逢引き「——斎藤さん、沖田です」
昼間の宣言通り、沖田は宵闇に紛れて斎藤の居室にやってきた。
開放していた障子が沖田の手でぴたりと閉ざされる様を見ながら、暑くなるだろうな、という最もな懸念が斎藤の頭を過った。何分にも狭い居室なので、真夏であったならば外へ出て草葉の陰ででも興じていたところである。
文机の上に置かれた古めかしい煙管を見て、さては昼間購入したものかと破顔した沖田が斎藤の傍へと歩み寄ってきた。湯浴みをして埃や汗をすっかり流した後の身体は見るからにしっとりとして、髪はまだ濡れたままだ。
「まさか、これに大金を出したんじゃないでしょうね?」
「……ここに龍の彫金があるだろう? 装飾が気に入ってね、値切ってもそれなりの値段はしたさ」
「へぇ」
相変わらず興味の薄い反応の沖田を尻目に、斎藤はそれを大事に銘入りの桐箱に納めた。