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    yowailobster

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    20211209 シーズンギャグ クリスマスが(問答無用で)やってくる

    ##明るい
    ##全年齢

    フライング・サプライズ! 四人で集まった途端降り出した雨。一時間ほどで止むらしいがこの寒い時期に外で一時間待機というのも風邪を引かないよう気を付けているそうな最年少には酷な話。だが生憎いつもの店は早めのクリスマスを祝う客でいっぱいだった。他に行こうと同じことになるだけだと各々察したらしい。ガキ共が一斉に首を捻りだす。
    「俺ん家……は遠いしな……ランガは?」
    「俺の部屋だけならいいけど。今狭いよ」
    「なに?大掃除中とか?」
    「ううん」
     否定したランガはけれどもう一度「狭い」と念を押すかのように繰り返した。
     
     実際見たならよく分かる。確かにこれは。
    「狭い……っていうか何かめちゃくちゃ狭く感じる」
    「部屋が部屋だからかな……尚更目立って圧迫感がすごい……」
     入ってからじっと“原因”を見つめるばかりの暦とMIYAは、自分達にもじっとりとした視線が向けられているのに気づいていないようだった。「だから言ったのに」と視線の主にぼやかれるまで。
    「悪い悪い。でも嫌だとか文句言いたい訳じゃ無いから。前に来た時と部屋があんま違って見えんだもん、驚いちまって」
     暦の釈明に嘘ではないだろう。俺とMIYAはランガの部屋へ初めて入った筈だが“原因”が無ければ家探しなど思いついていたかもしれない程にそれを除いた部屋内の物は少ない。そして数着マカロンカラーのシャツなど見える以外家具も小物もおとなしい色味の物ばかり。なのでこのやや地味めに統一された部屋の中心にて“原因”は痛い程その存在を主張していた。どんと温もりを感じる濃く鮮やかな赤とツリーを想わせる深い緑をメインとしてカラフルに彩られた子供向け積み木のような物体。縦に置かれている分占めるスペースはそこまで多くないが寝転ばせたなら横のベッドにも匹敵しそうなそれには幾つもの区切りがあり、区切り内には箱、そのうえ箱には数字も書いてあるのだから一応アレという事で良いのだろうが。ディスプレイくらいでしか見ないサイズなので判断しにくい。加えて少々気になる点もあった。
    「家庭用でこの大きさあるんだ。形も……なんか独特だし」
    「まったくな。おいランガ、こんなのどこで売ってんだよ」
     思わず口を突いた質問に、こちらへ向いたランガが「知らない」と答える。
    「買ってない。もらった」
     部屋の隅まで言葉が広がり空気がぴしりと凍り付いた。暖房ではどうにも出来ない寒気に気づいていないのは間違いなくランガだけだ。嫌になる程敏い中坊は勿論、出会った頃は今より更に短絡的でやりやすかったのにこの一年異常事態に巻き込まれ過ぎて若干擦れつつある高校生までもが現在頭に浮かんでいるであろう予想に顔をしかめている。縋るように二対の目が向かった先は、まあ分かってはいたが。後で覚えとけよ。
    「……貰ったって誰にだ?」
    「サンタクロース」
    「「はあ!?」」
    「の恰好した、知らない人」
     ある日の買い物帰りに現れたサンタクロースが言うにはランガは今年大変良い子だったそうで特別にプレゼントを貰えたのだという。そんなうまい話があるかと思ったのは俺だけでは無いようだった。
    「断ったんだけど、俺が受け取らないと怒られるっていうから……サンタクロースも厳しいんだな。父さんとしか会った事無くて知らなかった。それとも日本だから?」
     一人暢気に続けるランガの横でタイミングを伺いつつ肩を上下させていた暦が瞬間くわっと口を開き、
    「お前なあそれはサンタはサンタでもごッ」
    「日本は関係ない。そのサンタが愛抱夢だからだよ」
     しかし乗ってきた重みに潰れたので、言葉は重みことMIYAに引き継がれた。
    「愛抱夢?でも知らない人で、髭もあったし」
    「着け髭でしょ」
    「……仮面着けてなかったし」
    「Sの外で仮面着けてる方がおかしいだろ。もしくは誰か雇ったんだね。アイツならそれくらいする」
     反論が尽きたのだろう。ランガはううん、と呻いた後に首を横へ向けた。カラフルなクリスマスの風物詩ただし特大を見つめ納得したかのように呟く。
    「これくれたの愛抱夢だったのか。――お返ししなきゃかな」
    「違えだろぉ!?」
    「ふぎゃっ!」
     無理に起き上がった事で落下した重みからしきりに叩かれつつも暦は必死な顔でランガの肩を掴み、身体までアドベントカレンダーと向き合わせる。
    「ランガ、ほら見ろ。気づいたな!な!?」
    「……」
    「『何が』みたいな顔頼むから止めろ……!」
     気持ちは痛い程分かる。暦が動く気配を感じなければ俺も行っていた。
