小1快斗くんと私立探偵新一くん小学一年生快斗くんと私立探偵新一くんの快新。(←!?)
続き物のくせに時間飛び飛びです。(わざとなのですが…読みにくいかと…)
何でも美味しくいただける方向けでしてよ〜
快新になるまでが長そうな気がしますが、今後我慢できずにささっと時間飛ばす可能性大あり
その事件は歩いてやって来た。
俺は私立探偵の工藤新一。今年事務所を立ち上げたばかりの新人である。とは言いつつ、昔から事件に首を突っ込んでいたので果たして新人と言っていいのか謎だけど。そうため息をついていたのは知り合いの刑事である。
この日は依頼もなく久々にゆっくり自宅を出た。事務所の鍵を開けて、コーヒーを淹れて、ソファに腰掛け、テレビをつけようとリモコンを手に取ろうとした時だ。呼び鈴が鳴った。
立ち上がり、外の監視カメラを確認する。…子供が一人、映っていた。少しだけ考えて、素直に扉を開ける。
そこには小学生程度の背丈の子供がいた。小さなバック一つだけを持ち、どこか疲れた雰囲気で佇んでいる。癖っ毛が小さくお辞儀をした。
「工藤さんの探偵事務所ですか」
「そうです、とりあえず中へどうぞ」
それから、俺と【弟】の物語が始まる。
「…これ…」
「ランドセル。…今時の子は色々と色が選べるみてーだが、黒で良かったか?」
「えっと、違くて。…えっと」
「ん?」
「………黒で、大丈夫」
「そうか。…いいか?俺には遠慮すんなよ?」
「遠慮は、してない…」
よしよし、と雑に頭を撫でられる。何だかこそばゆいし、変な気分だ。母にそうされたのを思い出した気がする。こんな慣れない手つきじゃなかったが。
「くど…新一さん、」
「ん〜…【さん】は違う気がするな…」
「え?いや、でも」
「兄ちゃんでも兄貴でも好きに呼べ」
「……………し、新一兄ちゃん…」
そう呼んだ。…正直、少し恥ずかしい。
「なんだ、快斗」
「…っ、あ、あの!俺、身分証明書もないのに、学校…」
「ああ…」
すっとしゃがんで目線を合わせてくれ、にこりと笑い、
「ぶっちゃけコネだ」
清々しく、そう言った。
「来週からな」
新一兄ちゃんと出会って、わずか一週間後の出来事であった。
小学一年生。
教科書、ノート、筆箱、その他細かな必須道具を新品のランドセルに詰め込んで、ついにその日が来た。
「どうだ、快斗」
「準備できた!」
「ん。よし、行くか」
学校初日である。
少しばかりの緊張は、きっと歩いている内に隣にいる新一兄ちゃんがかき消してくれる。不思議な気持ちだった。この前まで、ニ週間前まで、知らない人だったのに。
ちら、と新一兄ちゃんを見上げたらすぐ気づいてどうかしたか、と声をかけてくれた。
「学校、少し緊張してる…」
「大丈夫大丈夫、快斗なら友達もすぐにできるさ…まあ、友達は無理につくるものでもないから。ゆっくりな」
「うん」
小さな気遣いが嬉しい。ほわほわしたこの気持ちは、嫌なものではない。今だけは無敵に思えるくらいだ。
「気楽にいけよ」
「ありがと」
学校は、徒歩十五分程度の場所だ。俺に歩幅を合わせてくれている新一兄ちゃんは、本来ならもっと早くつくのだろうか。
「早く大人になりてーなぁ」
「何言ってんだ、小学生」
ふわ、と体が浮いた。
「わわっ、お、下ろせ!重いだろ!」
「ははっ」
恥ずかしい!のと、重いはず!ってのと。慌ててる俺を無視して新一兄ちゃんは愉快そうに笑っている。
おんぶやだっこ、って年でもねー!喚いても聞いちゃいなくて、その場でぐるぐると俺を抱いたまま回ってる。何がしたいんだよ!と言えばようやく止まって下ろしてくれた。
「緊張とけたか?」
「へ?あ…」
「じゃ、いくぞー」
全く、新一兄ちゃんにはいろんな意味で敵わない。
「保護者の工藤新一です、急な転校に応じてくださってありがとうございます」
「いえいえ!快斗くんと工藤さんが安心して通えるよう頑張りますね!」
…新一兄ちゃん眩しいぜ…
出会いの時も思ったけど、やはり外では多少猫を被ってるんじゃないか?俺の担任の先生とやらが頬を赤らめてるぞ。女性を誑かすとは。
「快斗くん」
しゃがんで視線を合わせてくれた先生はにこにこしながら俺に言った。
「楽しい学校生活にしようね!」
「…うん」
「では、僕はお暇しますね、よろしくお願いします」
「はい」
「………うん」
もう新一兄ちゃん行っちゃうんだ。少し不安な気持ちになってしまう。もし、もしも…
「快斗、おいで」
「?」
「(大丈夫。快斗らしくな。いいか、無理はすんな。待ってる)」
「!お、おう」
凄い。新一兄ちゃんは俺の心が読めるんじゃないかと思う。
俺の帰る場所は、ちゃんとある。
ゆっくりまったり続きたい