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    アニメOPのさとる

    #五夏
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    俄雨(ワンライ) ふと空を見上げると灰色の分厚い雲が空を覆っていた。空気も心なしか水分を含んで重たくて、鼻をひくりと動かせば雨の前のにおいがする。こりゃ一雨くるな、と私は心のなかで溜息を吐いた。花屋である以上お客様が来てくれないと仕事にならないのだけれど、雨が降ると客足はぐっと遠のく。特に、こんな辺鄙な場所にある花屋なんて余計だ。
     雨が降ったら在庫整理でもしようか、仕入れ状況の見直しをするのもいいかもしれない。そんなことを私が考えていると、からんとドアベルの軽やかな音がした。お客様だ。慌てて振り向いて、接客用の笑顔を張り付ける。
    「いらっしゃいませ!」
     振り向いた先にいたのは、お客様じゃなくて「黒」だった。えっと驚きながら慌てて視線を持ち上げると、その黒のさきっぽにはちゃんと顔が乗っていて、恐ろしく背の高い男性だということに私はようやく気付く。背が低い私からしたら、視線を意識して持ち上げないと顔さえわからない。
     お客様は背が高いだけでなく、透き通るほど綺麗なシルバーの髪の毛をしていた。目元は黒いサングラスをしていて、なにがどうなっているのかわからない全身真っ黒な服を着ている。それなのにきっと顔は整っているのだろうなと思わせる雰囲気があって、いろんな意味で特徴的な男の人だった。
     お客様は花を見るでもなく、私に声を掛けるでもなく、ただ黙ってそこに立っていた。花屋に慣れない男性というのはある程度たくさんいて、私も慣れている。そういうときは私から話しかけて要望を聞き出すのだけれど、そういう男性とは違う目の前のお客様に少しだけ気後れしてしまう。
     どうしたらいいのかわからない男性の、そわそわと落ち着かない雰囲気はまるでない。彼は触ったら怪我をしてしまいそうなほどの鋭利な雰囲気を醸し出していて、誰も近づけさせないなにかを感じた。飛び抜けて高い身長や綺麗な髪色、黒い服装から少し人外のようなものさえ感じさせる。一言で言えば、怖い。
     とはいえ、ここで黙って見つめていても仕方が無い。下手に接客業を続けていないのだと自分を叱咤して、閉じそうな喉を無理矢理開いて話しかけた。
    「いらっしゃいませ。なにかご入り用ですか?遠慮無くご相談くださいね」
     笑顔は百点ねとオーナーにお墨付きをもらったスマイルで話しかければ、男性はふっと緊迫した雰囲気を仕舞って、にこりと笑った。サングラスのせいで目元は見えないけれど、口元が綺麗な弧を描いていて、見惚れるほどの美形だった。
    「ごめんね花屋なんて初めてでさー。怖がらせちゃったかな?実は花束が欲しくって。色は、うーん、そうだな、白と青系で作ってもらえるかな。種類とかはよくわからないから、お任せで」
    「承知しました。……リボンはいかがなさいますか?」
    「リボンもお願い」
     私がリボンの有無を聞いたのは、白と青というカラーから弔花を連想したからだ。それならば、彼が纏っていた鋭利な雰囲気も頷ける。けれど、どうやら違うようだ。さきほどまでとがらりと雰囲気を変えたお客様に戸惑いつつ、私は花を見繕って花束を作っていく。ご希望通り白と水色のお花で、小さなリボンもかけて。
     そうして出来上がった花束を「いかがでしょうか」と見せれば、お客様は満足そうに頷いてくれた。にこにこと笑っていて、朗らかな雰囲気はさっきまでと同一人物とは思えない。
    「実はさ、これ恋人に渡すんだ。だから緊張しちゃって」
    「そうなんですね。喜んでくださるといいのですが」
     先ほどのは恋人に渡す緊張感ではないと私は思ったのだけれど、なにか事情があるのだろうと相槌を打つに留める。お客様はお渡しするあいだも、にこにこと嬉しそうに笑って話し続けていた。
    「どうだろう。受け取ってもらえないかも」
    「そんな、恋人なんでしょう?」
    「勝手に押し付けるからいいけどね。文句は言えないし。じゃあ、これありがとう!」
     そう言ってお客様が店を出て行く。くるりと背を向けた瞬間、サングラスの隙間から彼の覚めるような蒼色の瞳が見えてしまい、白と青というのは彼自身のイメージカラーだったのかと私は気付いた。そんなカラーの花束を渡すなんて、よっぽど恋人のことが好きなのだろう。そのわりには反応がちぐはぐで、釦を掛け間違えているような小さな違和感が拭えないのだけれど。
     私は小さくなっていく背中を見送って、その姿が見えなくなってから店に戻る。不思議なお客様だったなと思っていると、窓にぽつりと水の粒が落ちてきた。ひとつがふたつになって、数え切れないほどの雨が降り出した。一粒は小さいけれど、少しずつ地面や窓を濡らし拡げていく。
     そういえばさっきのお客様は傘を持っていただろうか。お客様も、恋人に渡す花束も濡れてないといいなと思いながら、私は厚い雲に覆われた空を仰ぎ見る。だれかの涙のように降り積もる雨が、早く止みますようにと願いながら。
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    ask_hpmi

