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    Hachiinoki

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    推しの命日というハロウィンをなんとか自分なりに消化しようとしたけどできなかったもの。こないだ渋谷行ったら余計に消化できなくなった…今年のハロウィンも1日中泣いてるかもしれない

    #七伊
    sevenI

    repainting the night「私と憂憂くんで、ですか?」
    「はい…、お願いできますでしょうか?」
    「憂憂くんと親子、または兄弟の設定で潜入するのであれば…私ではなく、どうして冥さんにお願いしないのですか?まさか、冥さんに内緒で憂憂くんを派遣するつもりですか?」
    「いえいえ!とんでもない!あの…そのぉ…、どうしても今回の調査任務に子どもの呪術師が必要で、憂憂くんの派遣をお願いしたいと冥さんにお伝えしましたところ…、かなり足元見られてしまいまして…ずいぶんな額を吹っかけられてしまって…」
    だから冥さんまで派遣要請する予算がありませんで…とハンカチで冷や汗を拭きながら、眉を八の字に曲げて歯切れも悪く伊地知は言った。

    事の発端は、とある宗教団体がハロウィンの日にお菓子を配ると大々的に宣伝を打ったことから始まる。
    子ども同士、または親子連れで来場すれば、もれなく無料でお菓子を配ると。それも、駄菓子のようなものではなく、かなり豪華な内容のお菓子セットをプレゼントすると銘打っているのだ。
    高専の見立てでは、この団体は、表面上はキリスト教系の宗教団体を装っているが、中身は得体の知れない良くない連中の集まりで、ひょっとすると呪詛師と繋がっている可能性も考えられた。ハロウィンのお菓子に釣られてやって来た親子連れに、一体何をしようと企んでいるのか、もし危害を加えるつもりであれば阻止しなければならないとのことで、しかし、中に入れるのは子ども、もしくは子ども連れだけ。ただでさえ絶対数が少ない呪術師の中で、さらに、ハロウィンのお菓子をもらいに行っても不自然でない年齢の「子ども」となると、高専の生徒ではさすがに年齢が合わない。そこで白羽の矢が立ったのが憂憂なのであるが、金にシビアな冥冥が、憂憂の派遣にかなり高額な費用負担を強いてきたので、困り果てた伊地知が七海に泣きついた…というのが現在のところである。
    「呪詛師と繋がっているかもしれない、怪しい団体…ですか」
    「はい、目的も意図も、今のところ不明です」
    「それは…こちらにもかなりの危険が伴う調査任務ですねぇ」
    七海は片手でサングラスをかけ直し、考え込むように腕を組んだ。
    「ええ、ですのでここは一級以上の呪術師の派遣が必要だと判断いたしました」
    伊地知が、タブレット端末片手に、真剣な表情でそう伝えると、七海は、組んでいた腕をほどいて顎に手をあてると、
    「なるほど。では私も、その任務を請け負うためには、相応な危険手当を要求しますね」
    と不敵な笑みを浮かべた。
    「えっ?危険手当…ですか?それは…おいくらほど…?」
    「お金ではありません」
    「えっ?では…何を?」
    「………、君です、伊地知くん」
    「えっ?私?」
    「ええ。この任務に使える予算も残り少ない中、わざわざ伊地知くんから直々に、私に依頼をしてきたということは、それなりに、自分自身で対価を支払うつもりがある、ということではないのですか?」
    「そっ…それは…」
    伊地知は下を向いて目をそらした。
    七海の言うことは、実は図星だった。
    伊地知はわかっているのだ。このひとつ歳上の先輩呪術師が、自分に対して恋慕の情を抱いていることを。そして近頃はもはやそれを隠そうともせず堂々とアピールをし、ともすれば伊地知に、自分と相愛関係になるようたびたびせまっていることも。

