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    AKtyan5560

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    AKtyan5560

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    ─── 青年は1001本の薔薇を食べ神になる

    武道はある日から夢を見るようになった。黒狐の面の青年と白犬の面の青年から、毎日薔薇を食べさせてもらう夢。九井と乾と夢で話すのは楽しく、薔薇も美味しく幸せだと思っていたある日、自分の体から薔薇の香りがすると告げられた
    これは人間の武道が神へとなるまでの物語

    ※神様パロ
    ※九井と乾が神
    ※黒龍総長if
    ※友情出演千冬

    #ココ武
    #イヌ武
    inuwake
    #神様パロ
    parodyOfGod

    そして俺は神になった愛しい愛しい愛し子よ、吾子を手に入れ抱きしめたい、吾子は今やどこにいるのかよ。
    ─────ミツケタ


    武道は風呂を出ると明日のバイトの為に就寝の準備をする。冬に入りたての寒い日にトレーナーでは寒いが、元々部屋が寒く、暖房器具も無い為毛布に包まると目を瞑り眠気が降りてきた。
    『ミチ……ミツケタ…………』
    何かが聞こえた気がしたが、瞼が降りるのが早く、思考は闇に落ちた。目を開くと何も無い白い空間が広がる。空気があるのかすら分からず、起きると半袖のいつもの私服になっていた、寝る前はトレーナーを着ていた筈だがと思い見渡すが、周りには何も無く遠くまで広がる白に、立ち上がると目の前に人がいた。
    「うっわ!!」
    黒い狐の面のが青年立ち、黒装束を着て髪の横がウェーブが緩く付いて、もう片方剃られている不思議な髪型をしており、青年は喉を触りながら風を切る音を出している、声が出ないようだ。青年は納得すると武道の髪を撫でると、指を床に指し座る様に促し、武道は失礼の無いように正座で座ると、青年は胡座をかいた。困ったように肩を上げ、膝を指す。武道は首を傾げ何を言いたいか分からない青年が、武道の膝を叩きもっと楽に崩せと言う意味が分かった武道は、胡座をかくと何か人間では無い目の前の青年に向き合う。
    「あのーアナタは誰ですか?」
    「…………」
    青年は武道の手を取ると『はじめ』と平仮名で書き彼がはじめさんだと知った。髪を撫でるのが好きなのか、また髪を撫でる彼の手つきに安心し緊張が解れていく。どこか覚えている既視感に、目の前の人を思い出そうとするが彼のような人に記憶が無い。はてどこかで会ったことあるか。髪を撫でられるのが心地好く、彼の掌に擦り寄ると一瞬手を止る彼に武道は嫌だったのかと思い慌てた。
    「あ!嫌だったらすみません!!」
    狐面の男は微動だにせず、武道は気まづいが少しすると首を振る仕草にホッとした溜息を吐いた。彼の機嫌を損ねなくて良かったと。
    青年は懐に手を入れゴソゴソと漁ると、掌に乗る薔薇の花弁を武道の前に出し、一つ花弁を取ると武道の口元に持って来る。食えと言われてるのだろうか、食べたら良いのか、武道は何も疑わず口を開くと花弁が口に入りもぐもぐと食べる。蜂蜜のように甘くトロリと溶ける花弁は、甘党の武道の好みの味であり、もっとと自分から口を開くと青年はまた口に入れた。とても甘い蜜に良い夢を見れていると武道は思う。
    普通は得体の知れない人が差し出す物をホイホイと口には入れないのだが、彼にそんな概念は無い上悲しい事に教えてくれる人等いなかった。防犯講習を受けるべきである。
