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    転生五伊七を書きたかった…。シリアスからの幸せにしたかったのにシリアスでメンタルがクラッシュ…。いつか書き直したい…。下書きだし誤字あるしめちゃめちゃだよ…いつか、いつか…。

    #七伊
    sevenI
    #五伊七
    fiveI7
    #五伊地
    goiji

    転生五伊七になるはずだったもの 伊地知の初恋は学生時代に遡る。
     陽の光を浴びてキラキラと輝く金色の髪。目鼻立ちのくっきりとした造形に宝石のように美しい翡翠の瞳。優しく響く低音にこんなに完璧な人がこの世にいるのかと驚いたものだ。
     そんな彼と伊地知が交際することになったのは数年後、彼が呪術師として舞い戻って来たことが切っ掛けだった。驚くべきことに学生の頃から好意を持っていたと打ち明ける彼に伊地知は一も二もなく頷いた。
    「伊地知くん」
     彼に名を呼ばれるのが大好きだった伊地知はすべてを彼に捧げた。そして彼も伊地知になんでも与えてくれた。初めてはすべて彼だった。
    「伊地知くん」
     微笑む彼に、この幸せがずっと続けばいいと伊地知は心から願っていた。

     彼から好意を告げられたのは、大切な人を失って何年か過ぎた頃だった。
     新雪のように真っ白な髪に、不思議な輝きを放つ蒼い瞳。繊細な容姿と違って理不尽が服を着て歩いているような彼とは長い付き合いだったが自分に好意を抱いているとは夢にも思わなかった。
     それでも伊地知は断った。自分には大切な人がいるからと。だが彼はそれでもいいと笑って言った。
    「僕が伊地知を勝手に好きなだけだからいいでしょ」
     見返りなんて求めないのだと言う彼は、言葉通り何年も何十年も伊地知に愛を囁き続けた。そんな彼に絆されて伊地知が折れる形で二人は恋人になったのだ。
     それでも伊地知は彼を愛したし、大切な人への想いも忘れることはなかった。それこそ命が尽きるその瞬間まで。

     そして今、伊地知の目の前にはすべてを捧げた初恋の人と、自身を愛し続けてくれた人が立っている。
     七海建人と、五条悟。伊地知を愛してくれた二人を、伊地知もまた心から愛していた。二人が生きて健やかであるだけで、伊地知はもう何もいらなかった。






    「伊地知!」
     背後から掛けられた声に振り返ると、そこには会社の同期がいた。
    「この後同期で集まって飲み会するんだけどさ、伊地知もどう?」
     手でお猪口を傾けるような些か古いジェスチャーをして楽しそうに笑う彼は会社でも人気のお調子者だ。
    「うーん、書類終われば行こうかなぁ」
    「手伝う手伝う! 折角だしみんなで行きたいじゃん!」
     ニッコリ笑う彼は本当にいい人で、伊地知もついつい気が緩む。そんな彼に頷いて了承しこれは早く仕事を終わらせないとな、と残りの仕事を頭に思い浮かべる。
    (うん、これくらいなら大丈夫かな)
     嬉しそうに立ち去る同期に手を振りながら伊地知もまた楽しみで笑みが零れた。
     伊地知が務める会社は大手、という程ではないがそこそこ名の知れた文具メーカーだ。伊地知はそこで営業を担当している。“以前”の知り合いが聞けばイメージと違うと驚かれるかも知れないが、難しい人間ばかりだったあの頃に比べれば誰でも可愛いもので案外上手くやっていた。
     今日やらなければいけない仕事なんて新人に渡すマニュアルのチェックと修正くらいでそこまで時間はかからない。久しぶりの飲み会にウキウキと弾むような気持ちで伊地知は自分のデスクに向かった。
     そして無事に退勤時間を迎えた伊地知は、同期数人と一緒にビルを出た。そこには金色の髪、紺にストライプのスーツを着た七海が立っていた。金色の髪は街灯の光を受けキラキラと輝き、以前と違いサングラスをつけておらず美しい顔を惜しげもなく晒している。通行人からちらちらと視線を送られる七海はただ真っ直ぐに伊地知を見つめていた。
    「え、誰あの外国人……?」
     伊地知の同期達もその存在に気付きソワソワと落ち着きがなくなっていた。だというのにズンズンと近付いてくる七海に伊地知の頭がズキンと痛む。
    「伊地知くん、少しだけ時間をください」
    「……今日は先約がありますので、また後日」
    「そんな事を言って、連絡先も教えてくれないじゃないですか!」
     ぐっと拳を握り表情を険しくする七海に辺りの空気がピリッと張り詰める。同僚達も息を飲んだのに気付き伊地知は溜息をついた。仕方なく同僚達には先に店に行くように伝えこの場を去って貰う。
    「七海さん、突然来られても困ります。今後は控えてください」
    「なら連絡先を教えて下さい」
    「嫌です」
     このやり取りも何回目だろうか。
     伊地知には前世の記憶がある。呪霊と呼ばれるものと戦う術師を支える補助監督という仕事についていた伊地知には恋人が二人いた。その一人が目の前の七海だ。
     誤解のないように言えば、伊地知は別に浮気をしていたとかではない。恋人だった七海が仕事で命を落とし、その後他の人と付き合ったに過ぎない。
     そしてどんな因果か、二人の恋人も前世の記憶を持ってこの世に生を受けた。
    「何度も言いますが、私達が恋人だったのは前世の話です。もう私達は終わったんです」
    「私は終わりたくない! どうしてそんなことを言うんです!」
     悲しそうな顔をする七海に伊地知の心は揺れ動く。でも脳裏に違う男の姿がちらついてそっと目をそらす。
    「やめてください、迷惑です!」
     そう言って睨みその場を立ち去れば七海は追いかけて来なかった。

     同僚たちとの飲み会も終え漸く家路についた。同僚たちは七海とはどういう関係なのか色々聞いてきたが伊地知の複雑そうな表情にすぐに追求をやめてくれた。それがどれ程有り難かったか。だが伊地知の気持ちは晴れず飲み会を心から楽しめなかった。
    「よっ!」
     そんな憂鬱な気持ちのままなんとぼんやりと歩いていると、一部屋借りているマンションの自動ドアの前でしゃがみ込む黒ずくめの男がいた。
    「何してるんですか、五条さん……」
    「伊地知に会いに♡」
     あざとく首を傾げた五条に伊地知はくらりと目眩がした。一日で過去の恋人二人と会うとは今日はとことんついていない。
    「……そんなところで座ってたら通報されますよ。早く帰ってください」
     冷たく言い放ち五条の脇を通り過ぎオートロックを解除する伊地知に五条は特にアクションを起こさなかった。それがなんだか余計不気味だった。開いた自動ドアをくぐったところで漸く五条が口を開いた。
    「あんなに七海を恋しがってたのに、なんで付き合ってやんないの?」
     ピタリと伊地知の足が止まったのを見て、五条が笑い声をあげる。立ち止まる伊地知にセンサーが反応して一向にガラスの扉は閉まらない。
    「な、ずっと七海七海言ってたじゃん。なんで?」
    「……関係ないでしょう、五条さんには」
     なんとか絞り出した言葉は掠れて動揺が隠せていない。
    「んー? 七海が死んでから、僕がお前を口説くのに何十年掛かったと思ってんの?」
    「それは……!」
     五条の言葉にピクリと反応して言葉を返そうとしたが、きらきら不思議に光る蒼い目に言うだけ無駄だと声を落とす。
    「……全部過去のことですよ」
     動け動け、何度も唱え漸く動いた足で伊地知は一歩を踏み出した。そのままマンションの奥へ引っ込もうとする伊地知に、今度は五条が笑いながら声を投げ掛けた。
    「お前の好きって、結局その程度なんだ」
     その一言が伊地知の胸にぐさりと突き刺さった。
    「なんで五条さんにそんなこと言われないといけないんですか……!」
     だがバッと振り返った先に五条はもういなかった。ムシャクシャとした気持ちだけがそこに残されて唇を噛む。
     その程度。その程度?そんな訳ないだろうと言い返せなかったのがただただ悔しい。
    「私が、どんな気持ちで……」
     ポツリと零したその言葉は誰に聞かれることなく空気に溶けて消えた。 