    DONE夏のある日
    水着(ワンライ)「あっちい~」
    「言うな悟、余計暑くなる……」
     湿度を含んだ空気が、じっとりと肌にまとわりついて気持ちが悪い。なにもしなくても外にいるだけで汗が吹き出し、こめかみのあたりからつうっと汗が流れ落ちた。ジィジィと蝉が鳴く音があちこちから響き、視界がゆらりと揺らめくほど高温が立ちこめている。
     白と青のコントラストが強く、高く積み上がった雲の影が濃い。ぎらぎらとした日差しが容赦なくふたりを焼いていて、まごうことなく夏真っ盛りである。
     呪術高専は緑豊かな場所にある。はっきり言えば田舎で、コンクリートの照り返しはない代わりに日陰になるような建物もなく、太陽が直接ふたりに降り注ぐ。
     あまりの暑さにコンビニにアイス買いに行こうと言い出したのは悟で、いいねとそれに乗ったのは傑だ。暑い暑いと繰り返しながらなんとかコンビニまでたどり着き、それぞれアイスを買う。安いと悟が驚いていたソーダアイスは、この暑さでは格別の美味さだった。氷のしゃりしゃりとした感触はそれだけで清涼感があるし、ソーダ味のさっぱりとした甘さがいまはありがたい。値段のわりには大きくて食べ応えがあるし、茹だるような暑さにはぴったりだった。
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    PROGRESS3~6月に出すかもしれない話の冒頭です。
    相変わらず記憶なし×ありの転生。
    舞台はずっと未来かもしれないこの列島の何処かです。
    もし一言でもあれば、こちらから!
    https://wavebox.me/wave/3vwvg0bho3p7xq56/

    イベント中に増えるかもしれないし、Xで連載をはじめるかもしれません。
    いつか一緒に 昨日知り合ったばかりの男は不思議な家に住んでいる。
     階段は外付けで、外壁は淡いミントグリーン、幼児が積み上げた積み木のように、少し凹凸のある三階建て。
     雨ざらしになっているせいか、ところどころ塗装が剥げていて、鉄さびが滲み出ている頑丈そうな階段を昇りきると、何もない屋上に辿り着く。本当に、何もないわけではない。洗濯物干しと台風でもきたら吹き飛ばされそうなプラスチックか何かでできている白い椅子が一つ、ぽつりと置かれていた。
     朝焼けも夕焼けも似合いそうな建物は、だけど北向きの路地に建っていた。周囲も家屋に囲まれているから、反対側がどうなっているのか、一見するだけではわからなかった。
     悟は目に付くあたりがどうなっているのか、その区画をくるくると歩いていた。平均よりもずっと長身の背丈を活かしても、やっぱりその内情は伺えなかった。
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