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    ryuhi_k

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    ryuhi_k

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    べったー掲載「星を呑んだ」シリーズ本編外の一コマ
    肆のエピローグ的な話

    前話「星呑み小話:渡れぬ水が横たわる」→https://poipiku.com/315554/8478175.html
    後話「星呑み小話9」→https://poipiku.com/315554/5431231.html

    ##木星旋回
    ##星呑み

    星呑み小話1『出かけるぞ』

    楓星ふうせいが旅――旋葎せんりの未練を断ち切りに行った――から帰って来た翌日のことだった。
    殆ど眠らせてもらえなかった旋葎の頭は、返事も文句も即座に返せない。今までならば、この間に楓星は苛立っただろう。しかし今日は、大人しく旋葎の返事を待ち続けている。最も、旋葎の頭が働かない原因の癖に、起き上がるための手も貸さないのは、相変わらずであるが。

    「……。……どこに。なにしに」

    ようやく身体を起こした旋葎が、半分目を閉じたままそう返した。

    『別にどこでもいい。とにかく行くぞ』
    「なんだそれ……。だめだ、むり。おまえが……」

    かくん、と傾いた旋葎の身体を楓星が受け止める。
    旋葎の揺蕩う意識が、そこで一気に覚醒する。

    『起きたか』
    「お前……」
    『なんだ、その顔は。あの占い師見るような面だぞ』

    そうもなる、と言いたいのを飲み込む。
    旋葎の身体を受け止めた腕も、その力加減も、向けてくる表情も、随分と「人間らしい」のだから、驚きもする。
    昨晩、お互いの想いを確かにしただけでこうも変わるというのか。

    「……いい、どこに連れて行く気か知らんが、一緒に行ってやる」




    ――楓星と旋葎の住まいは、入り口は一箇所しかない。楓星の領地で一番大きな人里にある社の本殿だ。
    その中には見た目と釣り合わない広大な土地が広がっている。その空間から出る時はどうなるかと言うと、塀の向こうに行けば人里の端に、空へ舞い上がれば人里の真上に出るようになっている。土地の主たる楓星だけは出る時だけでなく入る時も自由だが、他の人ではないものですらこの決まりを反することはできない。
    ……というのを、旋葎は勿論知っているが、あまり意識したことはない。そもそも殆ど住まいから出ないからだ。
    何故、と問われても旋葎に明確な答えはない。

    『姿を変える、いいな?』
    「ん」

    旋葎が返事をすると、楓星の姿が溶け大きな鳥に変わる。それでも、本来の半分以下だが。

    『乗れ』
    「……は?」

    楓星が身体を低くして旋葎を促す。
    突然の、初めての申し出に困惑を隠すことができない。

    「お前、どうしたんだ?」

    一度、旋葎は楓星に飛んでみたいと言ったことがある。その時の楓星は心底嫌そうな顔で『そんな式のような真似は死んでもしない』と返してきた。それからは一度も同じことを言ったことはない。

    『……お前にだけは、俺のものを見せても良い』

    そう、昨晩と同じ真剣な声色で楓星は言った。

    「なら、見せてもらおうか。お前の空を」

    その背に乗る。首に腕を回すと、翼を羽ばたかせて空へと舞い上がった。

    「ああ、楓星、綺麗だな」




    ――それから、旋葎は出かけることが増えた。
    伊呂波のように無条件とはいかないが、二人でなら何処へでも行けるようになったからだ。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    墓石の上、二人でダンスを:5「これ、どこ向かってんだ?」

    向かいのリングに問う。造りが良さそうな馬車は、それでも振動がゼロじゃあない。窓から覗く景色は、勿論初めてのものだ。何せまだ、リングの屋敷とその職場の往復しかしたことがない。この国も住んでる奴らも、何もかもが俺にとってはどうでもいいからそれに不満はないが、この後に訪れる二人きりじゃない時間には不安はある。

    「お前の意味不明な要望を多分どうにかしてくれる人のとこだよ」
    「男なら普通だろ」
    「えー……」

    何故かリングにはこの当たり前の欲求が理解できないらしい。そりゃ俺だって今の、リングの横の特等席を与えられてる状態は嫌じゃない。寧ろ嬉しい。だが、声、視線、動作、髪の1本ですら欲しがるようにしておいてそりゃないだろう、といいたいのも事実だ。勿論、俺の口からそんな言葉が出ることはない。この不満の言葉達すら、いつの間にかなんだかこう、リングにとって都合よく――……何か腹に渦巻いていた気がするが、どこかへ行ってしまった。そんなどうでもいいことはともかく、俺の身体が直るってんなら単純に嬉しい。というか、二人でこうして出掛けてるのは、所謂デートってやつなんじゃないだろうか絶対そうだ。俺の欠けた記憶に同じようなものは見当たらないが、そもそも前線に出ていた奴にんな経験がなくても変ではないだろう。色んな国の軍服を着て、色んな国の奴らをぶっ殺していたぶつ切りの記憶ばかりの俺に、マトモに街で暮らした経験は……多分ないんじゃないだろうか。別にそれがどうってわけじゃないが。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    手術的な描写有り・全体的に品はないのでご注意ください。
    墓石の上、二人でダンスを:2切り取ったものを丁寧に繋ぐ。沢山の素材から選りすぐった一番を、まるで最初からそうだったように。自分の身体が自分でなくなくなっていく感覚がするんだと、名前のない死体は言っていたらしい。誰にでもできる手法じゃなく、誰でも受け入れられる事態じゃない。でも俺はできるし、……コイツもまあ、適性があるんだろう。

    「あのさ」

    手を止めることなく、その先へ視線を向ける。俺の下で横たわって、首だけ持ち上げてこちらを見つめる緑の、淀んだ目。瞬きをする必要のないそれは、コイツの身体が生きていない証拠の一つだ。

    「視線がうるさいんだけど。目、閉じて」

    俺の言葉に、眉を顰めつつ目が閉じられる。そのまま首を降ろしたのを確認して、手元に集中する。鎖骨付近から肩にかけて切開し、筋組織を付け足し繋いでいく。欠損を補うわけではなく、ただ足すだけの生者にはやらない行為。やれたとしても……いや、やれる人間なんてこの国でも今は俺しかいない。その手元が気になるのは当然という思いもあるけれど、……普通だったら自分の身体を弄られているところなんて凝視するようなものじゃないだろうに。それ以外でも大体……いや全部コイツの視線はうるさいんだよな。
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