    甘い蜜の花を何枚も貰うと、花弁の甘さにもっともっとと雛鳥のように口を開く武道に、得体の知れない男は楽しそうに機嫌が良く、武道も嬉しくなる。
    全てを食べてしまい花は残らない。青年が残念そうに肩を竦めると、後ろを指差し振り向くと、眩しい光に目が覚めた。鳴り響く隣から壁を叩く音が聞こえる。朝が来ていた。
    その日は仕事中も夢の内容について考え仕事が捗らなく、部下から確りしろと声が掛けられ、店長として有るまじき最悪な日だった。また夕食のカップ麺を食べるが、どこか何時もより味気ない、はて昨日と同じ味の筈なのだが、些細な心配な為気にせずまた眠りにつく。今日もあの夢を見れるのを、武道は少し楽しみにして眠りについた。
    また昨日の白い空間にいた武道は、驚く事無く座ると、辺りを見回す。何も無い白い空間に無の境地になり、前だけを見つめていると後ろに誰かが立っている感覚に、冷や汗をかき恐る恐る振り向く。
    そこには昨日とは違く白犬の口元が出た仮面に、プラチナブロンドの肩まである髪の、白装束を来た男がいた。装束と言ったが平安貴族が着ていたような物である、誤解を招く言い方をした、と武道はどこかの人に誤ると、後ろにいる男は武道の髪を撫で頬に手を当てる。擦り寄る武道に、後を半分向くのは悪いと前に歩くと、胡座をかいて座った。武道の頬に手を当て、近くで見つめてくる彼の口は幸せそうに弧を掛いていた。武道も嬉しくなり頬に擦り寄り微笑むと、男は無表情になり鼻に指を啄くと武道を見つめる。愛いと言いたげに微笑む彼が武道の頬にまた手を当てると、暫く其の儘で武道は目を瞑る。目の前の青年が手を離すのに、よく見ると男の右には火傷の痕があり、仮面の下まで広がるそこを撫でると、男はピクと動き無表情になるが好きにさせる。武道が指で撫でると、正気に戻り勢い良く手を離すと、男は寂しげな空気になるのに、武道は少し引いた。男はそんな事を思ってるのを知らないのか気にしないのか、装束の中に手を入れると薔薇を出した。武道はまたあの甘い蜜を食べれるのかと嬉しくなると急かすように口早に語る。
    「早く下さい!」
    どうもこの男の前では童心に帰るようだ、子供のように急かす等普段は絶対しないのに、と武道は思うが、武道好みの甘い花を食べれるとなると子供に戻るのも分かるものだ。
    男が花弁を契り口元に差し出すのに、昨日の青年は一枚ずつだったが、今回の男は二枚繋がっても気にしないように差し出した。意外と雑なのかもしれない。武道は花弁を食べると、またあの甘い蜜の味に頬が緩む。昨日と同じ蜂蜜の味に何度も口を開き強請ってしまう。この味を覚えたら忘れられないだろうと武道は思っている。甘い蜜に舌鼓を打っていると、花弁は全て無くなり男は立ち上がる。男の背後で朝日が登るのに、寂しげに笑う男の顔が印象に残った。
    起きると早朝で、まだ日が登ったばかりの朝だった。目指しも鳴らず眠れそうに無く起きて支度を始める。
    顔を洗うと鏡を見て可笑しく無い所は無いかと見るが特に無い、後ろを向く武道の首元に一つの呪文字の様なものが刻まれており、それは溶けるように消えていった。
    その日は二回目だからかミスもせずに一日が終わる。武道は珍しく面倒な仕事に残業をしてテーブルに突っ伏すと瞼が降りていく。ダメだと思うが視界が闇に落ちるのに意識も落ちた。
    またあの空間で流石に慣れ少し冒険をする事にした。近くを歩くがどこまでも白、元の場所も分からない為そこに座ると、武道の目の前に何か黒狐が歩いて来ると体に参と刻まれており、何のことかと思い首を傾げるが、此処に来た回数の事かと思うと納得がいった。その狐を撫でると逃げもせず好きにさせ、心地良さげに丸々狐に武道は膝に載せると撫で心地が良い狐に微笑むと、目の前にあの青年がいて驚いた。
    「わあ!」
