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    りつかさ/滴る

    #りつかさ

     ス~ちゃんの手を、腕を、甘いしずくがぬったりと伝っていく。
    「わわ、」
     溶けたピンクのアイスクリーム、いちごあじ。何種類かを大きいパックで買ってきて、俺はあり合わせの器に、ス~ちゃんはコーンに盛りつけて、お部屋でゆっくりいただく贅沢を楽しんでいたところ。その喜びに浸りすぎて、俺はもう器を空にしたのに、まだ少しずつ味わっていた結果、牙を剥かれたス~ちゃん。
     そりゃそうだ、だってこんなに、俺たちだってとろけるくらい暑いんだし。
     慌てているス~ちゃんの手を掴む。あっ、て顔をした。今から起こることの察しがついて、それをできれば拒んでおきたい顔。けれども、ひとまずこれ以上の被害を食い止めるため、ス~ちゃんは崩れゆくアイス本体にぱくんとかぶりついた。
     そしてその隙に、俺はス~ちゃんの腕にくちびるを寄せた。
    「その判断、せーかい」
     ぺろ、と手首まで舐め上げるとス~ちゃんがびくんと肩をすくめる。甘ずっぱい、甘くて、甘くて、ちょっとだけすっぱい、ぬるい香りが喉に張る。さっぱりシャーベットもおいしかったけど、濃厚なストロベリーもなかなか。
    「ぅ。背に腹はかえられません、から……」
     垂れたのを舐めるなんて悪いお行儀は俺の担当で、ティッシュなりタオルなりをすぐに探せなかったのがス~ちゃんの敗因です。ス~ちゃんを濡らすおいしい汚れをぺろぺろ拭って、そのまま手に何度もくちづける。エアコンの除湿機能さまさまで、ス~ちゃんの肌は乾いて少しひんやりしていた。
    「そこには垂れていませんよ」
    「ス~ちゃん味も、ほしくなっちゃった」
     まずは、合図としてのほっぺたに。それから、濡れたくちびるに、ちゅうっ、て甘えるみたいなキスをする。ほう、と吐く息の熱さでス~ちゃんにいじわるする。絡まった俺の視線だって、きっとイチゴくらい紅く熟れてたはずなのに、ス~ちゃんは何も言ってくれなくて、ぱり、とコーンのはじをかじった。
    「そんなすぐ口直ししないでよ。傷つくんだけど」
    「んっ。そのつもりはありませんでした……すみません、早く食べてしまわないとと思って」
     俺の味、まだアイスに負けてるみたい。くちびるに張りついた小さいかけらを、ス~ちゃんの舌がちろりと拭う。つられて俺も舌なめずり。
    「ふふ。別にいいけど。ス~ちゃんも慣れてきたよねぇ、俺の扱い」
    「いいことですか? それは」
    「うん。だってエスカレートしてもいいってことでしょ」
     あーん、と俺が口を開けると、空いてるほうの手で体ごと押しのけられてしまった。
    「まだ食べ終わっていません」
     さくさく、と小気味よい音を立てながら、ス~ちゃんは短くなったコーンを口に押し込み、少しずつ消していく。三角形の先端がス~ちゃんの口から突き出ている。たぶんこの中には、すっかり液体になった甘い淀みが溜まっている。割れたら、たちまちあふれてしまう、どろどろに溶けた夏の蜜。
     終わったらいいってことなのかなぁ、という突っ込みを心の中だけに留めるのは、俺も俺でス~ちゃんの扱いに慣れてきたからだったりする。
    「ス~ちゃん、中で溶けてるの吸って」
     表情にはハテナマークを浮かべたまま、すうっ、とス~ちゃんが素直に従う音がした。
    「今から先っぽかじるから。垂れないように気をつけようね」
     食べ終わったら遊んでくれるっていうのなら、俺が手伝いたくなるのはなんにもおかしなことじゃないし。アイスがくれた冷たさなんて、どうせすぐどこかへいってしまうから。
     ス~ちゃんはまた、あっ、て顔をしたけど、正しい判断ができるので、俺からのキスを避けない。
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