Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    ryuhi_k

    @ryuhi_k

    (・ω・)

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 34

    ryuhi_k

    ☆quiet follow

    べったー掲載「星を呑んだ」シリーズ本編外の一コマ
    肆のエピローグ的な話

    前話「星呑み小話:渡れぬ水が横たわる」→https://poipiku.com/315554/8478175.html
    後話「星呑み小話9」→https://poipiku.com/315554/5431231.html

    ##木星旋回
    ##星呑み

    星呑み小話1『出かけるぞ』

    楓星ふうせいが旅――旋葎せんりの未練を断ち切りに行った――から帰って来た翌日のことだった。
    殆ど眠らせてもらえなかった旋葎の頭は、返事も文句も即座に返せない。今までならば、この間に楓星は苛立っただろう。しかし今日は、大人しく旋葎の返事を待ち続けている。最も、旋葎の頭が働かない原因の癖に、起き上がるための手も貸さないのは、相変わらずであるが。

    「……。……どこに。なにしに」

    ようやく身体を起こした旋葎が、半分目を閉じたままそう返した。

    『別にどこでもいい。とにかく行くぞ』
    「なんだそれ……。だめだ、むり。おまえが……」

    かくん、と傾いた旋葎の身体を楓星が受け止める。
    旋葎の揺蕩う意識が、そこで一気に覚醒する。

    『起きたか』
    「お前……」
    『なんだ、その顔は。あの占い師見るような面だぞ』

    そうもなる、と言いたいのを飲み込む。
    旋葎の身体を受け止めた腕も、その力加減も、向けてくる表情も、随分と「人間らしい」のだから、驚きもする。
    昨晩、お互いの想いを確かにしただけでこうも変わるというのか。

    「……いい、どこに連れて行く気か知らんが、一緒に行ってやる」




    ――楓星と旋葎の住まいは、入り口は一箇所しかない。楓星の領地で一番大きな人里にある社の本殿だ。
    その中には見た目と釣り合わない広大な土地が広がっている。その空間から出る時はどうなるかと言うと、塀の向こうに行けば人里の端に、空へ舞い上がれば人里の真上に出るようになっている。土地の主たる楓星だけは出る時だけでなく入る時も自由だが、他の人ではないものですらこの決まりを反することはできない。
    ……というのを、旋葎は勿論知っているが、あまり意識したことはない。そもそも殆ど住まいから出ないからだ。
    何故、と問われても旋葎に明確な答えはない。

    『姿を変える、いいな?』
    「ん」

    旋葎が返事をすると、楓星の姿が溶け大きな鳥に変わる。それでも、本来の半分以下だが。

    『乗れ』
    「……は?」

    楓星が身体を低くして旋葎を促す。
    突然の、初めての申し出に困惑を隠すことができない。

    「お前、どうしたんだ?」

    一度、旋葎は楓星に飛んでみたいと言ったことがある。その時の楓星は心底嫌そうな顔で『そんな式のような真似は死んでもしない』と返してきた。それからは一度も同じことを言ったことはない。

    『……お前にだけは、俺のものを見せても良い』

    そう、昨晩と同じ真剣な声色で楓星は言った。

    「なら、見せてもらおうか。お前の空を」

    その背に乗る。首に腕を回すと、翼を羽ばたかせて空へと舞い上がった。

    「ああ、楓星、綺麗だな」




    ――それから、旋葎は出かけることが増えた。
    伊呂波のように無条件とはいかないが、二人でなら何処へでも行けるようになったからだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏💖💖❤👏❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    ryuhi_k

    DONE「一人残らないと先に進めないダンジョンって何なんですか?!」シリーズ番外編。
    前回「制限ダンジョン(※制限内容にはパーティ差があります)」直後の話。
    置いてかれF小話:制限ダンジョン(※以下略)攻略後の一幕「ではこれ、報告書です」

    クリスタルが差し出した書類を受け取ったギルドの受付は、その背後を見て眉をひそめた。

    「勝手に増員したんダスか?」
    「ああ、いえ、これはそういう訳ではなく……。ほら、ここの、これ」
    「……あー。アンタらも毎回凄い攻略するダスねえ……」

    クリスタルが指した報告書と背後を見比べて、受付は呆れたような感心したような声を上げた。
    何故受付が眉をひそめたのか、それは冒険者パーティには様々な制限があるからである。制限なく冒険者の自由意志のみでパーティを形成させると、場合によっては国家を凌ぐ武力を持つ可能性がある。それを防ぎ、冒険者という無法者達を統制する為にほぼ全ての国家で運用されているのがギルド規則であった。その一つに、パーティ人数がある。無制限にして軍隊規模にされてはたまったものではない、ということだ。勿論そんな事が出来るのなら冒険者になぞなってはいないのだろうが、予防線は張っておくに越したことはない。自由の象徴のようなイメージのある冒険者であるが、実際はこんなものである。
    3594

    recommended works