あの子の瞳に狂いゆくその美しく輝く光を宿した太陽の様なレッドダイヤモンドに、青く何処までも地平線を宿す海の様なサファイアの様な瞳は、何処か神秘的で妖しく人を狂わせる。

無陀野無人は四季が覚醒途中である、青と赤の瞳を見る度湧き上がる欲望があった。その青と赤の瞳で自身に笑みを浮かべる四季を見る度に、涙を流し無陀野に抱かれ許しを乞う姿を見たくなり、自身が人の道を踏み外さぬのを必死に抑えている。
無陀野に抱かれ流す涙は宝石の様で甘く、その瞳を舐め、四季の身体に跡を残し無陀野のものだと周りに周知させたい程には、無陀野のは四季の瞳が変わる前から四季に狂い、そして現在の妖しく妖艶な瞳に魅力されていた。
願わくば、その瞳が長続きする事を願う。
「ムダ先！！」
四季が目を細め満面の笑みで呼ぶのに無陀野は、彼の元へ向かった。
「四季」
その瞳には嬉色が乗り執着を静かに隠し、同時に瞳は執着を宿し彼に繋がる透明な鎖を手に持つ無陀野は、四季を絶対に手放さない様にと其の鎖を握るのだ。

花魁坂京夜は四季の怪しく輝く、青と赤の瞳を食べてしまいたかった。口の中に転がし雨の様に舐め、感触を味わい、最後にプチりと噛み潰したい程のその輝く瞳は日に日に色を増していき、京夜の欲望を高めた。
その瞳で笑顔を向けられる度に、四季の足の腱を切り閉じ込め監禁し、誰にも見られぬ様に隠して自身だけが毎日彼を抱き潰せる様にしたいと思う程に、京夜は赤目に変わる前から四季に狂っていた。そして瞳が赤になり更に狂いだした。
もう歯車は止められない、後は四季に狂い落ちていくだけである。保健室の扉が開き四季が入って来る。
「京夜先生肘怪我しちゃった…」
「おいで治してあげる」
その赤く垂れる血を今直ぐ舐めてしまいたい程の感情を押し込め、怪しく細められた京夜の瞳に乗る執着を隠し、四季にいつもの笑顔を作るのだ。

淀川真澄は四季に狂っていた。静かに狂っている。赤と青の輝く太陽と大海原の様な海の瞳は、太陽に手を伸ばそうとし海に堕ちたイカロスを彷彿とさせ、満面の笑みを向けられる度に妖しく輝くその瞳を抉り出し、ホルマリンに漬け永遠に自分の手元に置いておく事を思い浮かべる程に、四季に狂っていた。
その瞳を見る度に焼け散りそうな程に身体の奥から欲望が沸き上がり、手を伸ばしてしまいそうになるのを必死に耐えている。
彼奴を抱いて泣かせて流した涙を舐め取り、瞳に齧り付いて抉りだし彼の涙を流し痛みに暴れる姿を見て、幸せを感じたかった。
淀川真澄は狂っている。四季の瞳が青の時から。
「真澄隊長！！」
「うるせぇクソガキ静かにしやがれ」
そう呟く真澄の手には、見えないリードが握られ四季の首を引き、愛犬を誰にも見せぬ様に変わらぬ笑みで四季を手に入れようと画策するのだった。

並木度馨は四季の瞳が欲しかった。どの様な宝石共比べ物にならない程に輝く、レッドダイヤモンドとサファイアは、馨が四季を腕に閉じ込め眠れる四季が目を覚ました時に魅せる惚けた瞳を見て、自身だけが見れるその瞳に酔いしれたかった。
どんな美酒寄りも美味しいだろう、その瞳を見て飲む酒は四季の楽しむ姿に輝く青と赤の瞳を見て、馨に輝く瞳を向けた瞬間のその輝きを一瞬に納め彼を閉じ込めてしまいたかった。
然し彼には自由が似合う。笑顔が似合い、空を羽ばたく様に人を救う彼は馨の救いであり、愛しい姿であった。
だからこそ彼が馨の元に最後は戻る様に躾けるのだ。真綿で首を絞めるが如く優しく、気づかれぬように。
「馨さん！聞いて！」
「どうしたの四季くん」
馨の元に走る四季の慌てた表情を見て馨は話を聞く。その瞳は彼の背にある鎖を巻かれた翼の根元にナイフを当て、今か今かとその翼を切り落としてしまおうと、優しく穏やかな表情に隠した執着で見せるのだ。

