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    ryuhi_k

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    ryuhi_k

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    べったー掲載「星を呑んだ」シリーズ本編外の一コマ
    参後の話

    前話「星呑み小話:焼け野原の男」→https://poipiku.com/315554/6943943.html
    後話「星を呑んだ 肆」→https://privatter.net/p/7608823

    ##火星焼夷
    ##星呑み

    星呑み小話:柔らかきもの細く、柔らかなものだと丹星あかほしは感じた。
    そう伝えたところ真顔で「それはない」と返されてしまったが。そのような表現は、女子供に使うものだと。けれども、触れただけで折れて腫れるそれは、他にどうにも表現出来ない。

    焼火やけひ

    己が与えた名前を呼ぶ。少し前までは、呼んでから自分の事だと認識するまでに少し間があった。今も完全には無くなっていない。恐らく奥の奥まで視れば、本来の名前を探し出す事は出来るだろう。だが、それをした所で何があるわけでもない。

    「お早うございます、丹星殿」
    『身体はどうだ?』
    「どこも何も。全部繋がっているのでご安心なされよ」

    此処の所、毎朝しているやり取りだった。
    丹星が今纏っている人の見た目は、焼火の身体を「打ち直した」際に残った使いようのない肉で拵えた上辺だけのものである。鉄のように溶かして叩いて、形を整えただけに過ぎない。生命を奪う方法しか司らない丹星には、無から生き物を作れない。それが出来たならば、あのように焼火に苦しみを与える事もなかった。
    窮屈な肉に詰まっているのは神の力ともなれば、どうしても加減が分からない。焼火に触れる度、骨が折れる音がする有様だ。それでも、殺さないだけ纏う意味がある。

    『……』
    「丹星殿?」
    『……。いや、今はいい。朝餉にしよう』

    言葉を飲み込み、まだ歩行が覚束ない焼火の袖を引く。手首か掌を掴むのが自然だろうとは丹星も思ったが、朝から骨の折れる音がするのも、と止めた。焼火がそれをどう思ったかは分からないが、ゆっくりと廊下を進む。数ヶ月前に客人達を招いた時とは様変わりし、当世の屋敷といって差し支えないものを構えている。実際これで人間が暮らしている様を丹星は見たことはないのだが、中々いい文化を築いたと関心していた。
    自身の存在理由である争いを嫌ってはいないが、眺めるのならばそれ以外が良いと丹星は思っている。今も人間は争いを止めてはくれないが。文化は確実に先へと進んでおり、司る神も今や居ないも同然だというのにどうして止まらないのか、丹星には分からない。

    「毎度思っているのだが……」
    『うん?』
    「一体、誰がこれを? がやっているとは、思えないのだが」

    部屋に用意された膳を見て焼火が呟く。
    畏、虞とは丹星の作った剣と矛である。神の打ったそれが只の武器である筈もなく、其処らのあやかしでは傷もつけられぬ強さを持っている。その代償に、とでも言うように、自律した意志は備えていない。只々命令通りに動き、単語の発話が出来るだけだ。纏わせたのも肉ではなく只の鎧兜である。生き物を作れない己らしい配下だと、丹星は笑うしかない。そんな主と配下を見れば、焼火の疑問も尤もであろう。

    『その辺りは、過去の俺が勤勉だったのが功を奏した』
    「……?」
    『俗に言う、戦利品というやつだな。それで家事は回している。どれも神が作ったものだから、今でも朽ちる事なく動いてくれて助かった』
    「それは、また。……動く所は見ても大丈夫だろうか?」
    『興味があるのか? うん、構わない。夕餉の際は見物するといい』

    そう言葉を交わしつつ二人で膳につく。
    以前の丹星であれば、食事は必要なかった。しかし少量とはいえ肉を纏うとそうもいかない。これも慣れぬ故に、己の舌を食っていたのは一度ではない。

    『味はどうだ? ……いや、聞かずとも分かりきった事だな』

    味に拘りも何もないが、焼火が美味いと言って食ってくれるので、そういうものだと思うことにしている。神の道具は美味いものしか作れないらしく、丹星にはそれ以外の味が分からない。
    肉も、飯も、味も、全てが上辺だけの、人間の真似事だ。その真似すら碌に出来ていないのだが。

    「いやはや、毎日美味いものが食べれるのは良い」
    『そういうものか?』
    「上澄み以外は食うや食わずも多いのが人間。しかも汗水垂らさずとも食えるとなればここはもう……」

    言葉を切った焼火が、不意に顔を歪ませる。

    『焼火、どうした』
    「……どうして、俺は。何も思い出せないのに……。丹星殿、どうして俺にこんな、風に」

    焼火が立ち上がり、丹星の前へ来る。
    そのままぐらり、と倒れてきた身体を丹星は咄嗟に抱えた。ごきり、と太い骨が折れる音がする。

    『焼火』
    「名前も、親の顔も、全て忘れてしまったのに、俺はどうして人間を覚えている」
    『それは』

    人間らしい人間に、神の力なぞ扱えはしない。代償のない力も存在しない。
    触れてしまったばかりに、焼火の人間として当然の温かいものは全て燃えた。残ったのは丹星同様に歪なものだけだ。

