Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    sayuta38

    鍾魈短文格納庫

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 73

    sayuta38

    ☆quiet follow

    鍾魈短文
    鍾離と伴侶になることになった魈が、鍾離に質問してみる話

    #鍾魈
    Zhongxiao

    未完話1「魈。これから先も、ずっと俺と共に生きてくれないか」
    「……断る理由はありません。我も、鍾離様の傍にいることが許されるなら、この命が尽きるまで傍にいます」
     軽い言葉ではないと思っていたが、この鍾離の言葉が、それ以上の意味を持っていたと気づいたのはそれから数日経ってからであった。
     凡人で言うところの伴侶というものに該当するらしい。良かったね。と旅人に言われ、心当たりが全くなかったので「何がだ?」と聞いてみたところ、鍾離の方から旅人に報告があったという。
    『ついに魈が承諾してくれたんだ』
     六千年の時を思わせないような朗らかな笑みで、それはそれは嬉しそうに旅人に話をしていたらしいので、その表情は是非とも見てみたかった。と思う反面、あの時の言葉はそういう意味だったのかと驚いたものだ。
    「共に生きるとは、何をするものなのだろうか?」
     久しく旅人に呼ばれ、璃月の由無し言を片付けた後に、休憩と称し気になっていた事を聞いてみた。
    「えっ? うーん、帰る場所になれば、いいんじゃない?」
    「帰る場所? とは、なんだ? 望舒旅館のことか?」
    「望舒旅館でもいいけど……例えば鍾離先生の家に同居してみたり? 魈が『おかえり』って出向いたら先生喜ぶと思うよ」
    「そんな恐れ多いこと、出来る訳がないだろう」
    「うーん。そうだよね。そういえばさ、先生って子供とかいないの……?」
    「……知らぬ」
    「相手の過去とか、気になったりしない?」
    「鍾離様の過去を知った所で、我がどうこうできるものではない」
    「突然子供が尋ねてきて、この人はなんですか! みたいな展開になったりするかもしれないし、それくらいは聞いてみたらいいじゃない?」
    「そういうものだろうか……」
     旅人の言うことは一理ある。自分より遥かに長い時を生きている鍾離ならば、子供の一人二人……十人くらい現れてもおかしくはない。
     これから先の人生を一緒に生きるなら、相手のことも知らなきゃね!
     今まで鍾離が誰と付き合いがあるかなど気に留めたことはなかったが、旅人にそう言われると、物凄く気になってしまったのだ。



    「鍾離様」
    「ん? どうした? 今日の茶は苦かったか?」
    「いえ、今日のお茶も美味しいと感じました」
    「ならば、どうした?」
     鍾離が眠る少し前の時間になると、魈は鍾離の自宅へと足を運ぶようになっていた。眠る前に茶を飲み共に眠り、朝には望舒旅館に戻るという生活をしているのである。
    「……時に、ですが」
     話を切り出すのが我ながら下手過ぎると思った。
    「その、鍾離様に……お子はいないのでしょうか?」
    「んん?」
    「いえ、あの、鍾離様にお子がいると知っても、鍾離様と共に指導していきたい気持ちはあるのですが、ひとまず、聞いておきたく……」
     鍾離は茶をテーブルにおき、見たこともないようなぽかんとした顔で魈を見ている。何か間違ったことでも言ってしまったのだろうか。
    「子は……いないな」
    「伴侶がいたこともないのでしょうか」
    「それもない」
     なんということだ。鍾離が生きてきた六千年以上の中で、ただ魈が初めての伴侶だということが露呈してしまっただけである。
    「な、ぁ、あ、そ、そうなのですね……」
    「お前が何を思っていたのかは知らないが、はは。俺に別の伴侶との子がいても育ててくれるつもりであったとは……ふっ。嬉しいものだ」
    「申し訳ありません……無粋なことをお聞きしました……」
    「いやいい、なんでも聞いてくれ。魈は伴侶なのだからな。隠すことはなにもない」
     はは、と思い出したように何回も鍾離が笑うので、少し恥ずかしくなってきて俯いた。旅人に唆されたとはいえ、とんでもなく変なことを聞いてしまったものだなと鍾離の顔が見れなくなってしまったのであった。


