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    Okoze

    @jkanaemill

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    Okoze

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    3旅中。2人の風景的な。
    無邪気に煽ってくるかきょいんは可愛いから…

    ※Twitter挙げ作品。徹頭徹尾、承花です。

    「いいなぁ それ」
    ホテルのロビーのソファは快適だった。
    チェックアウトの手続きをしている大人たちを待ちながら煙草をふかしていると横からのんきな声がする。
    なんだ。無言で見返すと紫檀色の瞳を細めて笑う。薄い口許を指さして応えた。
    「煙草」
    長い指が薄い唇をとんとんと叩くのを目で追う。
    「君もポルナレフもかっこ良く吸うからさ」
    「…」
    軽い苛立ちとともに吸ったケムリを吐き出す。

    あいつもかよ。

    面白くない気分で思いつきを実行することにした。
    手始めに一人分空いた距離を詰める。

    「吸ってみるか」
    「え いいのかい」
    「ああ 思いっきり息を吐きな」
    準備運動とか?こうかな。
    一瞬怪訝な顔をしたものの 大人しく言う通りにするこいつを見ていると 少々心配になるが情け容赦はしねぇ。
    半分ほどになった煙草を一気に吸い込んでゆるりと吐き出しながら紅茶色の髪ごと頭を抱き込んだ。

    え。
    見開かれた目に愉快な気持ちになった。
    半開きになった唇から吐き出した分たっぷり吸い込んで眉間に皺が寄る。色気のねぇやつ。
    体を引くと軽くむせながら睨んできた。
    「き 君ってやつは…」
    凄んでいるつもりだろうが赤くなった耳を見逃さなかった。短くなった煙草を灰皿へ押し潰し立ち上がる。
    肩越しに振り返ると 目を伏せ抑えた口元から薄くケムリが溢れるのが見えた。


    体のなか。
    肺いっぱいに入り込んでやった。


    悪くない気分でソファを後にするとカウンターから近づいて来る大人たちに向かって歩き出す。
    「…ファーストキス だぞ」

    背後から聞こえてきた小さな声にぐっと拳を握りこんだ。




       十 十 十


    「ということがあったなぁ」
    リビングのソファで一服していると横に座った赤毛がため息混じりにつぶやいた。
    「なんだ」
    「煙草だよ」
    君が吸ってるのを見ると思い出しちゃうんだよな。
    言いながら煙草を取り上げ 慣れた手つきで吸い出す。
    「おい」
    ふーっと吐き出されたケムリに混じるのは 最近こいつのお気に入りのキャンディの香。
    桜だか梅だかようわからん味のやつだった。
    大人しくキャンディで我慢していればよいものを…

    ふふと悪戯っぽく笑って前髪をかき上げる仕草も堂に入ったものだ。
    あの旅から二十年近く経っているのだから当然 か。
    年月を重ねてワインの香りが芳醇になっていくように彼の佇まいは美しく色を帯びていく。
    なかなか目が離せない。

    やれやれだ。


    諦めて新しく一本取り出すと柔らかな紅茶色の前髪が揺れた。
    咥え煙草で少し困ったような顔が近づいてくる。


    耳が赤い。
    幾つになってもこういうところは変わらない。


    短くなった煙草の先の
    火をもらうために 俺は煙草を咥え直した。
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