ちゃん、距離が近いな、と思うことがままある。
     俺はもともと近しい人とのスキンシップに抵抗がないほうだし、寝床に引きずり込むことだって通常運転だ。ス~ちゃんはといえば、初めはいちいち大騒ぎしていたのに、近ごろはだいぶ慣れて、いい意味で反応しなくなったように思う。心を許してくれている証だと思えば喜ばしいけど、そうなるとついエスカレートしてしまう悪いお兄ちゃんとは俺のこと。抱きついたり、撫でたり、もたれたりくっついたり膝枕したりされたり。相変わらず抱き枕にもしたり。そのたびに、本気で拒否されないのがしみじみうれしくなる。そしてまた余計に、俺はス~ちゃんに触れたくなって。
     そのうちお姫さまたちの間でも、距離感バグってる、なんて言われるようになっていた。仲のよさを見せて喜んでもらう分には、一向に構わないんだけど。ス~ちゃんはス~ちゃんで、今みたいにファンサービスじゃない時さえ、対俺のパーソナルスペースが消滅しつつある始末で。
     思うところが、ないわけじゃない。
    (無防備、だなぁ)
     言いたいことはひとまずチョコの香りと一緒に飲み込んで。キャンディみたいに捻られた銀紙をほどいて、チョコレートをス~ちゃんのくちびるに押しつけて押しひらく。はく、とス~ちゃんが食いついて、俺の手から直接、チョコレートを口にふくむ。早くも溶けてくちびるを潤した焦げ茶色の甘いリップを、濡れた舌がぺろりと浚っていく。
     すぐにス~ちゃんの眉間にしわが寄る。困っているわけじゃなくて、喜びで思わず顔がとろけてしまう時のしわ。
    「Marverous! 口の中でもうとろけて……Milkの風味が強く、まろやかで。確かに美味ですね!」
     ほっぺを軽く膨らませて、ころ、と口の中でチョコレートを転がして。目を細めて幸せを味わうその表情を見ていると、俺もつられて笑顔になってしまう。世界じゅうを和ませる才能、ひとりじめなんてせずに、全世界のお姫さまに届けるべきだ。
    「ス~ちゃん、俺に対してすごーく油断してるよねぇ」
     なのに、今は俺だけに見せてくれる表情なんだって、得意になってしまっている俺の存在を、俺は否定することができない。
     あーあ、おいしそうだなぁ。
    「油断? 警戒する理由もありませんから」
    「へぇ。そう思ってくれてるんだ? 太らせて食べちゃうかもしれないのに」
     む、とわずかに口をとがらせてス~ちゃんが反論する。
    「体型管理も今まで以上に気をつけておりますから、そのご心配には及びません」
     本人の言うとおり、体つきは安定してきたと思う。子どもらしい曲線の残っていた体が、成長期、そしてス~ちゃん自身の努力によって、日ごと大人びていくのが分かる。あどけなさが失われていくのはちょっと寂しい気持ちもあるけど、仲間としては頼もしい成長だ。それはス~ちゃんがより魅力を放ち、よりパフォーマンスを磨き上げ、アイドルとして、Knightsとして最大限に輝くためのステップだと理解しているから。
     でもね、体はそうかもしれないけど。
    (食べちゃいたいのは、魂、だよ)
     愛されること、愛することに慣れて、慣らされて、貪欲に吸収していく姿。シンメって、それをいちばん近くで見つめていられる特権の立場だ。初めてこの子のために歌い踊りたいと思ったあの日から。ス~ちゃんの魂は、俺の愛をどんどん食べて、すくすく育って、日に日においしそうになっていくんだ。
     いつからか俺がこの特権をひとりじめしたくてたまらなくなっていること。そして、それと同じくらい、世界じゅうに自慢したくてたまらないこと。ス~ちゃんはまだ知らないだろう。
     たった今の出来事は一体どこで話そうかな、と俺は考える。俺にお菓子をあーんされに来る雛鳥みたいなス~ちゃんのこと。ライブ後のブログなら俺たちのファンがしっかり見てくれているかな。ラジオで目の前にいる本人の反応を楽しむのもいいな。この後のライブ本番だとセッちゃんのお叱りが入るだろうし、他のアイドルたちの見せ場もあってもったいないから、今回は新規エピソードは封印して、「いつも通り」の俺とス~ちゃんをお姫さまたちに見せよう。その結果もしまた距離が近くなりすぎちゃったら、それはそれで。
    「そうだねぇ。食べるには……もうちょっとかな?」
    「凛月先輩!」
     体がどれだけしっかりしてもそこだけもちもちなのは変わらない、ほっぺを優しくつねってあげると、ス~ちゃんは肩をすくめて俺を諫めた。でも、本気で怒られてないってことも俺はもちろん知ってる。
     ああ、俺のもとで変わっていく、色づいていく、かわいいひと。距離感おかしくなっちゃうくらい、俺を魂の内側に迎え入れてくれたひと。
     食べごろはきっと、もうすぐ。
    (ねえ、でもそれってもしかして、俺もなのかな?)
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