    黒装束の青年がどこか不機嫌な態度で狐の方を向く。彼が飼い主で可愛がってるのだろうか、それなら悪い事したと武道は青年に狐を差し出すが、青年は益々不機嫌になり狐を膝に置くと何も分からず、狐も飼い主に不機嫌そうにそっぽ向くと武道の膝で丸まった。青年の肩が震えだしこれは、どうにかしなくては何か分からないが大変な事になる、下手したらこの空間が請われる。どこかそんな感覚を覚えた武道が青年の髪を撫でると、青年は驚くように上を向き、武道の方を向き機嫌がどんどん良くなる様子に、武道安心し手を離すが、手を掴まれるのに凄い力で掴み見ているのに諦め撫でる。青年は撫でられるのが好きなのかと思い、触り心地の良い一本一本サラサラな髪を撫でると、その場に武道意外の声が響く。
    「ボスは相変わらずだな」
    男にしては高めな声に、初めて喋った青年に武道は固まると口をハクハクと開閉する。
    「おいおい俺が喋るのが可笑しいか?この間は訳あって声が出なかったんだ」
    「喋れたんですね」
    青年の仮面の下は悪戯が成功したように悪い顔をしているのだろう。青年は口元に手を横に引くと、仮面の形が変わり下半分が見える。
    悪戯が成功した子供のように舌を出す青年は今悪い顔をしているのだろう。手に取るように分かるその仕草に意外と性格が悪いのだな、と新たな発見があった。
    「ボスは今何処に暮らしてんだ?」
    「と、東京って所に」
    「ああ、今の京の都か」
    京の都と昔の京都だろうか、平安時代はそんな名前だったなと、武道は珍しく授業で覚えてた事を思い出した。
    「はじめさんは……」
    「九井一ココって呼んでくれ」
    「ココさんは」
    「ココで良い」
    「じゃあココ君に聞きたいことあるんですが、住まいは何方で?」
    何かの悪質な営業マンのような聞き方になったが、そこは気にしないでおこう。九井は喰えない笑を浮かべており、口を開こうとしない。聞いちゃ不味かっただろうかと思い訂正しようとすると口を開いた。
    「天ノ国アマノクニそこが俺の住んでる所だ」
    天ノ国はて聞いた事無いが、あまのと言う地方なのだろうかと武道は理解し、普通ならその時点で目の前の存在が神だと分かるのだが、頭の弱い武道には分からなかった。それを見越した青年はまだ自分の存在を明かさない為に都合が良かった。
    「ボスはどうせ26歳一人暮らしの寂しいカップ麺生活してんだろ。これを食え」
    差し出された薔薇の花弁に、武道は歓喜に染まり口を開け、彼が自分の話していない情報をなぜ知っているのか気にせずに、花を口に入れられ食べていく。食べる速度が増し、舌に載せられ閉じる時に指を舐めるように花弁を取るのに、青年は武道の唾液を指でペロリと舐めると、花弁を味わっていた武道の顔が恥ずかしそうに真っ赤に染まる。
    「な!な、なんで!!」
    言葉も出ない武道に青年は声を出し愉しげに笑い膝を叩いているのに、武道は吠えるが気にしていないようだ。本当に性格が悪い。
    「わりぃわりぃ、続き食べなくて良いのか?」
    花弁を渡され食事を再開すると、甘い蜜に感動して花弁を食べて行く。甘い花の香りに酔っていると、いつの間にか食べ終わり九井は肩を竦め後ろの眩しさに、武道はどうやらタイムリミットらしいと分かると微笑みを浮かべる。九井はその顔に驚いた様子で、目覚めた。部屋に目指しが鳴り響く、何時もより三十分遅い時間に「うわ!」と声をあげると準備を始めた。その日は遅刻ギリギリに出勤し、部下から白い目で見られ更に無い評価がマイナスになったのに気づいた。
