Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    rani_noab

    @rani_noab
    夢と腐混ざってます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 130

    rani_noab

    ☆quiet follow

    凡人装ってたらの4話導入。出かけた上司の家を守るお仕事。

    「ようこそお越しになられました。「公子」タルタリヤ様。そして秘書官殿」
    北国銀行につくと、アンドレとエカテリーナを先頭に、これからタルタリヤの部下になるだろうファデュイたちが集まってくる。最初に口を開いたのはアンドレで、船の中の資料で名前を思い返していたのだが、ゲームの印象はもう残っていない。大しててエカテリーナさんは意味深な美人(多分)だったのを覚えている。
    「ああ。出迎えご苦労。引継ぎはまとまってる?」
    「はい。ですが、その前に少し問題がありまして……」
    「問題?」
    到着早々何かあったらしい。引継ぎの前に報告されるということは、俺たちの到着を待っていたのだろう。促すタルタリヤに、首を横に振りながらアンドレは続けた。
    「実は、返済を滞らせているお客様に催促に行った先遣隊が戻ってこないのです。璃月港を出て軽策荘に行く途中の小さな村に住んでいる方々なのですが、連絡が途切れて二日が経とうとしています」
    「現在取っている対応は?」
    「新たに部隊を編成したところです。派遣しようとしたところで「公子」様のご到着を聞き、判断を仰ごうと」
    「成程ね。派遣された先遣隊のリストを見せてくれる?俺が直接行くよ」
    「えっ「公子」様がですか?」
    「ああ。自分の足で歩く方が、掌握しやすいし、ずっと船に乗っていたから、体を動かしたくてね」
    目を見張っているアンドレに、対称的にエカテリーナさんは微笑んでいる。
    「確かに、この璃月はスネージナヤとは随分、性質が異なる土地ですから、最初にその空気を確かめることも重要でしょう」
    「じゃあ引継ぎはひとまずリオに任せるよ。俺が確認するべきものを確かめておいてくれる?」
    「……承知いたしました」
    これまでの経験から俺に発言権はないというか、聞いてはくれるが採用はしてくれないだろうという理解があるので素直に命令に従うことにする。というか俺は別に戦うことが好きなわけじゃないので、事務仕事の方がありがたかった。
    すぐに用意された資料に目を通すと、出かける間際に俺のところに寄ってくる。
    「戻ってきたら新居を見に行こう。じゃあ行ってくるよ」
    「……はい。行ってらっしゃいませ」
    あきらめ気味に返事をすると、タルタリヤはにこりと笑い、何故か機嫌よく出かけて行った。そもそも先遣隊を贈ったというのはそういうことだろうし、戦闘が待っているのが嬉しいのだろう。
    「リオさん。では、北国銀行の説明を致します。まずは建物内をご案内しましょう。「公子」様と貴方の執務室はすでに用意されています」
    「別室なんだ?」
    「はい。もしや同室の方がよろしかったですか?」
    「いえいえ。別室のほうがはかどるので、むしろ良かったです」
    「そうですか」
    頷いたアンドレに含みはなさそうだ。関係性を聞かれなくて良かった。北国銀行の人間は「分かっている」人間のように感じる。やりやすそうだった。
    そこまで考えて、いやいや、と内心で自分に突っ込みを入れる。脱走するんじゃなかったのか?ちょうどまさに今、タルタリヤが居ない。俺に全幅の信頼を預けて出かけてしまった。
    「…………」
    溜息を吐いて、俺は仕方なく仕事を始めることにする。
    ここで脱走したら後味が悪そうというか、さすがに追手がかかりそうだ。討伐任務でそのまま帰らないのが良さそうだ。
    ずるずる脱走が遠のいていくのに気づかないふりをしながら、施設内の説明を受けたところで、エカテリーナが早足で俺たちの方へ向かってきた。
    「秘書官」
    その雰囲気が緊迫しているように感じて、さらに厄介事か?と俺は、エカテリーナの話を待つ。
    「璃月の総務司から連絡がありました。今回の璃月港への上陸の申請書類に不備があり、直ちに出頭せよとのことです。相手は「公子」様を指名しており、現在外出しているとの返答を聞き入れる様子がありません。強引に取り下げ冴えることは可能ですが、いかがしましょうか?」
    強引に取り下げって。
    「つまり罰金を支払うってことですよね」
    「ええ。そうなります。ただ、北国銀行にとって相手の要求を呑むことに問題はありません。何かと細かい罰金を追加してくるかとは思いますが、相手も璃月の法の乗っ取らざるを得ませんから」
    そういうエカテリーナに、少し考える。到着して早々、璃月の総務司ともめ事を起こすのは得策じゃない。とはいえ、相手も応じてくるとは思っていないはずだ。つまりは嫌がらせ。
    「いや行きましょう。相手の様子も知りたいし、むしろ向こうにとって、その方が想定外でしょう」
    するとエカテリーナさんは唇を弧に描く。うっわ、美人の気配。
    「秘書官は負けず嫌いなのですね。ふふ、では短い時間ですがサポートを致します。璃七星、その中でも政治を担う八門についてお話ししましょう」
    なんだか若くて元気ね。みちあなことをお姉さんムーブで言われた気がするが、俺としては全然それで構わなかった。ファデュイはどうしてか色気のある女性が多いが、エカテリーナさんはそこにミステリアスさが加わって余計に良い。好みのタイプなんてないが(節操がないと前に言われたがそんなことはないはずだ)、エカテリーナさんがサポートしてくれるのなら北国銀行もそう悪くはないかもしれない。タルタリヤと四六時中一緒の件を覗けば。
    どちらにしても給料分の働きはしたほうが、罪悪感も少なくていい。
    俺はエカテリーナさんからある程度の情報を聞き取ると、ついていきましょうか?という提案を丁寧に断って、北国銀行を出た。