     目を覚ました時広がっていたのは見慣れない天井。暫くの間、伊地知は自分がどうして知らない場所で寝ているか分からなかった。
    「伊地知?目が冷めたか?」
    「い、えいりさ……うっ」
     ひょこりと視界に入ってきた家入に驚いた伊地知が体を起こそうとした時、ズキリと鋭い痛みが襲いかかった。
    「治療はしたが完治したわけじゃない。無理はするな」
     普段通り硬い表情筋だがどこか心配そうな家入に、伊地知は漸く状況を理解した。確か伊地知は渋谷で仕事をしていた。
    「そうでした……確か呪詛師に後ろから刺されて……」
     咄嗟に呪力で体を覆ったがそれが上手く行ったらしい。
    「発見されたのも早かったんですね、運が良かった」
     ほっと息をつく伊地知に家入はどこか複雑そうな表情だった。ざわりと伊地知の胸が嫌な予感に騒ぐ。
    「……渋谷で、なにがあったんですか」
    「……今は体に障る」
     家入の言葉にドクドクと心臓が脈を打つ。知らず呼吸も乱れ体が震える。
    「教えて下さい。何が、あったんですか」
     先程より語気を強めれば家入の顔は一瞬悲しそうに歪み、またいつものポーカーフェイスに戻る。否、戻ろうと努力をしているが感情が隠せていない。
    「落ち着いて聞けよ」
     家入の形の良い唇が開き美しい声で言葉を紡ぐ。伊地知は自分のうるさい心音も聞こえずにまるで世界にその音しか存在しないような気がした。

    「七海が死んだ」

     いつの間にか、伊地知は泣き叫んでいた。自分の叫び声が聞こえるのに自分のものとはどうしても思えない。まるで感情移入の出来ない映画を観ているようだった。
     ああ、死んだのか。あっさりとその事実が脳をぐるぐると周り家入に迷惑がかかっていると冷静に考えられるのに、体は伊地知の意思に反して泣き続ける。
    「伊地知……! 頼む、やめてくれ! 傷が開いてしまう……!」
     暴れる伊地知を必死に押さえ悲痛な声で珍しく大声を出す家入に申し訳無さが募る。取り乱して迷惑をかけて、本当なら早々に仕事に戻らねばならぬというのに。
    「あ、あああ、あああああ……! 家入先輩、何故私を助けたんですか……!」
     その言葉に家入の細い方がぎくりと震える。やめろやめろ、脳内で理性が騒ぐ。それ以上を口に出してはいけないと。だがもうどうしたって止まらなかった。
    「どうして、一緒に死なせてくれないの……」
     その言葉を最後に、伊地知の意識は再び暗闇の中に沈んでいった。静かに涙を流す家入の顔を見つめながら。