    「……貴殿に触れられている時だけ、俺は安心できる。罰が、痛みが、俺がそれでも人間なのだと」

    焼火の腕が、丹星に縋り付く。その指も爪も、丹星の身体に傷も残せない。

    「だが、人間でも俺は罪人だ。貴殿とは、違って」
    『……』
    「永久に罰を受けるべきだ。失ったものを補うべきではない。けれど、貴殿は俺に天上の暮らしを与え、優しくする。人間のように、扱う」

    身体が震えている。泣いているのだろうと丹星は思った。骨肉ではなく、他のものが痛くて泣いている。

    『焼火』
    「……」
    『お前は紛れもなく人間だが……もう、人の身体ではない。ここは人界ではない』

    焼火の身体を治す事は、丹星には出来なかった。鉄のように溶かして、元の形に直しただけだ。しかし、どうにも戻せない、足りないものは他で補うしかなかった。それに用いたのが丹星自身の身体である。曲がりなりにも神自身が混じる事になった焼火は、もう人の範疇を完全に超えた。それでも、こうして泣く焼火は人間のままである。

    「けれども、罪は消えるものではない。そうだろう?」
    『そうだな。だが、俺と永久にいるのは、人から見れば罰だ』
    「そんなことがある筈がない!」

    焼火が叫ぶ。

    『罰だ。お前は痛みで死ぬこともなく、以前のように気違うことも出来ず、人の世が滅び去ろうと全ての終わりまで俺と共に在るのだ。果てには何もない。俺では、何も与えてやれない……』

    焼火はそれ以上何も言わなかった。只その涙が丹星の肩を濡らしていた。
    やはり、細く柔らかいものだと思った。
    不相応な望みであると理解していても、それを守りたいとやはり丹星は思わずにはいられなかった。




    幾ばくかして、丹星は焼火を傷つけず触れることが出来るようになった。
    しかし、それでも稀にわざとそのようにする。
    その痛みが、細く柔らかいものを守るのだと思って。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    墓石の上、二人でダンスを:5「これ、どこ向かってんだ?」

    向かいのリングに問う。造りが良さそうな馬車は、それでも振動がゼロじゃあない。窓から覗く景色は、勿論初めてのものだ。何せまだ、リングの屋敷とその職場の往復しかしたことがない。この国も住んでる奴らも、何もかもが俺にとってはどうでもいいからそれに不満はないが、この後に訪れる二人きりじゃない時間には不安はある。

    「お前の意味不明な要望を多分どうにかしてくれる人のとこだよ」
    「男なら普通だろ」
    「えー……」

    何故かリングにはこの当たり前の欲求が理解できないらしい。そりゃ俺だって今の、リングの横の特等席を与えられてる状態は嫌じゃない。寧ろ嬉しい。だが、声、視線、動作、髪の1本ですら欲しがるようにしておいてそりゃないだろう、といいたいのも事実だ。勿論、俺の口からそんな言葉が出ることはない。この不満の言葉達すら、いつの間にかなんだかこう、リングにとって都合よく――……何か腹に渦巻いていた気がするが、どこかへ行ってしまった。そんなどうでもいいことはともかく、俺の身体が直るってんなら単純に嬉しい。というか、二人でこうして出掛けてるのは、所謂デートってやつなんじゃないだろうか絶対そうだ。俺の欠けた記憶に同じようなものは見当たらないが、そもそも前線に出ていた奴にんな経験がなくても変ではないだろう。色んな国の軍服を着て、色んな国の奴らをぶっ殺していたぶつ切りの記憶ばかりの俺に、マトモに街で暮らした経験は……多分ないんじゃないだろうか。別にそれがどうってわけじゃないが。
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    ryuhi_k

    DONEアンデッド骨×ネクロマンサー輪な擬人化パラレル。
    手術的な描写有り・全体的に品はないのでご注意ください。
    墓石の上、二人でダンスを:2切り取ったものを丁寧に繋ぐ。沢山の素材から選りすぐった一番を、まるで最初からそうだったように。自分の身体が自分でなくなくなっていく感覚がするんだと、名前のない死体は言っていたらしい。誰にでもできる手法じゃなく、誰でも受け入れられる事態じゃない。でも俺はできるし、……コイツもまあ、適性があるんだろう。

    「あのさ」

    手を止めることなく、その先へ視線を向ける。俺の下で横たわって、首だけ持ち上げてこちらを見つめる緑の、淀んだ目。瞬きをする必要のないそれは、コイツの身体が生きていない証拠の一つだ。

    「視線がうるさいんだけど。目、閉じて」

    俺の言葉に、眉を顰めつつ目が閉じられる。そのまま首を降ろしたのを確認して、手元に集中する。鎖骨付近から肩にかけて切開し、筋組織を付け足し繋いでいく。欠損を補うわけではなく、ただ足すだけの生者にはやらない行為。やれたとしても……いや、やれる人間なんてこの国でも今は俺しかいない。その手元が気になるのは当然という思いもあるけれど、……普通だったら自分の身体を弄られているところなんて凝視するようなものじゃないだろうに。それ以外でも大体……いや全部コイツの視線はうるさいんだよな。
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