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    sayuta38

    鍾魈短文格納庫

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    鍾魈ドロライより、紅葉

    #鍾魈
    Zhongxiao

    紅葉 彼と歩いていると、独りで散策をしている時とはまた違った趣がある。季節が移り変わり、先日まで青々としていたイチョウの葉は、段々と色づき黄金の色に染まっていた。ハラハラと舞い落ちるそれを見て、美しいと思った。
     それは、隣に歩く彼の瞳と同じ色をしているからそう思うのかは定かではない。太陽の光を浴びて輝き、枝にとどまらず風に乗って飛んでいく様が、どこか魈に似ている気がしたのだ。
    「ほら、魈、見てくれ」
     風の乗るそれを指でつまんだ。まだ泥にも塗れず、裂けた様子もない綺麗なイチョウの葉だ。それを魈に見せた。すると魈は、しばし考え込んでしまった。また真意がわからないなどと思っているのだろう。ただ、お前の瞳と同じ色をしたそれが綺麗だったから、見せたかったのだ。
     魈が一瞬視線を外し、同じくイチョウの葉を掴んだ。差し出すように眼前に出されたそれの意図が、少しわからなかった。魈のことはよく知っているつもりで、結局のところ何も知らないかもしれない。魈はいつもこのような気持ちなのだろうか。
     魈は穏やかな顔でイチョウと俺の顔を交互に見ている。
     それから、フ、と安心したように笑ったのだった。

     鍾離様が、優しく微笑んでいらした。凡人になられてからというもの、ふとした拍子に微笑んでいるところをよく見かける。凡人の生活を楽しんでいらっしゃるのだろう。何か憂い事があるのならば、我がそれを払って差し上げたい。
     今日も誘われて共に近くを歩いていた。すると、突然イチョウの葉を掴み、我に見てくれと楽しそうに話していらっしゃった。このような時、一体どういう反応を返すのが正解なのかは、未だにわからない。
     差し出されたイチョウの葉は、太陽に照らされて光輝いているように見えた。それはまるで、鍾離様の瞳のようで、とても美しかった。
     それを教えたくて、鍾離様の眼の前にイチョウの葉をかざした。すると、鍾離様は一瞬驚いて困惑の表情を浮かべていらっしゃった。
     我にとっては、あなたが太陽なのですよ。鍾離様。
     あなたに照らされて、我は今日も生きて行くことが出来ています。
     そんなことを言ったら、あなたは一体どんな表情をされるのだろうか。
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