     次に目が覚めた時、もう涙は出なかった。あんなに言うことを聞かなかった体も全て伊地知の思ったように動いてほっと息をつく。
     伊地知はその足で真っ先に家入に謝罪した。混乱していたなど言い訳にもならない。人を助ける家入に、何があっても絶対に口にしてはいけない言葉を浴びせてしまったのだから。
     すみませんでした、と深く深く頭を下げる伊地知に家入は「気にするな」とただ一言。だが美しい顔には普段よりも濃い隈に少し痩せたのかやつれていた。
     家入の同級生
    「よし、死亡者リストはこんなものかな」
     生存者のリストの作成は簡単に終わったが、死亡者リストは難航を極めた。
     生者は返事ができるが死者はできない。術師であれば派遣されていた中から生き残りを除けば大体の死者の数が分かる。問題は一般人だ。渋谷という人の多い地区には観光として訪れている者もいるため特定に時間が掛かる。更に今回は遺体が残っていない場合も多かった。それが漸く気の遠くなるような時間を費やして終りを迎えたのだ。
    「ん~~~〜!」
     凝り固まった体をぐっと伸ばせばゴキゴキと骨が鳴る。節々は痛むが仕事を終えた開放感は中々心地良い。
     デスクの上に置かれた複数の紙の束。伊地知は術者のリストを手にとってパラパラとページを捲る。な行のページで見つけた恋人の名前を指でなぞる。
    「七海さん」
     七海の残った体の一部は荼毘に付され、とうの昔に遺族の元へと帰った。葬儀へは参列していない。仕事が忙しかったのもあるが、家族だけで静かに送りたいのだという遺族側の願いがあった。恋人とはいえ遺族にとって赤の他人である伊地知には参列する権利などなかった。
     生前七海が住んでいたマンションも遺族が遺品の整理をして早々に引き払われている。七海が死んでから、もう何度そのマンションを見に行っただろうか。キーケースには七海の部屋の合鍵が今も残されたままだ。七海に渡していた伊地知の部屋の合鍵は遺族から返され、それが伊地知の手に渡った七海の唯一の遺品だった。
     悲しくはあるが、伊地知には遺族の気持ちが痛いほど分かる。愛する人を失った時、大き過ぎる喪失感を埋めるために敵が必要なこともある。一般の世界で生きる呪霊が見えない遺族にとって手っ取り早い敵は呪術界なのだ。そこには当然伊地知も含まれていて、本当なら関わりたくもないだろうに態々鍵を返してくれた。
    『あなたと建人がお付き合いをしていたのは、あの子の部屋にあった写真で分かりました』
     そう静かに呟いたどこか七海を思わせる顔立ちの女性。七海の母とこんな形で顔を合わせることになることが悲しくて伊地知は碌に顔を見れず足元を見つめていた。
    『本当なら写真もあなたにお渡しするべきなのかもしれないけれど、あの子の写真は誰にも渡したくないの……』
     静かに、静かに涙を流す美しい女性はそれだけ言って伊地知の自宅の鍵を返し去っていった。
     あの日恋人の死を知って取り乱し、家入に酷い言葉をぶつけた自身とは比べ物にならないよく出来た人だと伊地知は苦笑した。
    「七海さん、天国はどんな場所ですか?」
     暖かい国での暮らしに憧れていた七海が喜べる場所なら良いと伊地知は恋人の名を記した紙をそっと撫でた。
     どうか彼が果てしなく遠いその場所で幸せであるように願いながら。


     




     ふと目を覚ませば見慣れた今世での我が家の天井だった。まるで長い眠りから覚めたような重だるい身体に伊地知は溜息をついた。随分久しぶりに見た前世の記憶にずん、と気持ちが落ち込んだ。
    「五条さんが、あんなこと言うから……」
     昨夜の五条の言葉を思い出し、落ち込んだ気持ちは怒りへと変わる。あんな風に軽々しく、かつての七海への想いを口にして欲しくはなかった。
    「本当に五条さんは変わらない……」
     昔も今もいつだって伊地知を振り回す。困っている伊地知をいつも七海が助けてくれていた。七海がいなくなってからは少し落ち着いたと思っていたのだが。
    「……駄目だ、これじゃ五条さんの思うツボだ」
     いつの間にか伊地知の頭の中は“前世”のことで一杯だった。“今世”の伊地知潔高が引っ張られる。それでは困るのだ。“今世”の伊地知潔高は七海建人、五条悟の両名と関わりを持たず平穏に暮らしたいのだ。
     伊地知はベッドから降りてカーテンを開く。どんよりと薄暗い曇り空にいつまでも落ちた気持ちは晴れなかった。それでもいつまでも落ち込んだままではいられない。
     洗面台までのそのそと歩き蛇口を捻る。普段ならお湯を使うところだが今日は冷たいまま顔を洗う。そのお陰か伊地知の暗い気持ちも少しだけマシになった気がした。
     はあ、と一つ息を吐いてキッチンへ入り冷蔵庫を開ける。一昨日に買った惣菜の残りの蓋を開け匂いを嗅いでまだ食べられそうだ、と台所のシンクの前で立ったまま食べる。

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