エアコンの修理業者なんてものをやっていると、夏は暑さとの戦いで地獄だ。なにせ依頼主のお宅がエアコンが効いてなくて暑いし重労働。おまけに依頼主も暑さでイライラしている。
それでも仕事放棄はできないので、俺はダラダラと流れる汗を拭いながら、本日最後のお宅に向かう。電話口の依頼主は男性で、年齢を確認すると二十代前半だった。平日の日中ということで大学生かと当たりをつけて向かったのだが、指定された住所に着くと高層マンションの上層階で。ちくしょう。こっちは汗水垂らしてようやくボロアパートで一人暮らしできるってのに、若くして成功してるのか、それとも親の金か。どっちにしろ鼻につく。そんな奴はエアコンなしで夏を過ごして茹だればいい。頭の中でそんなことを考えていたからか、つい歩みが遅れてしまった。
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