    「魈! 疲れた!」
    「そうか。なら休むといい」
    「抱っこだ! 抱っこがいい!」
    「……」
     ん。ん。と両手を広げ、僅かに跳躍し魈を見上げるこの子供は、朝起きると望舒旅館の魈が寝泊まりしている部屋に突然現れた。
     魈の背丈より半分くらいの大きさのこの子供は、まん丸な石珀色の瞳に茶色い髪をしていて、まだ変化が苦手なのか頭に角が生えている。どこからどう見ても鍾離にそっくりなのだが『もしや、鍾離様なのですか?』と尋ねてみても、首を傾げるだけであった。
     そもそもこの部屋に入れる者が自分以外には旅館の者と鍾離くらいしかいない。妖魔が化けて現れたのかと思ったのだが、どうやら違うらしい。そもそも鍾離と同じ元素力を感じるのだ。きっと……鍾離のはずである。
     無言で子を抱き上げ小脇に抱えて望舒旅館への道を歩いて戻る。手合わせがしたいと言ったので散策がてら帰離原に来たのだが、三十分もしないうちにこれである。槍は放り投げられ、無惨にも地面に転がっていた。
    「抱っこだと言っている!」
     腕の中でジタバタと暴れるので、仕方なく胸の前で抱きかかえた。すると今度は指先で降魔杵をつついて遊んでいるので、それは玩具ではないと窘めた。
    「魈、見てくれ! 昨日は蕾だったあそこの花が咲いている」
    「そうですね」
    「魈、昨日転んだ傷がまだ痛い」
    「大丈夫ですか」
     見目は愛らしいがとにかくやかましい。こんなに他人と接したり会話することがないので余計にそう思う。魈が何も言わなくても一方的に話し掛けてくるのだ。
     ただの鍾離に似ている子供ならば旅館の者に預けても良いのだが、預けようとした瞬間それはそれは旅館中に響き渡る声で泣き叫ばれてしまった。魈がいい、魈じゃなければ嫌だとあまりに大声で言うので、こうして共に過ごすことになってしまった。
     はっきり言って降魔の邪魔である。置いておいても良いのだが、チョロチョロ後ろをついてこようとする。姿が見えなくなったら諦めるだろうと思ったのに、そのまま迷子になってしまい結局は魈が連れ帰ることになってしまった。
     先日鍾離に子が居ないか尋ねた後だったこともあり、やはり鍾離には隠し子でもいて、それは魈に言えない事情があったのかもしれないと思った。しかし鍾離の子ならば、面倒を見るのが伴侶としての責務である。
     名乗る前から魈という名で呼ばれたので、誰からその名を聞いたのかと尋ねても「魈は魈だろう?」としか言わないのでそれ以上のことはわからないままだった。
     この子供を旅館で寝かせてから鍾離の元へと言っているのだが、鍾離は鍾離で邸宅にいる。だから鍾離が姿を変えている訳でもなさそうだ。聞いてしまった方が早いと思うのだが、鍾離が言わなかったことを深堀りするような気がして気が引けてしまい、聞けずにいるままである。
    「魈。眠い。眠るぞ」
    「……おやすみなさいませ」
     旅館の部屋に戻ると、腕の中で半分くらいとろりと目を閉じていた子が、いそいそと魈の寝台に潜り込んで、十秒もしない内に寝息を立ててしまった。
     正直、どのように接すればいいのか不明である。あまり長くいると業障の影響も気にはなるのだが、不思議とこの子といるとあまり業障の痛みを感じないのだ。
    「お前は一体……何者だ?」
     名を聞いてもはぐらかされる。ただ、鍾離そっくりの子供に魈という名を一日百回ほどは呼ばれるので、無下にも出来ずに対応している日々が続いていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works