    くたくたになり帰り、クレーマーの対応をしたのに擦り切れた精神に、武道はカップ麺では満たされないだろうと、ワべドナルドで買ったハンバーガーを頬張ると、体に染みる味に少し機嫌が上がる。酒を煽り摘みに奮発したナゲットを食べテレビを眺めていると、子供が山で行方不明になり、一ヶ月後無事で腹も空かせずに、親とはぐれた場所に見つかったニュースがやっていた。武道は無意識に見ているニュースに今の夢を何故か思い出し、ここ最近頻度の多い夢に美味しい物食べれるし良いかと思うと、場面が変わるテレビにすっかりニュースの事など忘れたのだ。酒を飲み腹が膨れ眠くなってくる、今日もあの夢を見るだろうか、そう思うと眠りについた。
    気づくとまたあの空間にいた。その場に座ると目の前に白い耳の垂れた犬が来たのに武道は持ち上げる。犬の体に何か書いてあり肆と書かれていて武道は、此処に来るのも四回目かと何か納得する物があった。犬の腹を撫でると嬉しそうに舌を出して喜ぶのに、武道はわしわしと撫でていると、目の前に白装束を着た男が不機嫌そうに口元を歪め、犬を武道から取り上げると抵抗する犬を隣に置いて見つめ、犬はクゥンと悲しそうに鳴くと青年の隣に座った。青年が口を開く。
    「コイツが悪かった。何かやらかして無いか?」
    「いえ、とても気持ち良さそうに腹を撫でさせてくれました」
    「武道に撫でられるなんて躾直さなきゃいけないな。ボスが誰だか分かってないみたいだ」
    武道は青年の物騒な言葉に、このままじゃ可愛く純粋な犬が物騒な目に会ってしまうと、慌てて青年を落ち着かせようと手を前に降るが青年は引かない。
    「だ、ダメです!こんな可愛いワンちゃん虐めちゃ!!」
    武道がそう言葉を発すると、青年は安心したようにふわりと笑う。
    「武道が変わっていなくて良かった」
    髪を撫でる青年に果てさて自分はこの男に名前を教えたか、と疑問に思うが目の前の青年が嬉しそうに尻尾を降っているから良しとした。武道はあの尻尾は幻覚なのだろうかと思い、何だか耳も見えると青年の犬耳を触ると本物なのに、驚きそのまま触る耳に擽ったそうに身動ぐ青年に手を離すと、青年が言葉を発した。
    「擽ったいんだが。俺は乾青宗、また会ったなボス」
    「あ、花垣武道です」
    初めてのまともな自己紹介に、武道はぺこりと頭を下げると耳が揺れるのに、これで良かったんだなと思った。
    「武道最近はどうだ?絡まれたりしてないか?」
    武道を心配する青年に自分はそんなに絡まれやすく見えるかと思うが、そうなのだろうと理解すると青年に語り出す、
    「聞いて下さいよ!今日嫌な事あってですね!」
    それから乾に愚痴を零し、好きなだけ愚痴る中で喋りながら花弁を食べさせる乾に、武道はもぐもぐ話しを繰り返し余り味わえなかった。花弁が食べ終わる頃には落ち着き、残り少ない花弁を食べる。微笑みを浮かべ聞いてくれる彼な安心し、何故か話せ武道は花弁に舌鼓を打ち全て食べ終わると、青年が横を指し太陽が登る。
    ああ、タイムリミットかと少し寂しくなると武道は青年に満面に笑った。
    起きて清々しい気分に今日が休みで良かったと思う、起きたら昼でよく寝たなと思うと、気分も良く買い物に行こうかと思い外に出た。
    それから暫く交互に乾と九井の夢を見て半年が過ぎた。毎日同じ味だが飽きない味の花弁を食べ、二人と話す日々は楽しく何時しか身体も軽く夢を見るのも楽しみになっていた。本当は二人に一気に会いたいが、無理を言うのは良くないと飲み込んでいる。早く二人に会いたい今日の夢ではどんな話をしようかと眠りにつくと瞼が落ちた。
    それから数日相変わらずの夢に心地好く起きたが、その日は何時もより仕事が忙しく、ヘトヘトで帰ると、着替え布団に寝転んだ。明日の朝風呂入ろうと目を瞑り直ぐに寝息が聞こえてきた。
    目を開くと、何時もの空間だった。だがその日は犬と狐がお互い丸まっていた。何時もと違う事に首を傾げ狐を持ち上げると、数字は181と書いており疑問が沢山湧く中で、狐と犬を膝に載せ撫でると、目の前から歩く人に驚く。
    なんと二人同時に来ていたのだ。