    伊地知はみぞおち辺りがキリキリと痛んでくる感覚を覚えた。口の中がなんだか苦い。その苦味をゴクリと飲み下して、
    「わわわ私はっ!いっ、一体なにをすればよろしいので?!」
    と半泣きになりながら、痛むお腹を庇うようにタブレット端末を両手でぎゅうっと身体の前で握りしめて、そう七海に問うた。その様子を見た七海は、一瞬目を見開いたあと、口を押さえて肩を震わせて笑い出した。
    「ぶっ、くっくっくっ…、い、伊地知…くん…ふはっ、君は…ははっ、相変わらず、人が…良すぎます」
    堪えきれない笑いをところどころもらしつつ、七海は
    「はぁ、まったく、君は…。自分がかわいくお願いすれば、私がいいですよと言ってくれると思ったんでしょう?」
    「は、はい…すみません…。かわいいかどうかは知りませんが…七海さんのことだからきっと…助けてくださるんじゃないかと…」
    「なるほど。それは間違ってはいません。君にお願いされたら、私にできることならなんなりとしてあげたいという気持ちは確かにあります」
    七海は、一通り笑い収めてから、「ただ…」と真顔になると、
    「私も男ですから、下心がないわけではありません。はっきり言えば、君のお願いを聞く代わりに、君からの見返りが欲しい」
    「見返り…ですか」
    伊地知は、片手でもう一度ハンカチを取り出して、額に浮かぶ汗を拭き、ふぅと小さく息を吐いた。
    「七海さんが望むもので、私が差し出せるものがあるなら、それこそ、なんなりと…」
    「殊勝な心がけです。これで言質はとりましたからね」
    七海はうっそりと笑った。

    ハロウィン当日、ピカチュウの仮装をした憂憂を連れて、伊地知はくだんの宗教法人の建物の前にやってきた。辺りにはすでに、仮装をした多くの親子連れが集まっていた。
    「ちょっと!なんなの?この格好!だっさ!」
    「お願いしますよぉ、憂くん。なにせ今回は憂くんがメインなんですから〜!」
    地面に額をこすりつけんばかりの勢いで伊地知が頭を下げ、
    「ピカチュウはダメでした?スーパーマリオの方が良かったですか?それともスパイダーマン?」
    「どれもいらんわ!」
    ぷりぷり怒る憂憂をなんとかなだめすかして、伊地知はキョロキョロと辺りを見回して七海の姿を探した。
    「おかしいな…?七海さん、どうなさったんだろ?」
    すると憂憂が、チョンチョンと伊地知のスーツの裾を引っ張って、
    「あれじゃない?」
    と指さした。
    そこには、衆人環視のもと、一際みんなの注目を集めている、見目麗しい金髪長身のドラキュラ伯爵が立っていた。
    「んなっ!?ななななななななっ、み、さ…」
    驚きのあまり「な」を連発する伊地知をよそに、ゆったりとした動作でこちらに近づいてきた七海は、
    「どうですか?それらしく見えますか?」
    とふたりに問いかけてきた。
    「な、七海さん、衣装代は経費で落ちませんけど、大丈夫ですか?」
    「ご心配なく伊地知くん。憂くん、どうですか?」
    「似合いすぎて正直ちょっと引いてます」
    とピカチュウがジト目で言うと、
    「君もなかなか、かわいらしいですよ、憂くん」
    と笑顔で七海が返し、
    「で、伊地知くんは?どうして何も仮装してないんですか?」
    と不満の声をもらした。
    「えっ?私?私は…だって…、中に入りませんから…仮装する必要ありませんし…」
    「なんかさぁ、僕たちだけにこんな恥ずかしい格好させて、補助監督だけはいつも通りのスーツって、ずるい。不公平だ」
    頬っぺをふくらませて憂憂が言うと、七海も、
    「私もまったく同じことを思いました。気が合いますね、憂くん。今回の任務もうまくやっていけそうです」
    と憂憂に向かって声をかけてから、くるりと伊地知の方に向き直ると、ビシッと人差し指を立てて言った。
    「というわけで伊地知くん、我々が戻ってくるまでの間に、何か衣装を用意して、仮装しておいてください。さ、行きますよ、憂くん」
    バサッと黒いコウモリマントを翻して、ドラキュラ七海伯爵は、ピカチュウを連れて建物の中へと消えて行った。

    残された伊地知の顔は青ざめていた。
    (仮装?仮装ってなんだ?えっと…)
    「とととと、とりあえずドン〇ホーテ行かなきゃ!」
    と、ピカチュウの衣装をそこで買ったことを思い出し、慌てて駆け出して行った。