     さっきMIYAが言った通りこのアドベントカレンダー、特に箱らのサイズはあまりに特殊だった。まずばらつきがある。通常売っている物でもあるにはあるだろうがそれとはサイズ差が段違いだ。普通の箱と比べ最も大きい箱はおよそ数倍どころか十倍弱。前に立ち頭の上に?を浮かべるランガをすっぽり覆って余りある箱に書かれた文字は当然“24”。
    「分かるかランガ。分かってくれ」
     難攻不落の城砦への暦の懇願もとい叫びが部屋いっぱいに響くなか寄ってきたMIYAはほんのり青ざめていた。
    「ねえシャドウ。僕気づいちゃったんだけど」
    「おう」
     恐る恐る指が示すのは明後日と明日、つまり23と22の箱だ。この二箱にまとわりつく嫌な雰囲気には暦もまだ気づいていないらしい。打って変わって異様に小さい23は考えたくないので避けるとして、22。それなりに大きくそして平たい箱を横目にMIYAが嫌そうに口を開く。
    「あれ、紙入れるのに丁度良さそうだよね……」
    「A3くらいのな……」
     外の雨に湿気を持っていかれただろうか。笑い声はからからに乾いていた。
    「そーだ!もうこれ返さねえ!?あの野郎のって分かったんだし!手伝うから!」
    「ほとんど開けちゃったんだけど」
    「あいつならそれでも喜ぶだろ」
     善は急げと物体へ伸びた暦の手を、しかしランガの手が阻む。
    「駄目だ」
     ランガの圧に言いかけた言葉を暦は止めたようだった。顔ごと目を逸らし「あいつのだぞ」とこぼす。
    「うん。もらった」
    「……変な仕掛けとかあるかも」
    「無いと思う。でもあったらちゃんと暦に言うよ」
     項垂れた暦の手がするりとランガの手の内から抜けた。言う暇なんてもらえないと思うけど、と二人に聞こえない声量でMIYAが言う。気を遣うなんて珍しい。誰にも言われなくとも、敏い中学生はこの部屋へ移動した理由を薄々気付いているのかもしらない。
     あいつらガキ二人も。そのうち一人とここには居ない男も。こいつみたくもう少しうまくやれないものか。
     まだ暦の表情が固いままであることに慌てたのかランガが続ける。
    「今まで開けたのには普通のお菓子しか入ってなかったし。……普通ではないか。全部美味しかった。すごく」
     言葉の途中でさっと暦は顔色を変え、しかしランガの夢見るような語り口に気付くと徐々に無表情へ。そして唇の端をひくひくと動かしながら問いた。
    「ランガ。お前、もしかして……中にある食べ物が惜しいだけじゃあ……」
    「……すごく美味しいから皆も食べると良い」
    「あっこらお前、答えろ」
     焦りつつどこか期待のこもった表情で21と書かれた箱を引いたランガが「ん?」と身体ごと傾く。
    「ごめん。今日はお菓子じゃなかった」
    「そんなのはいいから俺の質問に……ところで何?」
    「えっと、ボールペンと……スタンプ」
    「何だよそれ。手紙でも書けってか」
    「……あ、違う」
     ひっ、と隣で小さな叫びがあがった。箱から取り出されたランガの手が持っていた物を見た暦と俺の反応も大概似たようなものだ。
     ランガだけが思い出したのだと嬉しそうに言う。
    「インカン、でいいんだよね」
     もう傍観して良い話とは思えない。突如三人にベッドへ座らせられた不思議そうに瞬きするランガとどこか遠くでその日を楽しみにしているだろう男へは悪いがせめて先に確認だけさせてもらう。何も問題ないようならそのままにしておくからバレたとしても大怪我まではいかない筈だ。
    「ごめんねランガ、シャドウが今度好きなだけ奢るってさ……」
     言って無いがそれで未然に防げる事件があるならまあ良いだろう。Sが無くなるとか仲間の失踪とかそういう話はもう御免だ。
     決心し24の箱に掛けんとした手が止まる。腕に乗った二種類の手。持ち主二人はふるふると首を横へ動かし、表情はどちらも暗かった。
     よくよく見れば巨大な箱には下の方にごつい錠と数字を入力するためらしき装置が。
    「……」
    「それ?24日のお楽しみだって」
     嫌な汗が噴き出す。
    「暦、MIYA!あの二人呼べ!」
    「もうやってる!もしもし俺だけど」
    「うん。今すぐ来て。危険そうだから厚着で」
    「……え、誰か来るの?」
     血相変えて騒ぎ出す俺達に付いて来られず、困ったようにランガが眉を下げる。
    「ああ。呼んだから全員揃うぞ。これ開けられるまで誰も帰らねえ」
     答えればランガはしばらく時間や食材の心配をしていたが突然はっと、何か気づいたように目を開いた。青がほんのりと光る。
    「全員?なら、愛抱夢も来る?」
     どこかズレた高校生へかける言葉を一瞬だとしても悩んだのは間違いだったのだろう。
     耳に有り得ない音が響く。やかましいそれは機械が鳴らしているようにも誰かの声のようにも聞こえた。どちらでもあるな幻聴であれと願う暇もやはり無く何故か歩き出したランガがお礼言いたかったんだと言うのとほぼ同時に玄関先からも音が。おい待ってくれ、乱痴気騒ぎには数日早いだろ。
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