    「よっ!」
    「武道」
    ポカンと口を開く武道に悪戯が成功したような子供のように笑う九井と、心配そうに慌てる乾が立っていた。
    「ど、どうした武道」
    「イヌピーボスは驚いてるだけだ」
    「何に驚くんだ」
    「俺達二人で来たこと無いだろ」
    乾が納得すると、武道が長い驚愕から帰り、二人の間に指を指すとわなわなと唇を震わせ大声で言う。
    「な!何で二人で来てんすか!!」
    「うっさ」と九井が言い乾が耳を塞ぐと、武道の大声が木霊した。武道も同じく耳を塞ぐと煩く反響する自分の声に吃驚し、今度は大声を出さないでおこうと思い手を下ろした。
    「行成り大声出すなよ。驚くじゃねーか」
    乾が頷くのに武道は「ごめんなさい」と誤ると、地面に座り狐と犬が膝に乗ってくる。九井と乾が少し不機嫌そうになるがいつもの事なのに、武道は撫でる手を止めず二人に向き合う。
    「二人一気には珍しいですね」
    そういうと九井が戯けるように手を挙げた。
    「ああ、やっと二人で来れるようになってな。ボスが馴染んできた証拠だ」
    「俺が馴染む?ああ、此処にはすっかり慣れました!」
    武道の言葉に九井は意味深に笑うと、乾が横から口を出す。
    「武道今日は何をしたんだ」
    それから武道は話し今日の事を沢山話した、やれ仕事が珍しく捗り部下に余り指摘されなかった事、売上が少し伸びたこと。良い事が沢山あり興奮し一通り話すと、九井が口を開く。
    「良かったなボース、神様がボスの頑張りを見てたんだろ」
    「ああそうだな」
    二人の言葉に神がいるなら二人みたいなのかなと柄にも無く思い、けど本当に神が見ていたのかもなと思い嬉しくなる。二人に褒められた事に心地好くなると、九井が花弁を口元に出し、舐めるように口に含み指をちゅぽ音を立て抜くと、九井の口元が弧をかくのにこれで良いのだと思った。
    乾が花弁を差し出し口にパクリと含み、指を吸い抜くと、乾が嬉しそうに微笑む。
    「イヌピー趣味悪すぎ」
    「それはココもだろ」
    「そうだったな」
    何だか言ってるが気にせず花弁を食べる武道は、前より濃い味に同じ味だが味付けを濃くしたのか、と疑問に思い言葉に出していたのに九井が悪く笑い話す。
    「お、やっと効いてきたなイヌピー」
    「ああ、待った甲斐があった」
    「後二年だな。あっという間だろ」
    乾が「ああ」と頷くと、武道は疑問に思い花弁を食べて行く。美味しい花弁に、武道は舌鼓を打つと今日もたべ終わってしまう。
    朝日が二人の後ろに登る。また目覚めるんだと思うと少し寂しくなるが仕方ない。
    ずっと一緒にいられたら良いのにと武道は思った。
    あの日から一年と九ヶ月経ち、世間は秋に浮かれていた。この日武道は久しぶりに高校の同級生で相棒と呼び合う松野千冬と会うことになっていた。彼はペットショップの店長をしており、武道より立場は上なのだが相変わらず会っては遊んでいる。少し悪をしていた仲に絆は固く。武道は黒龍の11代目総長で千冬は東京卍會
    に入っていた。お互い所属は違うが、ひょんな事から相棒と呼び合う仲になり、今になっている。
    黒龍と言えば武道が総長になり支えてくれた仲間が居るのだが、側近の二人だけ顔が思い出せない。顔に霧がかかったような二人は声だけは薄ら覚えていた。何故思い出せないのだろうと、彼の言葉を思い出そうとした時、相棒と声が聞こえ意識が逸れる。
    考えていた事は頭の隅に追いやられ消えた。
    千冬と遊んでいると、驚く事を聞かれた。
    「相棒香水つけてるか?」
    「え?つけてないけど」
    千冬は少し疑わしげに目を細めると、驚くことを言った。