    一方その頃、建物内に潜入した七海と憂憂は、
    「ん?これは…?」
    「おそらく、ここで呪いが視認出来るかどうか選別するのでしょう」
    長い廊下をぞろぞろ歩いていくと『順路→』と書かれた道の途中で、低級の呪霊が壁の上から覗いているのが視えていた。その呪霊を視ることができない子どもは、なんの恐れも抱かずそのまま進んで行くが、視えてしまう子どもは恐れてそこで立ちすくんでしまっていた。そのタイミングで、どこからともなく、『出口→』と書かれた横道にそれるルートが現れた。
    「どうするの?二手に分かれる?」
    「いえ。私は大人で君は子ども。大人は子どもを守る義務があります。君を一人にはできません」
    「じゃあ、こっち?」
    「あちらとしては、視えない子どもには用は無いはず。呪いが視認できる子どもを選別して、誘拐でもするつもりか、飼い慣らして呪詛師にでもするつもりか…。ここはやはり、視えるほうのルートを進みましょう。念の為、外の伊地知くんに経緯を連絡しておきます」
    七海が伊地知に連絡している間に、海賊に扮した男の子を連れた母親がやって来た。母親が、「こっちよ」と、皆が進んでいく道を指し示しているのに、男の子は「怖いよ〜」と半べそかきながら拒んだ。彼にはおそらく視えているのだろう。七海はその子と母親に声をかけた。
    「うちの子も、これ以上進むのは怖いと言ってましてね。もしよろしければ一緒に出口に向かいませんか?お菓子は出口で、職員のかたに頼んでみましよう」
    先ほどからずっとここで立ちすくんだままのシンデレラの仮装した女の子の親子連れにも同じように声をかけ、男の子と母親、女の子とその両親を連れて、七海は出口と書かれているほうの廊下を進んで行った。
    出口とおぼしき扉が見えてきたところで、いきなり天井からずるりと、粘度の高い液体が落ちてきて、黒いもごもごとした巨大な物体が行く手を阻んだ。
    「憂くん!皆さんを頼みます!」
    七海が叫ぶが早いか、憂憂がシン・陰流の簡易領域を発動し、七海以外の人たちをその中に収めて守った。七海は黒いコウモリマントの下から鉈を取り出し構えると、対象となる黒い物体をその特徴的なサングラス越しに睨んで、7:3の割合になるようアタリをつけた。今まさにその位置で鉈を振り下ろそうとした時、憂憂が、
    「七海一級術師!後ろ!」
    と叫んだ。その声に振り返ると、オレンジ色に発光する丸い物体が七海目がけて飛んで来ようとしているところだった。腰を屈んでそれを避けながら下から上へ鉈を振り上げつつ、払い腰の要領で打ち込んで、オレンジ色の球体を投げ飛ばした。
    「さすが!」
    と憂憂が手を叩いたのを横目で視界に入れながら、身体を捻った状態から元の体勢に戻るための反動を使って前に立ちはだかっている黒い物体に向かって呪力を集中させ、そのままの勢いで袈裟懸けに斬り捨てた。辺りを切り裂く叫び声とともに黒い物体が四散し、粘度の高い液体があちこちに飛び散った。息つく間もなく、先ほど投げ飛ばしたオレンジの球体が、再び七海に襲いかかろうとしていた。七海は、今度は壁に足を蹴りあげて横飛びすると、天井近くまで高く飛び上がり、オレンジの球体の真上に乗り上げた。そのまま真下に向かって鉈を振り下ろすと、オレンジの球体はさらに明るく発光しみるみるうちに膨張し始めた。その様子を見て七海は、すばやくその場を離れ、憂憂たちの元に走り寄った。盾になって守るつもりが、あっという間に憂憂の簡易領域の中に引き込まれ、七海が領域に入った直後に、地鳴りとともに爆発が起き、空気が激しく振動して、その場の空間ごと全体が大きく横揺れを起こした。
    「憂くん、ありがとう。君の迅速な判断のお陰で巻き込まれずに済みました」
    「どうしたしまして」
    爆風とともに舞い上がった瓦礫や塵芥がおさまり、音が静かになったところで、立ち込めていた霧のようなものが晴れ、外で伊地知が下ろした帳が見えてきた。先ほどまで建物の中にいたはずが、野外のような場所に立っていて、七海たち以外には人の姿は無かった。
    「大丈夫ですかっ?」
    慌てたように、中途半端に包帯をあちこちグルグル巻きにした、ミイラ男もどきが駆け寄ってきた。
    「伊地知くん、その格好は?」
    「すみません、仮装する衣装が意外と高くて、包帯しか買えませんでした…」
    よほど今回の任務にかかる費用を節約したいのか、伊地知はそんなことを言って力なく笑った。それよりもと気を取り直すと、伊地知はすぐに優秀な補助監督の顔に戻り、
    「他の人の避難はすでに完了していますし、七海さんから連絡をいただいた時点で帳もおろしてあります。おや?そちらの方々は…?」
    「中で出会った方です。あの女の子と男の子は呪いが視認できるようです」
    「わかりました。私の方からご両親にご説明します」