朽森紫苑はその少年が欲しかった。赤と青の瞳に魅入られ、どんな逆光にも立ち向かう彼の鋭く光るその瞳に焼かれ、思わずその炎に手を伸ばして身を滅ぼしてしまう程には、紫苑は彼を渇望している。
輝く赤と青の色違いの瞳が欲しくて欲しくて欲しくて、渇望して、その頬に手を添えて永遠にに瞳を眺めていたい程には四季の瞳を愛し、同時に四季の目が青の頃から四季を愛していた。
瞳を眺め四季を傍に置き、紫苑がその瞳を独占し、四季に瞳を永久に見つめ返して欲しい程には彼を愛し渇望し、手に入れる事を決めているのだ。
四季を手に入れるのに周りを調べ、四季に甘い言葉を囁き、女と会う頻度を減らし四季に注ぎ込み、好きな物を貢ぐ程には彼を愛し自身を信用して貰える様に渇望した。
朽森紫苑は四季を渇望している。喉から手を伸ばす程、渇いた喉を今直ぐ潤したい程に。
「あー！紫苑さん！！見つけた！！」
「はいはい、紫苑さんだよー何かな四季くん」
吠える様に紫苑に当る四季を見つめながら、紫苑はその手にある見えない杯を四季に注ぐ。深い愛を注ぎ、永遠にその間は留まる事は無い。彼の細めた愛しげな目に浮かべた笑みは、執着を隠す事無く、四季に愛を注ぎ続けるのだ。

印南幽は四季を愛していた。その鮮やかな番傘の様な唐紅の瞳を、夜空の様な濃藍の瞳を愛しているのだ。彼の瞳が愛おしくて、対の違う色の瞳は、変わる表情に彼が愛される証で、そして輝くその濃藍と唐紅は何処か妖しく輝く人を狂わせる瞳であった。
四季の瞳が人を狂わせるなら、印南が保護しなくてはならない。四季を傍に置き共にに旅をし、最後は印南と暮らす屋敷に隠してしまうのだ。印南幽は四季の瞳を愛していた。色が変わる前から。そして彼の対の瞳に狂っているのだ。
だからこそ印南は努力し、四季を落とそうと躍起になった。四季の元を訪れ、四季の話を聞き時には菓子を与え一緒に食べた。秘密の話だと聞いた時には優越感が湧き、彼の秘密を共有出来る一人に慣れた事に歓喜をした。だからこそ印南は四季の信頼を勝取り、彼を手元に抱きしめ様としている。
「印南さん！！」
「どうしたのだ少年」
印南に手を振る四季が彼の手を引き歩き出す。楽しげに歩く四季の姿を見つめる瞳は、静かに執着を宿し、その薬指に繋がる血の様に赤い糸は切れる事等無い様に、彼の指に確りと繋がれているのだ。

皇后崎迅は四季を見つめていた。一番傍で四季を見て来た彼は、四季の瞳が移り変る過程を見て来ている。毎日青に混じる片目が赤に変化する際、色が変わる宝石の様に時折赤が見えた彼の瞳は、アレキサンドライトの様に色が変化し、赤の頻度が増えた日々が続き等々赤へと変化した。
青から赤に変わる様子は、何処か蠱惑で色が変わる度に皇后崎は息を飲み、その瞳を見つめ只々見惚れていた。
彼奴の瞳が欲しい、彼奴の隣は自身だけのものだ、彼奴の隣に人はいらない。だからこそ皇后崎は四季を落とそうと、伝わらぬ愛を伝えて行く。喧嘩するばかりで、時折伝わる愛は四季を驚かせ、照れた様に礼を言う彼にまた悪態を着くのだ。
皇后崎迅は四季の瞳に見惚れている。その瞳が変わりゆく様を一番傍で見つめながら。今日も変わりゆく瞳を見つめてゆく。
「皇后崎！なにしてんだよ！！」
「………ばか四季」
四季が喚き喧嘩になる何時もの行動に皇后崎は何処か安心する。然し皇后崎は静かにその瞳に執着を宿し、彼の首に彼の手の跡が付き締め付けられる見えぬ跡が付く事を四季は知らない。絶対に手放すものかと共に逝く事で彼の首を絞め、自身も共に地獄へと堕ちるのだ。

四季を愛する彼等は静かに狂い、牽制し彼を手に入れ様と様々に動き画策する。貢ぎ、愛を囁き、優しく相談を聞き、悪態を付き、彼に道を教え、共に共感し同様の乗りになり、彼の全てを包み込み、軈て自身のものにしようと手に抱きしめるのだ。
彼等は四季に狂っている。
「みんな！！！」
声を上げ彼等の集まる元へ走りゆく四季に笑みを浮かべる瞳は、怪しく光り執着わや宿していた。