    「相棒から薔薇の匂いがする」



    その言葉に武道はヒュと息が詰り、歩が止まった。薔薇の香り、心当たりしかないそれは所詮夢の中だけの事で、体には出ないはず。だが千冬は俺には嘘をつかない。言葉に詰まる俺に心配そうに千冬が問いかける。
    「相棒何かあったのか?」
    武道は二人の事を何となく言ってはいけないなような気がして、何ともないと返す。千冬は疑惑の目を向けるが、溜息を付き見逃してくれたのに安心し、息を吐く。何故薔薇の香りが体からするのか、この疑問を二人は知ってるかと思うが、何となく聞いてはいけない気がした。武道は葛藤を胸に仕舞うと、最近育ちつつある二人への想いを仕舞うと千冬の後に着いて行った。
    その日の夜夢で二人の元へ行くと、不安そうな武道に黒狐と白犬がオロオロと武道の周りを回るのに、膝に持ち上げ大丈夫だよと言いたげに撫でる。二人が現れたのに不安そうな武道の顔を見て、二人は首を傾げた。
    「どうしたボス」
    「武道どうしたんだ」
    俯く武道に、二人は立ちすくみ心配そうに九井が、懐から現金を出し武道の前に積むが、武道の不安げな顔は取れない。武道が話すまで二人は座り暫く待つと、ポツリと話し出す。
    「今日俺の体から薔薇の香りがすると友人に言われました」
    二人は無表情で聞いている。武道は決意したように言葉を話す。
    「あの花は何ですか?」
    武道の真剣な表情に二人は俯き顔を上げ仮面越しに武道を見つめる。
    「あれは神力を込めた薔薇だ。お前専用に味つけたやつな」
    「黙ってて済まない」
    神力とは神の力の事だろ、それを2年以上食べたら武道の体はほぼ神みたいなもんだ。これからどうなってしまうのだろうと不安が募る。
    「俺はどうなるんですか……」
    不安で唇が震える。
    「俺らはお前が欲しい。子供の頃に初めて会ってから俺らのボスはお前だけだ」
    九井の言葉に記憶が鮮明に振り返る。仮面を被り一緒に遊んでくれた青年達。黒髪の人と白髪の人が、仮面をつけるのが疑問だが、それ以外は普通の格好で楽しかった記憶。
    また別な時、黒龍総長をしていた時に素の顔を晒した九井と乾達。まだ成長仕切らない青年姿の間の君たち。
    思い出した大切な二人、全てを捧げても良いと思い突然決めた君達。全て忘れて過ごしてた、全部思い出した。
    「ココ君、イヌピー君」
    九井と乾は嬉しそうに笑い、武道の頬に手を寄せると近くなる顔が二人の顔が幸せそうに微笑んでいる。
    「思い出してくれたか」
    乾が幸せそうに蕩けた声で笑う。
    「俺らのボスはお前だけだ。武道」
    九井が嬉しそうに笑う。
    あの時武道にボスにするならお前のような人間が良いな、と黒龍時代に言われ高校卒業時に消えた二人に武道は泣きながら手を握りしめた。
    「ずっ、ぐず、なんできえたんすか」
    二人は武道肩に腰を叩くと少し悲しそうに語る。
    「そうするしか無かったんだ」
    「俺達の責務が果たせなくなる」
    「うっ、うっぅ、二人のばかーー!!!」
    武道の背を撫でる二人が落ち着くまで撫でいたのだ。
    泣き腫らした武道に、花弁を渡し二人が微笑む。心底幸せそうに笑う二人が永遠の愛を伝えるように語る。
    「俺らと来てくれるか?人では生きられなくなるし、住む世界も変わる。それでも一緒に生きてくれるか?」
    「武道俺はお前と一緒に生きたい」
    二人の言葉に武道は薔薇の花弁を答えにし微笑む。二人は歓喜し、大袈裟に喜ぶと今日も一つの薔薇の花弁を武道に与えるのだった。

    それから二十日過ぎた頃、武道は夢を見た。夢の世界は白の空間に半下が夕焼けのように染まり、その中に武道は着物を来ていた。黒狐のクーと白犬のハクは寄ってくると、そこには1001と数日が書かれていた。
    二人が現れ薔薇を出す。
    「食べてくれるか」
    「これが最後の薔薇だ」
    最後の晩餐に俺は今日あちらの住人になるのだろと、何も無い布団だけの部屋と明日で退去するから、布団を捨てといてくれと大家に言ったのを思い出す。
    「はい!」
    元気に返事をし満面に笑うと、今日も花弁を食べる。二人の物になって良いと幼い時に決めた、高校生になるとその想いは強くなった。そして二人も同じ様で、彼等は俺をボスと呼び、俺はまた二人の上に立つ。勿体無い優秀な部下に自分は何を出来るだろうと思う。
    花弁を大切に大切に食べ、最後の食事を楽しむ。
    最後の花弁が食べ終わった。
    「ボス行くぞ」
    「ボス手をどうぞ」
    二人の手を取ると光に包まれる。光が開けるとそこは別世界だった。




