嗚呼、愛しき工房の日々3(下)エアコンの冷気をめぐらせるサーキュレーターの風ではためくカーテン。月明かりが差しこむ寝室の着替えさせ寝かせたベッドの上で、彼のぼんやりとしたエメラルドがリビングで動く私の姿を追っている。
警戒しているときの反応だと知っていた。当たり前ではあるけれど、まだ信用されていないのが何だか悔しい。それとも阻害機を外してしまったから、私だとも思ってもらえてない、とか。
冷凍庫から出したばかりの新しい氷嚢を持って近づき、冷えていない方の手で額に触れる。
まだ、熱い。
一度容体の落ち着いたムルソーを水風呂から出し、四苦八苦して引きずるように寝室まで連れてきたのが昼過ぎのこと。咥えさせた体温計が概ね正常を示したことからとりあえずは様子見として、十数分おきに工房と家を行き来しながら彼と仕事の様子を両方管理する目まぐるしい一日をようやく終えて帰宅したのが数刻前。
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