    伊地知が説明している間に、七海は憂憂に声をかけた。
    「憂くん、今日はどうもお疲れ様でした。あとの処理は私と伊地知くんでやっておきますから、早く家に帰ってゆっくり休んでください」
    「七海一級術師も、お疲れ様でした。呪霊と戦うドラキュラ伯爵、カッコよかったですよ」
    憂憂が、七海に向かってグッと親指を立てた。
    いつの間にか、静かに黒塗りの高級外車が横付けされ、スっと運転手が降りてきて後部座席のドアを開けると、そこには冥冥の姿があった。
    「迎えに来たよ憂憂」
    「姉さま!」
    パアッと憂憂の顔が明るくなり、いそいそと車に乗り込んで行った。去り際に冥冥が、
    「あ、そうだ、七海くん。これを、あのみすぼらしい中途半端なミイラに渡してくれないか?」
    と言って紙袋を七海に渡した。
    「これは…?」
    「憂憂が世話になったね。君へのお礼だよ」
    と、くくくっと冥冥は意味深に笑った。

    冥冥と憂憂を乗せた車が走り去ると同時に、説明を終えた伊地知がこちらに戻ってきた。
    「お待たせしました。あれ?憂くんは…?」
    「冥さんが迎えに来て、帰りましたよ」
    「そうですか。それでは我々も帰りましょうか」
    「伊地知くん、せっかくだから少し、寄り道しませんか?」
    そう言って七海は、人々が思い思いに仮装をして、今日のハロウィンイベントを楽しんでいる繁華街を、伊地知の手を引いて歩き始めた。
    「なっ、七海さん、ててて手っ…!」
    顔を赤らめて焦る伊地知に、七海は
    「せっかくのお祭り騒ぎなんですから、このくらいは許されるでしょう?まぁ、ドラキュラとミイラ男じゃ色気もへったくれもないですけど…」
    ハハハっと笑った七海の顔は、その衣装と相まって、非常にさまになっていた。ドキッとして伊地知は、その七海の笑顔に見惚れた。
    「実は、子どもの頃、このハロウィンという日がとても嫌いで…、今でも苦手なんですよ」
    「えっ?そうなんですか?」
    「昔はまだハロウィンがたいして浸透してなくて、でもそういう情報だけは耳に入ってきていて、なにせこの顔立ちですから、お前、トリックオアトリートって言ってみろよとか、仮装してこいよとか、クラスのいじめっ子にからかわれたり絡まれたりして…」
    「あぁ、なんだか想像つきます」
    「それに、ケルト文化ではこの日は死者の魂が帰ってくる日で、そのせいか呪霊も、いつもより多く現れて…。今日保護した子どもたちを見て、自分の子どもの頃の嫌な記憶を思い出して…。それに、今日払った呪霊、オレンジ色で丸くて、まるで巨大なジャック・オー・ランタンのようでした…」
    「そうだったんですね…」
    その外国人然とした風貌のせいでハロウィンと結びつられて嫌な思いをしたという七海の話はさもありなんという感じだったし、伊地知は自分も子どもの頃、他の人には視えない呪霊が視えてしまうことで苦労した経験が多々あったので、七海の話を聞いて我が事のように胸が痛んだ。
    「わかりました、七海さん!」
    急に大きな声で言った伊地知に、七海は面食らってしまった。
    「どうしました?伊地知くん」
    「ハロウィンの思い出を、辛い記憶から楽しい記憶に塗り替えましょう!」
    「は?」
    「ですから、今から、今日という日をうんと楽しんで、ハロウィンは楽しい日だった!って思えるようにしましょうよ。私で良ければお付き合いします!」
    両手で握りこぶしを作って気合を入れてそう言った伊地知の顔を、七海はまじまじと見てから、ぷっと噴き出した。
    「本当に…君は…、人が良すぎますよ」

    七海は、冥冥から伊地知にプレゼントされたものがあると言って自宅に伊地知を招き入れると、
    「冥さんから、君に渡すよう言われて預かったものです。これに着替えてください」
    と冥冥が置いて行った紙袋を伊地知に手渡した。紙袋の中身は、実は、伊地知に着せるハロウィンの衣装だったのだ。