    呼び込む店の人々、高貴な気配がする人の形をした神や獣の神達、九井と乾は武道の手を引きその中を歩くと、九井と乾を見る神々が噂をしている。「あれが二人の」「狐神の最上位の九井と犬神の最上位の乾が認めた長」「普通の子供だが、元からの神力と九井と乾の神力でここにいる誰より膨大な神力だ」「あんな高貴な神力を持つ物が人間界にいたのか?」聞こえる言葉に武道は手を引く乾と九井の後を着くと、街を離れ高貴な日本家屋が立つ住宅街を登ると、その一番上の一際大きな敷地に入ると家の中に入る。
    誰も居ないが綺麗に保たれ埃一つ落ちてない家の一番奥まで行くと、二人は座り引かれた手に座る武道を抱きしめた。
    「ずっとこうしたかった」
    「本当は抱きしめたかったんだ」
    何となくそうだったのだろうとは思った。だけど抱きしめられない理由があるんだと。武道は前後から抱きしめる二人を好きにさせると、薔薇の本数を調べた時に出た意味に、二人にあの時の答えを返す。
    「大丈夫です永遠に二人と居ますよ」
    勢い良く顔をあげる二人に、仮面の紐を一人ずつ取って行くと、やっと見えた顔は泣きそうに歪んだ顔だった。
    無言で二人が強く抱き締め肩に顔を埋める、濡れる肩を気にせずポンポンと背を撫でる。
    武道は今のやっと手に入った本当の幸せを噛み締め、二人の寂しい子供を撫でた。


    ある所にこの世の神の長が子供を産んだ、誰もを飲み込む強すぎる神力に長は困り果て、この子を守る者が現れるまで、護りの守護をかけ人間へと転生させた。何回も人間へと生まれた神の元に、二人の神が舞い降りた、一人は狐の最高神、もう一人は犬神の最高神、二人はいつも二人で過ごしてた変わった神だった。
    その子供を見つけたのは偶然で、その子供の神力の量に驚くが普通の子供に、暇つぶしに様子を見ていると、子供は女の子を虐める何歳も年上な者に立ち向かい、負け戦なのに何度も立ち向かった。その目は青く燃え、女の子を守り通す決意で固められていた。二人の神はこの子供が欲しいと、眠る子供の魂に触れ、長の元に向かい自分達がこの神の部下になると必死に訴える姿に、長は何世紀にも渡りやっと出た我が子を守る者に安心し、呪の解除方法を教え、成人した二十六歳になったらするようにと、許可を出した。
    それから乾と九井は子供を見守り、子供と触れ合い幼子の内に一度触れ、その子供自信の輝きに愛しさを覚え、一度離れた。吾子が青年に熟す頃、また現れ人のフリをし人として暮らし、子供の部下として付き添った。
    それから大人になった子を見守り、成人の二十六歳の秋に大人になった青年を神にする儀式を始めた。
    花は何でも良かったが、人間界で調べたら薔薇の意味が良く1001本の意味が自分達の想いと重なり、毎日一個ずつ食べさせた。
    そして大人になった青年が神へと羽化した。


    武道が神となり数百年、親の長とも会い、仕事も覚え乾と九井と幸せに暮らしていた。もう自分に不満を言う者も居なくなり、毎日穏やかに暮らしている。
    乾の膝で昼寝する武道の髪を九井が撫でる。
    「幸せだなイヌピー」
    「ああ、そうだなココ」
    ある日現れた自分達の光、孤独で支え合って来た自分達を救ってくれた神ボス。俺達の光、これから先も一緒にいてくれ、永遠に護り通す。
    開け放つ障子から見える縁側から光が入る。
    幸せそうに眠る主に二人の神は心底幸せだと思ったのだ。




    1001本の薔薇の花言葉
    『永遠に』
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    AKtyan5560

    DONEイノゼロifマシュ
    運命の番のワスとマシュとオタは出会うい愛を育み軈てオタとワスが告白し番になる約束をする。マシュを気に入らないモブが悪意を企てそれに怒りに満ちるオタとワスがモブを制裁し番になり、祝福され軈て子供が出来るまで

