はじまりランカークス村からしばらく歩いた森の奥に1軒の鍛冶工房がある。
知る人ぞ知るその工房では良質な武具が造られていることを知っている人間はあまりいない。どちらかと言えばランカークス村の武器屋にはいい武器があるという事で知られている。
本日も鉄を打つ音が工房から森に響いている。
工房には2人の職人がおり、一人は魔族の男で一人は人間の青年だ。
2人は師弟関係で、今は弟子である人間の青年が工房を切り盛りしていた。師である魔族の男は腕を壊して鍛冶が叶わない為だった。
熱心に教えを請いながら修行に打ち込む青年は元勇者。
「それにしても不思議です」
「何がだ?」
「今ここで先生に師事していることも、鍛冶師を生業にしていることも」
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