    「これ…、私なんかが着て、大丈夫なんでしょうか…?」
    ところどころがシースルーになっている黒いマーメイドスカートのワンピースに、猫耳カチューシャを付けた伊地知は、鏡の前で赤面した。
    「さすが冥さん、センスが良いですね」
    と七海は一心に、スマホ片手にカシャカシャと何枚も伊地知を撮影した。
    「えっ?ちょっと!撮らないでくださいよ!」
    「私が見返りが欲しいと言ったら、なんなりと差し出すと言いましたよね?写真ぐらいいいじゃないですか」
    見返りという言葉を思い出して、ますます伊地知は赤面した。
    「う〜ん、でもやっぱり…、ダメですね」
    眉間に皺を寄せて難しい顔で七海は言った。
    「ですよね〜、やっぱり私じゃダメですよね…似合ってないですよね…」
    「いいえ、大変よく似合っています。とてもセクシーで良いのですが…、私以外の人間がこんなあられもない伊地知くんの姿を見るのは、絶対ダメです!」
    そう言うと、七海の彫刻のように整った顔が近づいてきて、あっという間に伊地知の唇を奪ったかと思うと、スっと離れていった。
    キスされたことに気づいて伊地知は慌てた。
    「んなっ?!なななな、七海さん?!」
    「伊地知くん…、本当に君は、人が良いにも程がありますよ。君に懸想している男の自宅に、のこのことついてきてはいけません」
    七海は伊地知に、口ではそう注意しながら、目は獲物を狙う肉食獣のように熱がこもっていた。
    「でも、ありがとうございます。お陰でたった今、ハロウィンは君と初めてキスをした思い出の日になりました」
    「七海さん…」
    七海の言葉を聞いて一瞬ハッとした伊地知は、少しだけ考えたあと、両手で七海の顔を挟むと、今度は自分から顔を近づけていった。
    ちゅ…と触れ合うだけのキスのあと、閉じている七海の唇を、伊地知の舌がちろ…と遠慮がち舐め、その動きに気づいた七海が、伊地知の舌を自分の口内に迎え入れた。
    「ぅん…んッ」
    くちゅくちゅと互いの舌と舌を絡めあってから、ごくんと溢れる唾液を飲み下し、そのまま銀糸を引きながら離れると、伊地知はふふっと笑って、
    「これで、キスだけじゃなくて、初めてディープキスした日、にもなりましたね」
    と言った。
    「伊地知くん…」
    七海が目を細めて伊地知の頭をするすると撫でた。
    「本当に君は…人が良すぎます。でも、君のそんなところが…たまらなく好きです」
    慈しむようにぎゅうっと抱きしめられて、伊地知は困ったような顔で七海に告げた。
    「ほんとに…私なんかで、いいのでしょうか?こんな幸せを味わって…夢みたいです」
    七海の胸にぐりぐりと顔を押し付けてから、上目遣いに見上げると、七海はふふっと微笑み、
    「君がいいんです、伊地知くん。これから何度でも、君と一緒に塗り替えさせてください、ハロウィンの日の記憶を。今年だけじゃなく、来年も再来年も…」
    そう言って再びキスをしてから
    「楽しい夜にしましょうね」
    と伊地知の耳元で囁いたので、顔を赤らめた伊地知はこくんと頷いた。



    「はぁ…んむぅ…んぅ…」
    伊地知が息をしようと口を開けるともっと深くに七海の舌が入りこんできて、上顎の柔らかな粘膜をれろれろと舌先で舐められ、鼻から艶めいた声が漏れ出てしまった。
    「はぁ…七みっ、さん…」
    さらにキスを深めながら、七海の手が、伊地知の身体のあちこちを這い回り、いつもと違い、身体にピッタリとフィットした細身のワンピースのせいで、七海の手の動きと感触がよりダイレクトに伝わってきて、
    「伊地知くん」


    無理やり七海の舌が伊地知の口内に侵入してきて、奥で縮こまっていた伊地知の舌を絡めとって強く吸った。


    身体を壁に押し付けられているせいで身動きがとれず、七海から受ける舌と手による愛撫に、伊地知はただただ身を任せるしかなかった。
    「あっ♡…はっ…、ん〜〜♡だっ、め…アッ!そンなとこぉ…♡」
    いつの間にかワンピースの裾は捲られて、七海の手が、伊地知の中心でゆるゆると勃ち上がっているモノを扱いた。
    「ひゃん♡あぅ…っん〜♡あっ!あっ!」
    初めて他人からもたらされる快感に、伊地知は為す術なく喘いだ。

    (書きかけなのでここまで…しかない…涙)
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    💴💴💴💴💴
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