    ※マシュとオタとワスの子供出ます
    ※モブがマシュを襲おうとしますが未遂です
    ※イノ0や兄弟にマシュが抱かれる表現あります
    ※マシュが二人と番になれるオメガです
    ウインティーに誓う雲が優雅に泳ぐ青空を眺め街を歩く青年が一人マーケット通りを歩いていた。青年は人気店のゴブリンシュークリームの新作を並んで買うと、その場から離れ空を眺め食べ始める。平和な街の姿に平穏を謳歌する事に、城に居ては体験出来ない日常に満足し歩いていると、前から歩いて来た人に当たってしまう。視線を上げると顔を顰めるサングラスをした青年が、マッシュを訝しげに見ている。
    「おいテメェ何処見てんだ!」
    「すみません空見てました。あ、シュークリームついてる。すみません弁償します」
    青年は目の前のマッシュルームヘアーがそんなに悪い者には見えずに、溜息をひとつ付くとハンカチを出し服を軽く拭い呆れ声で答える。
    「はぁ……別に怪我したわけじゃねぇしもう良いわ」
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    AKtyan5560

    DONEイノ0マッシュがイーストンに潜入で入学す事になる。魔法不全者と隠し平和に暮らすマッシュは、毎週休日遊ぶオーターという相手がいた。身分を偽るマッシュはオーターに恋をし、オーターも恋をする。だがマッシュは生きる事を諦めており、色々あり全てがバレてオーターはマッシュを救う決意をする

    ※オーターの愛が重い
    ※イノ0マシュ
    ※イノ0マシュ愛され
    ※マシュ愛され多め
    胡蝶蘭が花開く「マッシュお前はイーストン校に潜入して来い」
    ある日父親から下された命令は、マッシュの運命を大きく揺るがす事になったのだ。魔法不全者なマッシュが、名門魔法学校イーストン校に入学する経緯は、ドミナがヴァルキスに入学が父親のシリルから下された時に、同時にイーストン校への監視も欲しかったとしてマッシュが抜擢された。幸いマッシュは任務が余り無く、神覚者に顔も知られて居ずに、何より鍛え抜かれ魔法不全者でも兄弟達を上回る力を示したマッシュが、魔法不全者だと知られずに通う事を条件に出されイーストン校へと行く事になった。
    その時にマッシュを愛する四人の兄弟達がマッシュを掴んで、抱きしめて離さず大変だったが自身で何とかし事なきを得地上へと、数年前に歳で降りていたレグロの元へと向かったのだ。
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    AKtyan5560

    DONE某殺人鬼の子孫のパロなんですが本編を知らなくても読めます。
    水木の家系には殺人鬼がいた。史上最悪の一人に数えられるその人物は水木を呪い人を殺せと囁く。村へ行く中で水木の中に湧き上がる殺人衝動が限界になり、ゲゲ郎へと話してしまう。ゲゲ郎はその殺人の真似事の行為を受け止めると言と水木に言った。
    ※水木の先祖に殺人鬼がいる
    ※水木に呪いがある
    ※水木が望んでない殺人衝があり
    ※父の首を水が絞める
    のろいあいむかしむかしある国で、四百人を殺した快楽殺人鬼がいた。その殺人鬼は二本の鎖を使い、長い鎖で吊し上げ動けなくし、もう一本の鎖で喉元をゆるりと絞めながら段々と強くしていき、最後には息が止まり死ぬ程の苦しみ藻掻く様を楽しんでいた。男は後の未来で映画にもなる程の最悪の殺人鬼の一人に数えられ、現代に語り継がれている。
    時は昭和三十一年血液銀行に勤める男がいた。
    男は兵隊上がりで祖国に帰ると国に絶望し、成り上がろうと野心を持ち今迄やって来た。そしてそれは彼の中に眠る"ある衝動"も強めて行った。
    世の中にはある能力を受け継いだ殺人鬼の子孫達が存在する。世間の人達は知らず、醜聞と言う組織に管理されたその子孫達にはある共通点があり、過去に名のある殺人鬼が居た事だ。
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