    ところどころ見覚えのある璃月の街並みを歩き、総務司のある建物までやってきた。
    ファデュイの制服のせいで街の人間の視線も、総務司の受付の視線も硬質で冷たいが、自分の関係のない人間の視線なんて気にならない。タルタリヤもそんなことを気にする人間でもないし、璃月でやっていくことに特に問題はなさそうだ。それに、親しい人間も作るつもりはないので、向こうから嫌煙してくれる方が気が楽だ。
    俺が定刻通りに訪れたことを聞き、受付の人間は驚きを隠しきれない様子で、俺を別室に通した。
    どうせ待たされるんだろうな、と思いながら、大人しく待っている。
    扉の向こうで人の気配がしたのに顔を上げた。
    嫌味の一つでも言ってやろうかと顔をそちらに向ける。
    扉が開いて、その向こうから──。
    思わず立ち上がった俺の反応を咎められる奴が居たら殴ってやりたい。
    一度立ち止まり、優雅にドレスの裾を揺らして俺と目を合わせたのは、
    「天権、凝光……」
    俺の声に凝光はゆっくりと口元に微笑を浮かべ、俺の向かいへと立つ。
    「お待たせしてしまったかしら?」
    「一秒が金に値する天権を待つくらい、そう大したものではありません」
    「あら、ファデュイの方にしては、謙虚なのね」
    そう言いながら椅子を指し示す凝光に、俺は椅子に着く。
    やられた。まさかここで天権が出てくるなんて思いもしなかった。これは余計なことが言えないと警戒する内心を隠して、俺も笑みを浮かべる。
    「お会いできて光栄です」
    「到着したばかりと聞いていたけれど、私のことを一目見て分かるだなんて、さすが秘書官ともなれば違うわ」
    「璃月にとって重要な方を、どうして最初に把握しないのでしょうか」
    本当は説明なんて受けていないけど、前世の知識が役に立った。
    それに、俺が秘書官であることは伝えていない。公子の代理として訪れたのだ。情報が早すぎる。
    食えない人だな、と思いながら、俺は笑みを絶やさない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏💕❤❤🙏🙏💞💘💖❤💘👏💖💖💞💞💞💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator